私たちは、さまざまな商品やサービスの中から1つを選んで購入するとき、「他の選択肢と公平に比較したうえで選択できている」と思い込んでいないでしょうか。

実際のところ、無意識の先入観や周囲の環境によって、人はしばしば非合理的な判断をしてしまいます。これらの現象を心理学では「認知バイアス」と呼びます。

認知バイアスは、マーケティング業界でもさかんに活用されています。

とくに利用されている認知バイアスの1つが「ハロー効果」です。ハロー効果をうまく使えば、自社商品・サービスを選んでもらえるように消費者を誘導することができます。

本記事では、ハロー効果の概要やマーケティングに応用する方法、ハロー効果でマーケティング効果を高めた企業の事例やハロー効果を活用する際のポイントについて説明します。

まずはハロー効果について知ろう

そもそもハロー効果とは、「人やモノなどに対するイメージが、関連性のない特徴と結びつくことで、人間の思考や判断を偏らせる現象」です。

この現象は、目の前の人・モノと、先入観がはたらく経験やイメージとの関連性が高いほど起こる傾向があります。たとえば、「英語を話せる人は高学歴だ」「見た目がしっかりしているから仕事の能力が高い」など、学歴と英語力、仕事と外見といった対象同士で偏ったイメージが持たれるケースがあります。

また、ハロー効果は「ポジティブハロー効果」と「ネガティブハロー効果」の2種類に分けられます。どちらも人間に偏ったイメージを与えるものですが、それぞれ異なる結果を招くため、違いを理解しておくことが大切です。

ポジティブハロー効果

ポジティブハロー効果とは、人間の偏ったイメージがプラスにはたらくものです。

たとえば、「高級感のあるスーツを着ている人は仕事ができる人だ」といったイメージが挙げられます。実際には、スーツの品質は仕事の能力と関係ないのですが、外見だけで「この人はなんとなく仕事ができそうだな」と判断してしまうケースは往々にしてあります。

また、「テレビで紹介されていた飲食店だから満足するに違いない」というイメージもポジティブハロー効果に該当します。もちろん、実際にテレビで紹介されるほど顧客満足度の高い飲食店もありますが、中には広告費を支払ってテレビに出演しており、実際には料理やサービスの品質が高くない場合もあるかもしれません。

しかし、そのような背景を知らない視聴者は、出演している店に対して無意識にプラスのイメージを持つ傾向があります。

ネガティブハロー効果

一方、ネガティブハロー効果は、人間の偏ったイメージがマイナスに働くものです。

たとえば、清潔感のない服装の人を見て、「収入が低そう」「学歴が低そう」といったイメージを持つケースです。実際は、服装がだらしなかったとしても、高収入・高学歴な人は世の中に数多くいるでしょう。

このように、人間が抱く先入観には、プラスのイメージを与えるものもあればマイナスのイメージを与えるものもあります。マーケティングにハロー効果を活用する際は、ハロー効果の種類をうまく使い分けることが大切です。

ハロー効果をマーケティングに応用する方法

では、マーケティングにおいてハロー効果はどのように応用すればよいのでしょうか。

主な方法として、次の3つが挙げられます。

以下では、これらのマーケティング手法にハロー効果を応用する方法を説明します。

口コミ戦略

口コミ戦略は、マーケティングにハロー効果を応用する代表的な手法です。特に飲食業の口コミでは、ハロー効果を応用することで集客力を高めやすくなります。

例としては、インターネット上の飲食店予約サイトが挙げられます。これらのサイトでは、口コミを投稿する際に、5点満点で満足度を評価できます。点数が高い店ほど、予約が集中する傾向にあります。

実際には、「知る人ぞ知る通な店」のように、点数が少なくても美味しい飲食店はあるはずです。しかし「星の数が多いほど味やサービスに満足できるだろう」という先入観がはたらくことで、このような現象が起きていると考えられます。

このような効果を飲食店が活用する場合、「口コミ投稿者にクーポンプレゼント」「口コミ投稿でドリンク1杯サービス」のように、顧客に「口コミを投稿しよう」と思われる施策を打ち出すのが効果的です。ただし、サービスの品質が悪かったり待ち時間が長かったりで顧客に不満を与えると、マイナスの口コミにつながりかねません。

プラスの口コミを増やすには、顧客満足度を高めるような店舗づくりをする必要があります。

有名人の起用

テレビやネット記事、動画などで、芸能人やインフルエンサーが商品を紹介すると、「有名人が使っているのだからきっと満足できるだろう」という意識を与えます。

これは、有名人に対する親近感や憧れといったプラスの感情が、顧客のポジティブな判断に影響していると考えられます。

マーケティングに応用すれば、有名人を起用することで企業の商品やサービスによいイメージを持ってもらい、集客数や販売数を伸ばしやすくなります。

しかし、有名人であれば誰でも起用してよいわけではありません。シニア層向けのサプリメントを販売したいのに若年層の人気のアイドルを起用したり、メディアで度々トラブルが報じられている有名人を起用したりすると、ターゲットに響かないだけでなく企業の印象を悪化させる可能性があります。有名人を起用する際は、ターゲットにプラスの印象を与えられるよう、慎重に選ぶ必要があります。

