本は知識や知見を得られるだけでなく、時には人の人生や生活までもを豊かにしてくれます。そんな本を販売する「本屋」を経営するうえで重要なのが、店舗の内装デザインです。

内装デザイン次第で、ビジネスが成功するかが決まるといっても過言ではありません。本記事では、本屋における店舗内装について、工夫のポイントや集客に強いデザインの特徴などについて紹介します。

本屋の集客には内装への工夫が重要

本屋に限らず、店舗経営を行ううえで「内装」への工夫は欠かせません。商品やサービス、価格などが他社より優れていても、内装に魅力を感じない店舗では、せっかくの強みを活かしきれないでしょう。

ここでは、店舗内装デザインで工夫するべきポイントを2つご紹介します。

顧客満足度を高めることができる

ビジネス成功のカギを握るのは、業種や業態に関わらず「顧客満足度」です。 顧客満足度の高い店舗では、お客様との結びつきが強くなり、自然とリピーターが増えます。

また、顧客満足度が高いとネットなどでも良い口コミを獲得しやすく、新規顧客の獲得にも困りません。顧客満足度の向上に大きく影響するのが、店舗における内装のデザインなのです。

お客様に快適な時間を過ごしてもらい、おしゃれな雰囲気を与えるような内装の店舗には、自然と人が集まり、紹介がさらに紹介を呼びます。

他店との差別化を図れる

店舗内装への工夫は付加価値となり、他店との差別化を図れます。ただおしゃれな店舗にするだけでなく、「本を探しやすい」「なんとなく立ち寄りたい」「他店と比べて面白い」と感じるような、お客様を中心としたデザインであることも重要です。

これらは、Amazonなどの電子書籍や大型書店との差別化にもつながります。商品やサービスはもちろんのこと、他店にはない工夫によって、替えが効かない理由を明確にしましょう。

デザイン事務所などとも相談し、内装を通じた自社ならではの「本屋プラスα」の要素を考案してみてください。

本屋の内装作りのポイント

本屋の内装作りのポイント
  • 先に本棚とレジカウンターの配置を決める
  • ターゲットに合った内装にする
  • 顧客目線を意識してデザインする
  • 回遊性のある動線をつくる
  • 個性やこだわりが感じられる内装にする

「あのお店で本を買いたい」と思ってもらえるような本屋にするには、内装デザインが大きく影響します。しかし実際のところ、どのような内装が売上拡大やリピーター獲得につながるかがわからないという方も多いでしょう。

そこで、本屋の内装作りにおける4つのポイントを紹介します。

先に本棚とレジカウンターの配置を決める

店舗の内装作りでは、店内に必ず必要なものから配置するのが鉄則です。本屋であれば、本棚とレジカウンターなどがそれにあたり、これらの配置を優先することで、全体のレイアウトが考えやすくなります。

また、新規オープンのケースでは、急に足りないものが判明し、慌てて購入するといったことも起こりがちです。このような状態では、適切な配置もままなりません。

できるかぎり事前に必要な機器や道具などをリストアップし、それを元に追加や削除をすれば、より効率的に内装を作り上げられるでしょう。

ターゲットに合った内装にする

内装デザインは、お客様の「滞在時間」にも大きく影響します。滞在時間が伸びれば、その分顧客が商品を閲覧する機会も増え、追加注文などにもつながります。

よって、ターゲットとするお客様を明確にし、それに沿った内装デザインに仕上げなければなりません。本屋の場合、ターゲットとなるお客様の「年齢層」「性別」「来店目的」などをイメージし、レイアウトやカラーリングを決定しましょう。

お客様の滞在時間が長い本屋は、すなわち居心地が良い本屋ともいえます。

顧客目線を意識してデザインする

内装デザインが決まったあとは、お客様の目線で動きを予想し、動線をシミュレーションしましょう。動線とは、人が歩いた軌跡を線で示したものです。

お客様の入店から退店までの動線は、店舗のレイアウトによっておおよそ決まります。たとえば、店舗の奥まで行ぎずらいレイアウトでは、途中で面倒となり、あきらめてしまうケースが考えられます。

また、シミュレーションの際は問題なかったとしても、実際に店舗を運営する中で、シミュレーションでは気づかなかった問題や課題を発見する場合もあるでしょう。内装の完成後でも自由にレイアウト変更をできるよう、棚やイス、テーブルなどの大型家具は、可動式の仕様にしておくと便利です。

回遊性のある動線をつくる

お店の動線作りでは「お客様の動線は長く」「従業員の動線は短く」するのが基本です。お客様の動線は長くするほどに「回遊性」が高まります。

店舗における回遊性とは「店内の回りやすさ」を意味します。回遊性の高い店舗では、お客様の滞在時間が長くなり、多くの商品が見られるため、その結果として売上増加につながるのです。店内に行き止まりを作らず、1周できるような動線にしましょう。

