集客や売上につながるマーケティングをおこなうためには、顧客がどのような思考や感情を持ち、どのような行動をとって商品やサービスを購入しているのかを把握することが大切です。このような情報を可視化する手法に「カスタマージャーニーマップ」があります。カスタマージャーニーマップをもとにマーケティング手法を考えれば、顧客の動向を考えたアプローチができるでしょう。

今回は、カスタマージャーニーマップの概要や効果を発揮する場面、カスタマージャーニーマップの作り方について詳しく説明します。

そもそもカスタマージャーニーマップとは?

そもそもカスタマージャーニーとは、「企業が提供する商品やサービスに関連する顧客の行動を時系列に並べ、各ステップにおける顧客の思考や感情といった内面的な変化を整理したもの」のことをいいます。

そして、商品やサービスを認知するところから始まり、知識を深めたり他社と比較したりして、購入や評価に至る過程を視覚化したものを「カスタマージャーニーマップ」といいます。

従来はテレビCMやラジオCM、新聞広告や雑誌広告といったマス広告が主流でした。インターネットやスマートフォンも普及していなかったので、企業が一方的に発信する情報をもとに認知・購入へとつなげる手法が一般的でした。

しかし、近年はモノや情報の充足によって、顧客のニーズが多様化するとともに、ニーズに応じて簡単に情報を取捨選択できるようになりました。カスタマージャーニーマップによって顧客の動向をうまく分析し、企業の課題を可視化できれば、効率的に集客や売上につなげられるでしょう。

カスタマージャーニーマップが効果を発揮する場面

それでは、カスタマージャーニーマップはどのようなときに効果を発揮するのでしょうか。カスタマージャーニーマップが効果を発揮する場面として、次の3つが挙げられます。

以下では、これらの場面について詳しく説明します。

マーケティング施策を改善させたいとき

マーケティング施策には多種多様な手法がありますが、「想定する効果を得られずに悩んでいる」という企業は多いのではないでしょうか。マーケティング施策を改善するためには、企業の商品やサービスがいつどこで認知され、どのような理由で購入され利用されているのか、的確に把握しなければなりません。

マーケティング課題を抽出するフレームワークはたくさんありますが、部分的な課題を見つけるものが多くなっています。部分的にマーケティング施策を改善させても、得られる効果は限定的でしょう。カスタマージャーニーマップを使えば、顧客の行動や心理を時系列に並べて俯瞰できます。どのタイミングでどのようなマーケティング施策に取り組むべきかを考えやすいので、より高い集客効果や売上が期待できます。

他部署との認識を統一させたいとき

マーケティング部門だけでマーケティング戦略を練るところもありますが、必要に応じて営業部門やカスタマーセンターなどの他部門と連携するケースもあるでしょう。

しかし、各部門で見えている課題や考えている施策の方向性が異なると、統一性のあるマーケティング施策を実施できなくなります。

カスタマージャーニーマップを作成すれば、顧客の行動や心理面の変化を可視化できるので、他部署との認識を統一させてマーケティングを進められます。

たとえば「カスタマーセンターに新商品の使い方に関する問い合わせが多いので、セミナーを開催して使用方法を伝える」「商品やサービスへの認知度は高いが、購入を決断してもらえない。見込み顧客の情報を営業職に引き継いで、購入につながるアプローチに力を入れてもらう」といった手法が挙げられます。

プロジェクトの意思決定がスムーズになるとともに、それぞれが力を発揮する部分が明確になれば、より高い売上を出せるでしょう。

自社の状況を客観的に把握したいとき

企業が属する業種によっては、たくさんの競合がいる中で成果を出し続けなければならないため、市場における自社の状況を客観的に把握する必要があります。自社の強みや弱みを的確に把握できていれば、強みを活かしたマーケティング手法ができるとともに、弱みをカバーする戦略にも取り組めます。

どれだけ魅力的なマーケティング戦略を考えても、顧客に響く内容でなければ、集客や売上につなげられません。カスタマージャーニーマップを作成すれば、自社の視点だけでなく、顧客の行動や心理面の変化を意識してマーケティング施策を考えられます。

たとえば、「自社サイトへのアクセス数は多いが、購入画面で入力の手間を面倒に感じて離脱するユーザーが多い。そのため、過去の登録情報を自動的に入力できるようにしたり、入力する項目数を減らしたりすることで離脱を防ぐ。」といった施策が挙げられます。顧客の視点で企業の強みや弱みを分析してマーケティングに活かせば、競合が多い市場でもうまく顧客を獲得できるでしょう。

カスタマージャーニーマップの作り方とは?

ここまでは、カスタマージャーニーマップが効果を発揮する場面について説明しました。活用方法は企業によって異なりますが、集客や売上につながるマーケティング施策を考えるためには、カスタマージャーニーマップの基本的な作り方を知っておくことが大切です。

カスタマージャーニーマップを作成する手順は、次の通りです。

以下では、これらの手順について詳しく説明します。

作成する目的を明確にしておく

カスタマージャーニーマップを作る際は、まず作成する目的を明確にしておくことが大切です。通販サイトでファッション用品を販売する企業を例にすると、次のような目的が考えられます。

  • WEBサイトへのアクセス数を増やす
  • 顧客1人あたりの購入金額を増やす
  • リピート顧客を獲得する
  • 顧客が利用しやすいサイトへと改善させる

業種や企業ごとにカスタマージャーニーマップに盛り込む項目が異なるため、目的が不明確だと作成に時間がかかるだけでなく、得られる効果が限定的になってしまいます。

「何のためにカスタマージャーニーマップを作成するのか」をよく考え、担当者間で目的を共有しておきましょう。

ペルソナ設定をする

カスタマージャーニーマップを作成する目的を明確にしたら、次はペルソナを設定します。ペルソナ設定とは、「ターゲット顧客を特定の人物像のレベルまで落とし込んで考えること」をいいます。

