企業が手がける商品やサービスの認知度を高めるマーケティング手法はたくさんありますが、集客や売上につなげるのは簡単ではありません。どれだけ費用をかけて情報発信しても、それが売上に結びつかなければ企業を成長させるのは難しいでしょう。

消費者の興味や関心を来店や購入につなげるには、戦略的に見込み客を育成する「リードナーチャリング」を実践するのが効果的です。

今回は、リードナーチャリングの意味やメリット、具体的な手順や効果を高める方法について詳しく説明します。

リードナーチャリングの意味を知っておこう

上の図のように、マーケティング活動には「リードジェネレーション」、「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」の3つのプロセスが含まれます。

これらの段階を踏んでマーケティングを進めれば、見込み顧客を購買行動へと結びつけやすくなりますが、その中でもリードナーチャリングには「見込み顧客を育成する」という役割があります。

たとえば、「イベントやWEB広告などで集めた見込み顧客に対して継続的に商品やサービスに関する情報を提供する」といった方法が挙げられます。

リードジェネレーションで集めた見込み顧客に対して、有益な情報を中長期的に提供し、興味や関心が高まったタイミングで商談につなげれば商品やサービスを購入してもらいやすくなります。

リードナーチャリングをおこなうメリット

それでは、リードナーチャリングをおこなうことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?主なメリットとして、次の4つが挙げられます。

以下では、これらのメリットについて詳しく説明します。

多様化・長期化する顧客の購入プロセスに対応できる

近年、モノやサービスが充足したことや、インターネットやスマートフォンが普及したことで、さまざまな情報を比較してから利便性の高い経路で商品やサービスを購入できるようになっています。購入プロセスが多様化し、購入を決断するまでの期間も長期化していることから、個別に営業活動をして売上を出すのは簡単ではありません。

特に、自動車や住宅のように、単価が高い商品ほどこのような傾向が見られます。

顧客に商品やサービスについてしっかりと検討してもらい、納得して購入してもらうためにも、中長期的なアプローチをするリードナーチャリングをするメリットは大きいです。

社内の資産を有効活用できる

イベントや展示会、セミナーなどを開催すると、たくさんの顧客情報が集まります。

顧客情報は企業の売上につながる大切な資産なので、一元管理して効率的なマーケティングに活かすのが望ましいです。しかし、企業によってはそれぞれの営業が顧客情報を管理していたり、そもそも顧客情報が適切に管理できていなかったりするため、社内の資産を有効活用できていないところもあるでしょう。

リードナーチャリングをすれば、このように隠れてしまいがちな社内資産を企業内の担当者で統一し、効率的に見込み顧客を育てられるようになります。

これまで担当者それぞれが抱えていた顧客情報をまとめて管理し、顧客ごとの興味・関心に沿って適切なアプローチができれば、より多くの見込み顧客を成約に結びつけられるでしょう。

適切なタイミングで顧客にアプローチできる

抱える顧客情報が多いほど、顧客ごとの興味・関心にあわせたアプローチは難しくなります。しかし、マーケティングツールを活用してリードナーチャリングすれば、顧客の状況を可視化して適切なタイミングでアプローチすることが可能です。

たとえば、「問い合わせ頻度が〇回未満の顧客には、機能やサービス面を重視したDMを送付し、〇回以上の顧客には来店を促し、価格面や支払い方法といった情報を提供する」といったように、見込み顧客の分類ごとにマーケティング手法を統一しておけば、効果の低い営業をする手間を抑えつつ成約率を高められます。

顧客にとっても、適切なタイミングで必要な情報を提供してもらえるので、企業からの接触に不快感を持つことなく情報収集できるというメリットが生じます。

顧客に親近感を感じてもらいやすくなる

すでに説明したように、リードナーチャリングでは顧客に対して中長期的なアプローチをおこなうため、企業のことを意識する機会が増えます。心理学で「ザイオンス効果」というものがあるように、メールマガジンやDMなどで企業の情報に接触する回数が増えるほど、企業への親近感が高まっていくという効果が期待できます。

もちろん、発信する情報が顧客にとって有益なものでなければ、かえって不快感を増してしまうので注意が必要です。リードナーチャリングによって企業が提供する商品やサービスに好感を持ってもらえれば、それだけ購入や契約に結びつきやすくなります。

リードナーチャリングの手順とは?

ここまでは、リードナーチャリングをおこなうメリットについて説明しました。では、実際にリードナーチャリングはどのような手順で進めればよいのでしょうか?リードナーチャリングの手順は次のようになります。

以下では、これらの手順について詳しく説明します。

見込み客ごとのライフサイクルステージを把握する

リードナーチャリングを始める際は、まず見込み客ごとのライフサイクルステージを把握します。ライフサイクルステージとは、マーケティングにおいて見込み顧客がどの段階にいるかを可視化する概念です。ライフサイクルステージは、次の6つに分類されます。

ステージ名 特徴
サブスクライバー 定期的なブログ読者など。購買意欲が低い潜在顧客。
リード 資料をダウンロードするなど、商品やサービスに興味を持ち始めた顧客。
MQL(マーケティング活動によって創出されたリード) デモの申し込みや担当者への問い合わせなど、セールスを自ら望んでいる顧客。
SQL(営業活動によって作られたリード) 商談が進み、営業担当者が購入の可能性が高いと判断した顧客。
商談 見積もりをしたうえで金額や契約内容の調整といった段階に入った顧客。
顧客 商品やサービスを購入した顧客。

