マーケティング手法にはさまざまな種類がありますが、近年インターネットやスマートフォンなどが普及したことから、オンラインでのマーケティングに力を入れる企業も増えてきました。

中でも、顧客の口コミを広く拡散して、企業の認知度や集客数、売上を伸ばそうとする「バイラルマーケティング」は、代表的なオンラインのマーケティング手法です。

しかし、「バイラルマーケティングという言葉を初めて聞いた」「どうすればバイラルマーケティングを成功させられるのだろう」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、バイラルマーケティングの概要や実施する方法、バイラルマーケティングのメリットデメリットや他社の成功事例について説明します。

そもそもバイラルマーケティングとは?


そもそもバイラルマーケティングとは、インターネット上での口コミ拡散を基本として、特定多数の顧客に企業の商品やサービスの魅力を伝えるマーケティング手法です。

「バイラル(Viral)」が「ウイルス性の」という意味を持つように、まるでウイルスのように情報が広まっていくことから、この名称が付けられています。

顧客が口コミを広めるツールとして、主にSNSが挙げられます。バイラルマーケティングにおいて、SNSは「バイラルコンテンツ」とも呼ばれています。企業の直接的な働きかけがなくても、自発的に商品やサービスの魅力を発信してくれることから、SNSはバイラルマーケティングにおいて主要なツールとなっています。

SNSは、新聞広告やチラシといったマーケティング手法とは違い、顧客同士のつながりを通して企業の情報が広まるため、 高い集客効果や売上が見込めます。

ステルスマーケティングとの違い

SNSなどを活用して企業の商品やサービスの魅力を拡散するという点では、ステルスマーケティングと似ています。しかし、ステルスマーケティングは、バイラルマーケティングとは違い、情報を拡散するために企業が積極的に介入するという特徴があります。

たとえば、「○○社の新商品を購入したら、従来製品より使い心地がよかった」といった口コミを、企業の担当者が顧客を装って発信したり、企業と関係が深い人物に報酬などを渡して、よい口コミを広めてもらったりするなどの方法が、ステルスマーケティングに該当します。

ステルスマーケティングを実施すれば、一時的に顧客の注目を集めることができるかもしれません。しかし、情報の裏に企業の働きかけがあることが発覚すると、一気に顧客の信頼を失い、売上が長期的に低迷するリスクがあるため、絶対にしないようにしましょう。

バズマーケティングとの違い

口コミが幅広い顧客に拡散するという点では、バイラルマーケティングとバズマーケティングも似ています。

バズマーケティングは、企業が魅力的なコンテンツを用意して、積極的に発信する手法です。たとえば、「SNSで特定のキーワードを記載して投稿すれば、抽選で無料クーポンが当たる」といったキャンペーンが挙げられます。

バイラルマーケティングにおいても情報が拡散する仕掛けはしますが、実際に商品やサービスの魅力を発信するかどうかは顧客の意思に委ねられます。情報を拡散するために企業がどれくらい積極的に関わるかという点に両者の違いがあります。

インフルエンサーマーケティングとの違い

インフルエンサーマーケティングは、芸能人やインフルエンサーを利用して企業の商品やサービスの魅力を発信する手法です。この方法も、「情報の拡散」という点ではバイラルマーケティングと似ています。

しかし、先ほど説明したマーケティング手法と同様に、インフルエンサーマーケティングも、企業が芸能人やインフルエンサーを起用して積極的に商品やサービスの魅力を発信します。情報を拡散させるためにさまざまなコンテンツや企画を用意して、計画的に情報を広めるため、顧客の自由意志で企業の魅力を発信するバイラルマーケティングとは異なります。

バイラルマーケティングを実施する方法

では、バイラルマーケティングを実施するには、どのようなアクションを起こせばよいのでしょうか。

バイラルマーケティングを実施するには、顧客が「ほかの人にも伝えたい」「この企業が扱う商品が気になる」と思ってもらえるコンテンツを企画・実施する必要があります。

コンテンツにも、テキストや画像などがありますが、インパクトを与えやすいコンテンツとして「動画」が挙げられます。音声や動きをうまく組み合わせて魅力的なコンテンツを制作すれば、自然と多くの顧客に広まるでしょう。