ブランド戦略

マーケティングで重要視されるブランド戦略(ブランド価値を高めるために企業や組織が行う施策)も、ハロー効果を利用しています。

企業のブランドイメージを高めることに成功すれば、「この企業が提供している商品やサービスはどれを選んでも満足できるだろう」というプラスのイメージを与えられます。

また、「安くて質のよい家電製品を手に入れるなら○○社」「リゾート地で非日常感を味わうなら△△社の宿泊施設」のような、強力なブランドイメージを作れれば、費用をかけて広告宣伝することなく集客数や売上を伸ばすことも可能です。

ただし、ブランド戦略は短期的に効果が出るものではありません。魅力的な商品やサービスを継続的に開発するとともに、メディアへの露出やよい口コミを増やす施策を続けることが大切です。

ハロー効果でマーケティング効果を高めた企業の事例

ここまでは、ハロー効果をマーケティングに応用する方法について説明しました。ビジネスにおけるハロー効果の活用方法をさらに詳しく知るには、他社の事例を参考にするのがおすすめです。

以下では、ハロー効果でマーケティング効果を高めた企業の事例を紹介します。

モスバーガーの事例

国内大手のチェーン店「モスバーガー」は、企業のホームページに「笑顔で働く従業員」の写真を複数掲載しています。

それによって、「この店舗に行けば明るい雰囲気で働くスタッフに心地よい接客を受けられる」「過ごしやすい雰囲気で美味しいハンバーガーを食べられる」といったイメージを与えているので、「ハンバーガーを食べたい」と思う顧客に店舗を連想してもらいやすくなります。

通常、店舗に行くまで従業員の顔は見えませんが、この企業のように、ホームページ上でメニューだけでなく従業員の様子まで把握できると、入店ハードルを下げて集客数を増やせるでしょう。

参考:モスバーガー公式サイト(2021年4月時点での掲載内容を参照)

不動産会社の事例

都内で事業を展開する不動産会社「ハローホーム」では、ホームページのトップ画面に、リビングで幸せそうに暮らす家族の写真や魅力的な風景写真、都会でありながらも美しい自然を感じられる写真を掲載することでイメージアップを図っています。

不動産業では、物件や街並み、入居者の様子など、視覚的にイメージしづらい部分が多くあります。また、「多くの資金が必要」「契約手続きが難しそう」といったイメージもあるため、顧客によってはネガティブハロー効果がはたらくかもしれません。

しかし、ホームページ上で「この不動産会社で物件を選べば幸せな暮らしを手に入れられる」「住み心地のよい街で快適な暮らしができる」といったイメージを与えられれば、「この不動産にお願いして物件を探してもらおう」と思ってもらえるでしょう。

このように、ハロー効果を活用すれば、意図的に企業が与えたいイメージを顧客に持ってもらえます。しかし、業種によって適した手法は異なるため、ハロー効果をマーケティングに活用するポイントを知ることも大切です。

参考:株式会社ハローホーム(2021年4月時点での掲載内容を参照)

ハロー効果をマーケティングに活用するポイント

企業が与えたいイメージを意図的に顧客に与えるには、次のポイントを意識する必要があります。

以下では、これらのポイントについて詳しく説明します。

実際の商品やサービスと乖離しないようにする

先述したように、ハロー効果には「ポジティブハロー効果」と「ネガティブハロー効果」があります。集客数や売上を伸ばすにはポジティブハロー効果を活用することが大切ですが、マーケティング手法によってはかえってマイナスの印象を与えかねません。

特に、「業界内でトップクラスの品質のITツール」のように、商品やサービスの特徴を前面に押し出してマーケティングをすると、「価格の高さ」「使用方法の難しさ」といったデメリットが隠れがちです。

購入前はプラスのイメージを持ってもらえていても、実際に利用してみて満足度が低ければ、顧客を定着させることは難しいでしょう。ポジティブハロー効果をうまく活用するには、顧客満足度を高める商品やサービスを開発するとともに、事実に基づいたアピールをすることが大切です。

顧客のニーズを理解したうえで情報発信する

マーケティングで商品やサービスの情報を伝える際は、顧客のニーズを理解したうえで発信することも大切です。企業が考える魅力をどれだけ積極的に発信しても、それが顧客の興味や関心を高めるものでなければ集客や売上につながらないからです。

たとえば、「〇〇市に住む30代の女性が、仕事帰りにテイクアウトできる栄養バランスの整った食事を求めている」というニーズが分かったら、「30代女性に人気のインフルエンサーに、自社の料理をテイクアウトしてSNSレビューしてもらう」といった戦略を考えられます。

このように、「どの顧客層にアピールするのか」「ターゲットはどのような点に課題や悩みを感じているのか」といった情報を明らかにすると、実施すべきマーケティング手法を考えやすくなります。

まとめ

ここでは、ハロー効果の概要やマーケティングに応用する方法、ハロー効果を活用してイメージを高めている企業の事例や自社のマーケティングに活用するポイントについて説明しました。

ハロー効果をマーケティングに活用する際に課題に上がりやすいのが、施策の評価です。効果が目に見えるわけではないので、実際にポジティブなイメージを持ってもらえているかを判断するのは難しいでしょう。

しかし、「企業についてどのようなイメージを持っていますか」「テレビCMやWeb広告を見てどのように感じましたか」のように、ヒアリングやアンケートなどで顧客の声を聴くことで、マーケティング施策の効果を検証して改善させられます。

ここで説明した内容を参考に、ハロー効果をマーケティングにうまく活用して、企業のイメージを高めましょう。

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