顧客に企業の商品やサービスへ主体的に興味を持ってもらうには、関心を高める情報を幅広く発信することが大切です。

近年、インターネットの普及にともない、さまざまな企業がみずから情報を発信するようになりました。それにともなって、自社が発信する情報を目立たせるのはますます難しくなっています。

そのような状況下でもターゲットとする顧客層にうまく情報を届ける方法として、「インバウンドマーケティング」が注目されています。

今回は、インバウンドマーケティングに焦点を当てて、マーケティング手法の概要やメリット、具体的な手法や他社の成功事例を説明します。

そもそもインバウンドマーケティングとは?

インバウンドマーケティングとは、ターゲットとなる顧客にとって有益な情報を検索エンジンで上位表示させたりSNSで共有・拡散させたりすることで、顧客みずから自社に興味や関心を持ってもらうマーケティング手法です。

以前は、テレビCMやラジオCM、新聞広告や雑誌広告のように、企業が売りたい商品やサービスを一方的にアピールする「アウトバウンドマーケティング」が主流でした。

しかし近年、インターネットやスマートフォンの普及によって顧客は常に膨大な情報にさらされています。このような状況下でアウトバウンドマーケティングを実施すると「不要な情報を押し付ける企業」という印象を持たれてしまう可能性もあります。

インバウンドマーケティングは、顧客が主体的に企業の情報にアクセスしてくれるよう促すので、そのような拒否反応がうまれにくいという特長があります。

インバウンドマーケティングをおこなうメリット

では、インバウンドマーケティングをすると、企業にどのようなメリットが生じるのでしょうか。主なメリットには、次の3つがあります。

以下では、これらのメリットを詳しく説明します。

顧客に好印象を与えられる

先述したように、インバウンドマーケティングでは、顧客が興味や関心を持つコンテンツを発信することで自発的なアクセスを促します。発信する情報も、顧客にとって有益な情報になりやすいため、顧客に好印象を与えやすいです。

アウトバウンドマーケティングでも、企業が発信する情報と顧客のニーズがマッチすることはあるかもしれません。しかし、顧客が求めていないにも関わらず電話をかけたりダイレクトメールを送付したりする可能性もあるため、場合によっては企業の印象を悪化させてしまうのです。

コンテンツが資産として蓄積する

インバウンドマーケティングには、発信するコンテンツが資産として蓄積できるというメリットもあります。

リスティング広告(特定のキーワードが検索されたときに表示させる広告)や、SNS広告など、オンラインの集客方法にはさまざまな種類があります。

しかし、これらの手法は一時的に顧客と接点ができても、広告出稿を中止した時点で顧客にアピールできなくなります。

それに対して、顧客にとって価値のある記事やブログなどの情報は、インターネット上にアップしておくだけで、ほとんどコストや手間をかけずに集客をし続けてくれます。

最初はコンテンツを作成する手間やコストが必要ですが、長く見ると費用対効果のよいマーケティング手法といえます。

顧客データを集めやすくなる

インバウンドマーケティングを実施すれば、顧客データを集めやすくなるというメリットもあります。

オンライン上でのアプローチがメインとなるため、ITツールを活用することで、商品やサービスに関心を持った顧客層や行動パターンを正確に把握できるからです。

たとえば、SNSの投稿分析ツールやGoogleアナリティクスといった「アクセス解析ツール」の活用が挙げられます。これらは無料で顧客層や行動パターンを分析できるため、うまく活用すればコストを抑えたマーケティングが可能です。

「30代女性に向けてアピールしていたけれど、WEBサイトには40代女性のアクセスが多くアクセスしている」というデータが得られれば、「今後は40代女性に向けてアピールしていこう」といった施策につながります。

このように、的確な顧客分析をもとに集客や売上に結びつきやすいマーケティング戦略を考えられるのも、インバウンドマーケティングのメリットです。

インバウンドマーケティングの手法とは?

ここまでは、インバウンドマーケティングのメリットについて説明しました。

では、インバウンドマーケティングは具体的にどのように実践すればよいのでしょうか。

インバウンドマーケティングの取り組み方は、大きく次の4段階に分けられます。

  1. 興味を持ってもらう
  2. 見込み顧客へと転換する
  3. 見込み客を顧客化する
  4. ファンを獲得する

以下では、これらの手順を詳しく説明します。

興味を持ってもらう

まずは、なるべく多くの潜在顧客に興味を持ってもらえるようなコンテンツ制作からスタートします。

やみくもにコンテンツを作成しても顧客を獲得するのは難しいため、あらかじめ市場の顧客ニーズを調査し、年齢層や性別、居住エリアや収入といったターゲット像を明確にしておくことが大切です。

たとえば、「40代女性が保湿力の優れた化粧水を求めており、仕事が忙しいのでオンラインで注文したいと思っている」と分析したとします。その顧客は「40代 保湿 化粧水」などのキーワードで検索する可能性があるので、ブログでそのキーワードやニーズに関連するコンテンツを発信すれば、顧客を呼び込みやすくなります。