コンテンツを制作する際は、市場で何が求められているか、どのようなコンテンツに注目が集まっているかをリアルタイムで把握することが重要です。たとえば、「自宅でできるユニークなダンスを踊ってみた」「著名な芸術家が自社のボールペンだけで魅力的な絵画を描いてみた」といったコンテンツが考えられます。

シェアボタンや「いいね」ボタンのクリックを促すアピールを併用すれば、さらに広範囲に情報が広まるでしょう。

バイラルマーケティングのメリットとは?

バイラルマーケティングを取り入れると、次の2つのメリットが期待できます。

以下では、これらのメリットについて詳しく説明します。

コストを抑えてマーケティングできる

先述したように、バイラルマーケティングを実践すると、顧客が自分自身の意思で企業の商品やサービスの魅力を拡散してくれます。芸能人やインフルエンサー、広告代理店などに費用を支払わなくてもたくさんの顧客に情報を届けることができるため、コストを抑えてマーケティングできます。

特に、事業を始めたばかりの企業や広告宣伝費が限られている企業の場合、いかにコストを抑えて商品やサービスの魅力を広めるかが重要です。バイラルマーケティングを活用すれば、企業の負担を抑えつつ集客数や売上を増やせるでしょう。

顧客に信頼してもらいやすい

バイラルマーケティングは、企業が広告宣伝に積極的な関わりを持たないため、顧客の信頼を獲得しやすくなります。バイラルマーケティングで広まる情報が、企業が主体となって発信する情報ではなく、顧客目線で商品やサービスをレビューしたものだからです。

企業が情報発信する場合、商品やサービスのメリットを前面に押し出してPRする傾向があるため、顧客によっては不信感を持つことがあります。しかし、顧客自身が信頼している友人や家族、著名人が発信する情報であれば、「この人がおすすめしているのであれば買ってみよう」のように考えてもらいやすくなります。このように、マーケティングにかかるコストだけでなく、情報の信頼性という面でも、バイラルマーケティングを活用するメリットは大きいです。

バイラルマーケティングのデメリットとは?

導入するメリットが大きいバイラルマーケティングですが、デメリットを知っておくことも大切です。

以下では、バイラルマーケティングの2つのデメリットについて詳しく説明します。

企業の印象を悪化させるリスクがある

顧客の信頼感を高めやすいバイラルマーケティングですが、情報発信の方法や内容によっては企業の印象を悪化させる場合があります。

たとえば、「複数の顧客が同じような文面で商品やサービスをアピールしている」「明らかに商品を購入させようとしている」といった印象を与える投稿が拡散すると、「企業が意図的に広めた情報ではないか」と思われ、悪いイメージを持たれかねません。

特にSNSには、よい情報も悪い情報も簡単に拡散するという特徴があります。マイナスの印象を与える投稿や口コミが広まると、企業のブランドイメージを低下させてしまうため、慎重に計画を立案する必要があります。

スパムだと疑われる可能性がある

バイラルマーケティングでは、幅広い顧客に企業の情報を拡散できます。しかし、利用するツールによってはスパムだと疑われる場合があるので注意が必要です。

スパムとは、不特定多数の顧客に対してメッセージを一斉送信する方法です。以前はメールを使ったスパム行為が一般的でしたが、近年SNSの普及にともない、SNS上でスパムメッセージが送信されるケースもあります。

「バイラルマーケティングをしているつもりだったのに、スパムメッセージだと判断された」といった事態が起こると、トラブルに発展しかねないので注意が必要です。

バイラルマーケティングの成功事例

バイラルマーケティングに関する理解を深めるには、他社の成功事例を知ることも大切です。

以下では、バイラルマーケティングの成功事例を紹介します。

ロッテの事例

国内でも大手の菓子メーカーのロッテは、若年層のガム離れが深刻化していることを課題にしていました。しかし、2017年にYouTubeやX(旧Twitter)で配信された動画によって、若年層の注目を集めることに成功しています。

その動画は、10代の中高生に人気のある俳優やアイドルを起用し、ダンス動画を挙げるものでした。これをきっかけに、「ダンスを踊ってみた」という動画を自発的に投稿する顧客が増え、テレビCMでアピールすることなく商品の認知度を拡散しています。

参考:<チューインガム>友だちとのコミュニケーションには必須!な常に話題を発信するチューインガム『Fit’s(フィッツ)』から<スポーツドリンク味>と<エナジードリンク味>を6月20日に全国発売!