このように、企業が抱えている顧客を分類することで、すぐにアプローチすべき顧客としばらく育成が必要な顧客を判断しやすくなります。

リードナーチャリングの目的を明確にする

顧客それぞれのライフサイクルステージを把握したら、次は「どの段階の見込み客をどの状態に持っていきたいか」という目的を明確にします。

具体例として、「新規リードを1,500件獲得する」「50人の顧客をSQLから商談に進める」といったことが挙げられます。リードナーチャリングの目的が明確になっていれば、実施すべき施策を考えやすくなります。

ターゲットを明確にする

リードナーチャリングの目的を明確にしたら、アプローチするターゲットを設定します。たとえば、「500人のリードのうち100人をMQLにする」という目的を持っている場合、リードに含まれる顧客の属性や特徴を分析し、「30代男性」「〇〇市に住む人」のように設定します。

また、「30代男性、〇〇市在住、職業は〇〇で年収450万円、妻と子供2人の4人暮らしで週末は家族でレジャーに出かけることが多い。レジャーに必要な道具やその使い方を動画サイトでチェックし、ECサイトで購入している」のように、特定の人物像(ペルソナ)を設定するのもおすすめです。

ペルソナを設定すれば、より具体的な戦略を考えられるとともに、ペルソナ像に近い背景のターゲットに効果的なマーケティングができるため、よりリードナーチャリングの効果を高めやすくなります。

リードナーチャリングの手法を決める

ターゲットを設定したら、リードナーチャリングの具体的な手法を決めます。リードナーチャリングにもさまざまな手法があるため、ゼロから考えると手間や費用がかかり非効率です。過去に成約数を増やせたコンテンツがあれば、それらを活用することでリードナーチャリングの効果を高めやすくなります。

「商品の活用事例に関するメールマガジンを週に1通送信する」のように、ターゲットに適した内容と頻度を設定してリードナーチャリングを実践しましょう。

施策を実行したら評価する

リードナーチャリングを実行したら、その施策によってどれだけ効果を得られたのか評価します。

たとえば、メールマガジンの送信頻度が多すぎて配信停止する顧客が多かったのであれば「配信頻度を減らす」「顧客のニーズを調査して配信するコンテンツを有益なものに切り替える」といった施策につなげられます。

メールマガジンの開封率が従来より低かったと評価した場合は、「顧客が興味を持ちやすいタイトルをつける」のような施策を立案できるでしょう。

リードナーチャリングに効果的な手法とは?

ここまでは、リードナーチャリングの手法について説明しました。リードナーチャリングにもさまざまな手法がありますが、特に効果的な方法として、次の5つが挙げられます。

以下では、これらの手法について詳しく説明します。

ブログ

ブログは、自社ホームページなどで商品やサービスに関連する情報を記載する方法です。使い方や活用事例のように読者に役立つコンテンツを投稿することで、商品やサービスについての理解を深めるとともに興味や関心を高めやすくなります。

すでにブログ運営をしている企業の場合、それをリードナーチャリングに活かすことによって、資料請求数や見積もりの依頼件数を増やすことが可能です。ホームページの立ち上げや運営コストを抑えて見込み客を育成できるので、コストパフォーマンスのよいマーケティングができます。

SNS

SNSでは、企業が発信する情報を顧客へダイレクトに届けられるというメリットがあります。また、有益な情報を発信すればユーザーが情報を拡散してくれるので、新たな顧客を獲得することにもつながります。

また、「30代男性をターゲットにしているのでFacebookを使う」「10代女性に視覚的にアピールしたいのでInstagramを使う」のように、SNSごとの特長を活かすことで効率的に見込み顧客を育成できるのもSNSのよいところです。企業用アカウントも無料で作成できるので、「コストを抑えてリードナーチャリングしたい」という企業に向いています。

メールマガジン

顧客のメールアドレスを取得できているのであれば、メールマガジンで企業の商品やサービスに関する情報を配信するのがおすすめです。

魅力的なタイトルを付けるとともに、「新商品に関する情報」「自社製品の活用方法」のように顧客に役立つ情報を定期的に配信すれば、見込み顧客との継続的な関係を維持しつつ、資料請求やサービスの申し込みにつなげやすくなります。

また、マーケティングツールを活用すれば、「資料請求をしたことがある顧客には週1回メールマガジンを配信する」「来店歴のある顧客には金額や契約内容に関するメールマガジンを配信する」のように、ターゲットごとに配信頻度やメールの内容を自動的に設定して配信できます。

効率的にリードナーチャリングできれば、費用や手間を抑えて見込み客を育成できるでしょう。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、ビジネスに関する専門的な知識を分かりやすく解説したダウンロード型の資料で、主に見込み顧客が法人である場合に用いられる手法です。

無料ダウンロードできる代わりに、担当者の氏名や役職、部署名といった情報を入手できるのがメリットで、うまく活用すれば自社の専門性をアピールして興味や関心をさらに高められます。また、集めた見込み顧客の情報をほかの見込み顧客の情報と比較すれば、成約につながりやすい顧客に絞って営業することも可能です。

イベントやセミナーの開催

これまで紹介したリードナーチャリングの方法は、オンラインがメインでしたが、イベントやセミナーの開催といったオフラインの手法も見込み顧客育成に効果的です。

オンラインでは企業の商品やサービス、担当者と直接接触する機会を持ちにくいですが、イベントやセミナーでは、担当者と顧客が対面して商品やサービスの魅力を伝えられます。

回数を重ねれば企業への信頼感を高めやすくなるので、例えばスマホ新商品の販促イベントであれば、イベントやセミナーを通してデモ機の利用申し込みや契約手続きに進むこともできるでしょう。

まとめ

ここでは、リードナーチャリングの意味やメリット、具体的な手順や効果的な手法について説明しました。

ここで説明した内容を参考にして、見込み顧客を成約に近づけるリードナーチャリングを実践しましょう。

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