一方、従業員の動線は短くすることで、移動の無駄が減り、作業効率が上がります。お客様と従業員の動線では、考え方が異なることを認識したうえで、ターゲット層の行動を調査し、自身の店舗に最も適した動線計画を練るようにしてみてください。

個性やこだわりが感じられる内装にする

本と一口にいっても、さまざまな種類が存在し、なんでも扱う本屋であれば大型店で事足ります。よって、個性やこだわりが感じられる内装にすることで、店舗に独自の強みを持たせることが可能です。

特に品揃えの多さを強みとしない場合は、お店の「雰囲気」「世界観」「コンセプト」に惹かれて来店するお客様も少なくありません。よって、当たり障りのない内装よりも、ブルックリン風や北欧風など、店舗の全体的な雰囲気にこだわりや特長を持たせるほうが、コアなファンを獲得できます。

また、店内のインテリアや音楽などへのこだわりもお客様を引きつける要素の1つです。コンセプトを明らかにし、オリジナル性の高い内装とすることで、大型店との差別化を図りましょう。

集客力のある本屋の特長

集客力のある本屋の特長
  • 自宅のようにくつろげる空間がある
  • 本の陳列が工夫されている
  • 雑貨や小物などの関連商品も販売している
  • カフェやバーが併設されている

集客力の高い本屋には、共通する要素がいくつか存在します。言葉には表現できずとも「なんとなく行きたくなるお店」を見かけた経験が一度はあるのではないでしょうか。

ここでは集客力のある本屋の4つの特長について解説します。

自宅のようにくつろげる空間がある

座り心地のよいソファや間接照明、グリーンを取り入れた空間の提供は、集客につながります。その例として、東京都新宿区の「TSUTAYA BOOK APARTMENT」では、「本を軸とした、新宿で一番くつろげる、家よりも落ち着ける空間」をコンセプトに、自宅のようにくつろげる空間を提供していました。

寝転んで読書ができる「グランピングエリア」や、女性に嬉しい充実の「パウダールーム」を設けるなど、一日中でも滞在できる本のテーマパークともいえるような場所です。

本屋に滞在する時間を楽しんでもらえるような工夫を凝らすことが、集客力のある本屋の特長ともいえます。

参考:TSUTAYA BOOK APARTMENT– 新宿で24時間くつろげる本屋・個室、パウダールームを完備 – TSUTAYA [T-SITE]
(2021年6月時点)

本の陳列が工夫されている

集客力のある本屋は、本の陳列方法に対しても変化を出しています。本屋の陳列方法として代表的な5パターンは次のとおりです。

  • 平積み:表紙を上に向けて積み上げる
  • 面陳列:本を棚に立てて背表紙ではなく表紙を見せる
  • 棚差し:背表紙を見せて並べる
  • 複数箇所陳列:1つの本をさまざまなコーナーで陳列する
  • 多面陳列:1つの本の複数面を見せる陳列

中でも、平積みで置く本は話題性が高く、よく売れるものを顧客の目に入るように工夫している場合が多いです。また定期的にジャンルを限定して陳列方法を変えたり、遊び心溢れる個性的なコーナーを作ったりなど、独自の特色を打ち出すことが重要といえます。

雑貨や小物などの関連商品も販売している

本屋は小売業の中でも集客力が高いとされており、百貨店やショッピングモールの多くで本屋が出店しているのは、このためです。よって、本以外の雑貨や小物、文具などを扱う「複合型」の本屋が主流となってきました。

「本」の内容に関連した商品を陳列することで、他店との差別化を図り、その相乗効果によってさらなる集客が見込めます。たとえば、アウトドア関係の本のそばにはキャンプギアを置くなど、関連商品の販売によって本に付加価値を付けているのです。

カフェやバーが併設されている

カフェやバーなどが併設する書店も高い集客力を誇ります。本屋と併設するカフェを利用するお客様側のメリットは、購入せずとも本を読めることです。

さらに本来、本屋側にはメリットの少ない、いわゆる「立ち読み」もカフェやバーを併設することで「飲食代」として売上に変わります。

お客様側と本屋側のそれぞれのニーズが合致した取り組みであり、本屋併設のカフェやバーが増えている理由です。このように、来店するお客様の間口をいかに広げるかが、本屋が集客するための「カギ」となるでしょう。

まとめ

本屋は内装や本のラインナップなど、店舗ごとの個性が色濃く出ます。よってお客様はただ本を購入するために来店するのではなく、その雰囲気や世界観を楽しむために来店しているケースが多いです。

だからこそ、本屋の内装にはとことんこだわり、新規顧客とリピート客のいずれも獲得できるような工夫が必要となるでしょう。素晴らしい本との出会いを紡ぐ本屋づくりをするためにも、今回ご紹介した集客力のある本屋の特長や内装作りのポイントを参考にしてみてください。

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