また、ターゲット層が利用しているSNSにも同様のコンテンツを投稿し、ブログやWEBサイトに誘導すれば、より多くの顧客にアクセスしてもらえるでしょう。

見込み顧客へと転換する

つぎに、企業に興味を持ってくれた顧客を、購入する可能性が高い顧客へと転換させる段階に進みます。

たとえば、ホワイトペーパーやEbookのように、詳細なお役立ち情報が記載されている資料ダウンロードを促す方法があります。

ダウンロードする際に、氏名やメールアドレスを入力するようにしておけば、「購入する可能性が高い見込み顧客リスト」を手に入れ、個別にメッセージを送ることができます。

見込み客を顧客化する

購入見込みの高い顧客の行動や情報を分析し、購買行動につなげるステップです。

具体例として、WEBサイトへのアクセス履歴や問い合わせ履歴、購入履歴などにもとづいて、あらかじめ設定した期間ごとにメールやダイレクトメールを配信する方法が挙げられます。

これらのアプローチによって、商品についての問い合わせや見積もり請求などのアクションをした顧客は、営業部門に引き継いで購入や契約に結びつけます。

最近は、「セールスツール」「マーケティングオートメーション」のように、上記の施策を自動化するツールも出ています。ターゲット層が幅広かったり見込み顧客を多く抱えていたりする企業では、これらを活用することで効率的に、顧客を購入や契約へつなげられるでしょう。

ファンを獲得する

インバウンドマーケティングは、顧客を集めて購入や契約につなげれば終わりではありません。購入や契約をした顧客には継続的なアフターフォローを実施することが大切です。

たとえば、「スマートコンテンツ」のように、顧客のWEBサイトへのアクセス履歴や購買履歴に応じて、表示させるコンテンツを変更することが挙げられます。

「一度商品を購入した顧客に対して、次回アクセス時は関連商品を自動的に表示させる」といった仕組みを設ければ、さらに売上を伸ばせるかもしれません。

また、「SNSで口コミを投稿すれば割引クーポンプレゼント」のようなキャンペーンをおこなえば、商品やサービスの魅力をほかのユーザーに知ってもらえるでしょう。

インバウンドマーケティングの成功事例を紹介

ここまでは、インバウンドマーケティングの手法について説明しました。インバウンドマーケティングをより具体的にイメージするには、他社の成功事例を知るのがおすすめです。

以下では、インバウンドマーケティングの成功事例を紹介します。

WEBマーケティングのノウハウメディア「LISKUL」の事例

WEBマーケティングに関するノウハウを提供する「LISKUL」は、独自のコンテンツを充実させることでインバウンドマーケティングを成功させています。自社社員だけでコンテンツを増やしたのも特徴で、月間80万ものアクセスを達成し、1ヵ月あたりの資料請求数が1,000件を超えた実績も持っています。

また、「LISKUL」は、コンテンツが蓄積したことで、コストを抑えたマーケティングも可能にしています。テレアポといったアウトバウンドマーケティングをおこなっていた頃よりも効率的に顧客を開拓できるようになったため、費用対効果の高い事業運営ができているようです。

クラウド会計ソフト会社の事例

あるクラウド会計ソフト会社では、インバウンドマーケティングによって、クラウド上で利用できる会計ソフトや給与計算ソフトの利用者数を増やすことに成功しています。

自社が運営するWEBサイトでの商品紹介は先述した「LISKUL」と同様ですが、さらに動画を活用した商品紹介や活用事例の紹介をすることで、より顧客の興味や関心を高めやすくしています。また、Facebook、X(旧Twitter)などのSNSを活用し、潜在顧客が抱えている課題や悩みを解消しつつ商品に興味を持ってもらうことにも成功しています。

それと同時に、中小企業の経営者層や個人事業主の経営を支援するWEBサイトも運営し、商品を導入した顧客との関係維持を意識しているところも、インバウンドマーケティングが成功している要因だといえます。

皮革製品メーカーの事例

バッグなどの皮革製品を製造・販売する国内メーカーの事例です。この企業は、公式WEBサイトでブログ運営をするとともに、Facebookも運用してファンを増やしています。各コンテンツで、商品の魅力や活用方法を写真で伝えるとともに、メンテナンス方法や愛用者のインタビューも掲載しました。

また、同社がInstagram運用を開始した際に、Instagramの共同創業者兼CEOであるケビン・シストロム氏が「このメーカーのコンセプトや製品が気に入っている」といった投稿をしたことで、シストロム氏の約140万人ものフォロワーに企業や製品の情報を届けることができました。このように、大きな影響力を持つユーザーから商品やサービスに対する口コミを投稿してもらうことで、認知度を高められるケースもあります。

参考:インスタグラム創業者が「土屋鞄」を絶賛 その理由とは? | WWDJAPAN.com

まとめ

ここでは、インバウンドマーケティングの概要や実施するメリット、具体的な手法や他社の成功事例を説明しました。

インバウンドマーケティングの成果を感じるまでにある程度期間がかかりますが、分析と改善を繰り返しつつ施策を継続することで、徐々に顧客の興味や関心を高められるようになります。ここで説明した内容を参考にして、インバウンドマーケティングを通して多くの顧客の興味や関心を高めましょう。

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