清涼飲料水メーカーの事例

世界的に有名な清涼飲料水メーカーの事例です。この企業は、2011年に商品のラベルに若年層に多い「Alex」や「Amanda」といった名前や、「Mom」といった250種類もの名称をプリントして販売するキャンペーンを実施しています。

それによって、「自分の名前がプリントされたボトルと一緒に撮影してSNSに投稿する」という行為が世界中に広まりました。それと同時に、企業や商品の認知度を高めることにつながり、販売数を大幅に増やしています。

参考:10年ぶりの快挙!世界70か国で話題のコカ・コーラ社「ネームボトル」キャンペーン

運送会社の事例

ある国内の大手運送会社では、企業で働く新人が先輩や顧客に支えられながら成長していく様子を、オリジナルムービーにし、Instagramで公開することで注目を集めています。

2020年に始まったこの企画は、実話をもとに制作された動画で顧客の親近感を高め、「新人ドライバーが運ぶ荷物を実際に顧客にプレゼントする」というものです。「特典の内容は動画の最後に発表する」といった工夫をすることで、動画の視聴数や視聴時間を伸ばすことにも成功しています。

参考:インスタドラマ「新人ヤマトくん」公開中

宅配ピザ店の事例

ある宅配ピザ店では、2020年に画像に特化したSNSであるInstagramを活用して、「特定のタグを記載して自社の投稿をすればピザをプレゼント」というキャンペーンを実施しました。

宅配ピザとInstagramというこれまでなかった企画は多くの顧客に注目され、ピザの画像だけでなく、ピザが入っている箱を使った装飾など、さまざまな投稿が集まりました。キャンペーンを通じて顧客に楽しい体験を提供できたことが、企業ブランドのイメージアップにつながっています。

参考:素敵なお部屋でドミノ・ピザパーティー

焼肉店の事例

ある焼き肉店では、2020年に「肉の日(29日)にあわせて企業の投稿を、お気に入りのメニュー名とともにX(旧Twitter)で拡散すると、お食事券が当たる」というキャンペーンを実施しました。

この企画の参加ルールは、「メニュー名を記載して投稿すればよい」というものでした。しかし、顧客が自発的に企業のホームページからメニューの画像をキャプチャして投稿したため、視覚的なインパクトがある情報が拡散することになりました。その結果、多くの顧客に「この商品を注文してみたい」と思わせることに成功し、集客数を増やしています。

参考:牛角[公式アカウント]

航空会社の事例

国内の航空会社では、2020年にInstagramで所定のタグを記載し、「一度は行ってみたい」と思えるような投稿をした顧客の中から、抽選で旅行グッズをプレゼントするというキャンペーンを実施しました。

旅行の分野では、建物や景色など、旅行先の魅力を視覚的にアピールするのが効果的だとされています。このキャンペーンは、多くの顧客が「旅行に行きたい」と思いやすいものになっているため、集客数や売上の向上につながるでしょう。

参考:ANAセールス公式Instagram

まとめ

ここでは、バイラルマーケティングの概要や実施する方法、メリットデメリットや他社の成功事例について説明しました。

バイラルマーケティングは顧客の意思に基づいて情報を拡散させる手法なので、場合によってはうまく情報が広まらないかもしれません。しかし、他社の事例を参考にしながらいくつかの企画を実践し、得られた成果を分析して次回のマーケティングに活かせば、より広範囲に情報を拡散できるでしょう。

ここで説明した内容を参考にして、企業の魅力が多くの顧客に届くバイラルマーケティングを実践しましょう。

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