先ほどのファッション通販サイトが、ターゲットを「30代の女性でカジュアルなファッションアイテムを探している人」に設定したとします。

この場合のペルソナ設定例としては、「34歳の女性。夫と2人の子ども(5歳と3歳)がいる。都内のオフィスで事務用品を販売する仕事をしており、年収は450万円。休日は子どもが通っている幼稚園の友だちと遊んだり家族で公園やショッピングモールに出かけている。よく外出するので季節に応じて流行のファッションアイテムを身に着けたいと思っている。主にスマートフォンでInstagramを利用しており、ファッション関連の投稿を見ている」のようになります。

ペルソナの行動に仮説を立てる

ペルソナ設定をしたら、設定した人物が具体的にどのようなステップを経て最終的に購入まで至るかを考えます。

先ほどの企業で設定したペルソナ像では、「季節が変わると新たなファッションアイテムを手に入れたくなる」「Instagramで魅力的な商品を見つけると調べてみたくなる」といった内面的な変化を予想できます。

また、「Instagramから企業の通販サイトにアクセスしたユーザーは、季節ごとの新商品を購入するだけでなく、関連アイテムを紹介することで複数購入してもらえる可能性がある」といった行動面での仮説を立てれば、認知を促進するだけでなく購入に結びつけやすくなります。

顧客の声を集め仮説を検証する

ペルソナの行動に仮説を立てたら、次は、顧客の声を集めて仮説が正しいかを検証します。仮説の検証を企業だけでおこなうと正確な評価ができないので、なるべく顧客に参加してもらうのがおすすめです。

具体的な方法として、アンケートやヒアリングといった手法が挙げられます。先ほどの企業を例にすると、「季節ごとの新しいファッションアイテムについて、どのように情報を入手しますか?」「魅力的なファッションアイテムを見つけた場合、どのように商品ページに移動して購入手続きを進めますか?」といった内容でアンケートやヒアリングをすることが考えられます。

検証結果が正しければ次の段階に進みますが、もし仮説とヒアリング・アンケート結果が異なるようであれば、結果に基づいてペルソナ設定や行動・心理面の特徴を修正する必要があります。

フレームワークを決定する

検証した仮説が正しいかどうかを検証できたら、カスタマージャーニーマップのフレームワークを決定します。カスタマージャーニーマップのフレームワークは、上の図のように縦軸と横軸に分かれます。

以下では、カスタマージャーニーマップのフレームワークに盛り込む項目について詳しく説明します。

縦軸に入れる項目を決める

カスタマージャーニーマップの縦軸に入れる項目として、次のものが挙げられます。

  • 顧客行動
  • 顧客接点
  • 思考や感情
  • 課題

先ほどのファッション通販サイトを例にすると、「顧客行動」では「通販サイトにアクセスしてもらう」「会員登録をしてもらう」といったことが考えられます。「顧客接点」は、「Instagramで通販サイトの存在や提供しているファッションアイテムについて知ってもらう」などがあります。

「思考や感情」は、「このファッションアイテムは、注目しているインフルエンサーが着用していたから手に入れたい」「気になるシャツにあうスカートが欲しい」といったことが挙げられます。「課題」では、「ユーザー登録が面倒くさそう」「おすすめ商品が見つからなくて困っている」などが考えられます。

業種によって設定する項目は異なるので、必要に応じて項目を変更したり増減させることが大切です。

横軸に入れる項目を決める

縦軸に入れる項目を決めたら、次は顧客が商品やサービスについて認知してから購入後までの経過を分類します。横軸に入れる項目には次のものが考えられます。

  • 認知や興味
  • 情報収集、比較検討
  • 購入
  • 購入後

先ほどのファッション通販サイトを例にすると、「認知や興味」は、顧客が商品やサービスについて知り、興味や関心を持った段階で、「Instagramで企業のファッションアイテムを初めて知った」といったことが挙げられます。「情報収集、比較検討」は、興味を持った商品やサービスに関して、情報を仕入れたり他社のものと比較する段階です。「類似商品と比較して値段がどれくらい違うのかを価格比較サイトで比べる」といった行動が該当します。

「購入」は、実際に自社の商品やサービスを購入する段階です。「クレジットカードを利用して購入する」「クーポンを使って購入する」といったことが挙げられます。「購入後」は、商品を購入した後の経過です。「SNSで自社のファッションアイテムに関する情報を拡散する」「メルマガ配信を希望して企業の情報を定期的に入手する」といったことが考えられます。

フレームワークに沿って情報を記載する

カスタマージャーニーマップが完成したら、これまでのフレームワークに沿って仮説や効果検証で得た情報をマップに記載します。

カスタマージャーニーマップは視覚的に顧客の行動や心理面の変化を表すものなので、文章を多く書くのではなくイラストを多く用いて作成するとよいでしょう。

SNSを利用していることが伝わるイラストや、メールマガジンを受け取っていることが伝わるイラストなどを活用すると、誰が見てもわかりやすいカスタマージャーニーマップに仕上がるでしょう。

まとめ

ここでは、カスタマージャーニーマップの概要や活用する場面、作成する手順について説明しました。

ここで説明した内容を参考にして、顧客の行動や心理面の変化に応じた適切なマーケティング手法を考えましょう。

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