ホテル・旅館は業界全体として繁忙期と閑散期がある業種であり、いずれの時期でも新規顧客やリピーター獲得などの集客に関する悩みを持つ方も多いでしょう。良いサービスを提供するだけでなく、その魅力を顧客に正確にアピールし伝えられるかどうかが集客に大きく影響します。

本記事ではホテル・旅館の集客を成功に導くポイントや集客力をあげるアイデアを具体的にご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

ホテル・旅館業界の集客方法とは?


ホテルや旅館に関わる集客方法や市場には、近年でさまざまな変化が起きています。社会情勢などの外的要因により旅行者数に変動があることや、インターネットやSNSのさらなる普及・発展により顧客が情報を得る手段も多様化していることから、より時代にあわせた集客方法やマーケティングの導入が必要になっているのです。

たとえば、以前までは旅行雑誌や旅行サイトに掲載してもらうことで、読者に自社の宿泊施設を見つけてもらう手法が多く活用されていました。しかし、これだけでは観光地の人気や土地の魅力に頼ることになってしまい、状況が変動することで影響を受けて予期せず集客ができなくなってしまう可能性があります。そこで、自発的に公式サイトの開設やSNSの運用を行うことで、情報発信の場や顧客との接点を自ら作り、ホテルや旅館そのものの集客力や魅力をあげるようなマーケティングが行われるようになっています。

実際の予約には、後述する「OTA」のように宿泊施設が多数掲載されたプラットフォームなどが多く活用されていますが、そこでより選ばれるホテルや旅館になるためにも、情報収集をしている顧客にどれだけアプローチでき、どれだけ魅力を伝えられるかが、集客・予約増加の肝になっているのです。

ホテル・旅館の集客を成功させるポイント

ホテル・旅館の集客を成功させるには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ターゲットとなる客層をいかに効率的に集客できるかが重要です。集客を成功させるための3つのポイントについて、詳しくみていきましょう。

1.ホテル・旅館のコンセプトやアピールポイントの整理

ホテル・旅館の集客を考えるうえでまず重要なのが、コンセプトやアピールポイントを整理することです。自社のホテルや旅館はどのようなコンセプトでどのような魅力を持っているのかを改めて洗い出してみましょう。

アピールポイントには、立地や景色、料理、温泉、接客やサービスなどさまざまな要素がありますが、これらをすべてアピールしようとすると「一貫性」を失ってしまう可能性があります。その結果、訴求内容が曖昧になり明確にターゲットを定めることも難しくなってしまいます。自社にとって強みは何かを考え、ターゲットに合った訴求ができるように情報を絞りましょう。

また、コンセプトとは「全体を通じた基本的な考え方」「​はじめから終わりまでの一貫した考え方」を意味する言葉です。つまり「このような基本的な考え方の基に運営しています」という方針を指し、利用者がホテルや旅館全体に抱くイメージにも関わります。アピールポイントとあわせてコンセプトを明確にすることで、一貫性のある訴求が行えるようにしましょう。

2.マーケティングの増強

新規の顧客は、ネットなどを活用してホテルや旅館を「探す」という行動から始めます。よって、より多くのターゲットの目に触れやすくするには、マーケティング増強が欠かせません。

多くのホテル・旅館は、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)を通じて予約を受け付けています。OTAとは、インターネット上のみで取引を行う旅行会社を指し、店舗営業を行う旅行会社はOTAには含まれません。例えば、OTAの代表として楽天トラベルやじゃらん、るるぶトラベルなどが挙げられます。OTAに登録しておくことで多くのユーザーの目に留まるだけでなく、認知度の上昇にも期待できます。

また、予約成立とならない場合も「次回の旅行ではこのホテル・旅館を利用しよう」といったように潜在需要の獲得に期待できる点も特徴の1つです。

しかし、Web検索の方法の変化が著しい昨今、OTAへの依存はリスクも含みます。OTAの本質は比較検討サイトであり、競合他社が増えればその分、価格競争に巻き込まれます。また、予約成立に対する手数料を払い続ける必要があり、いずれもコスト面におけるデメリットがあります。よって、OTAを上手く活用しながらも、自社サイトやSNSなどを効果的に利用し、予約サイトに頼らない販売戦略や集客活動に取り組むことが重要なのです。

3.既存顧客へのアプローチ強化

ホテルや旅館の集客では、新規顧客の獲得だけでなく既存顧客の確保が重要なポイントとなります。定期的に利用してくれる既存顧客を継続的に獲得できれば、経営の安定化にもつながるためです。

新規顧客を既存顧客へと変えるには「コミュニケーション」が必要で、その方法としては、SNSやメルマガなどが有効です。キャンペーンやイベントなどの情報を定期発信し、リピーターとなってもらえるような工夫を施しましょう。

また、ポータルサイトなどに投稿する口コミも重要な役割を果たします。口コミとは、宿泊客のリアルな感想そのものであり、良い口コミ・悪い口コミはどちらも顧客との貴重な接点となるものです。

いずれにおいても、既存顧客へのアプローチを強化するには、従業員への教育などを実施するなど、社内体制の整備が必要です。

ホテル・旅館の集客力をあげる具体的なアイデア

ホテル・旅館の集客力をあげる具体的なアイデア
  • さまざまなSNS媒体を利用する
  • LINE公式アカウントを開設する
  • 口コミへの返信をこまめにする
  • キャッシュレス決済を取り入れる
  • ホームページのクオリティを上げる
  • ホームページのコンテンツに力を入れる
  • イベント・フェアを開催する
  • 看板や旗を建てるのもホテル集客のひとつ

インターネットの普及によって情報が溢れている現在では、ホテル・旅館の集客が難しくなっています。よって、これまで以上に視野を広げたうえで、ターゲットに対してアプローチしなくてはなりません。そこで、ホテル・旅館の集客力をあげる具体的なアイディアをいくつかご紹介します。

さまざまなSNS媒体を利用する

SNSの普及が著しい昨今、ホテル・旅館の集客にもSNSが多く利用されています。しかし、各SNSが持つ特徴を正しく理解したうえで利用しなければ、思った成果を得られない可能性が高いです。

数あるSNSの中でも、無料かつホテル・旅館の宣伝に活かせるツールは次のとおりです。

  • X(旧Twitter)…最大140文字以内という制限をつけて投稿するサービス。多くのユーザーに投稿が拡散・閲覧されやすい仕組みがある。
  • Instagram…写真や動画の撮影、編集、共有に特化したサービス。自分で撮影した写真に対してフィルターや文字入れなどで編集し、おしゃれに加工できる。
  • YouTube…Googleが提供するネット上の動画共有サービス。誰でも無料で利用でき、動画視聴だけでなく、自身で撮影した動画を世界中の人に見てもらうことが可能。

おすすめのSNSその1.Instagram

Instagramの全世界のユーザー数は10億人越え、日本国内で3,300万人を越えるとされています。そのInstagramのメイン機能は「写真の投稿」です。

ユーザーがInstagram内で投稿を検索しやすいよう付ける「#(ハッシュタグ)」を使い、「#(ハッシュタグ)+ホテル名」などで検索すると、公式アカウントだけではなく、実際の宿泊者の投稿が見られます。最近ではリアルな口コミが知れる手段としてInstagramを活用し、その投稿内容からホテル・旅館を決める人も多いです。また、海外からの旅行者もInstagramを参考にする場合が多く、インバウンド需要への対応も目指せます。

写真がメインのInstagramで集客するには、「外観」「客室」「景色」といった雰囲気やイメージが伝わる写真を用いて、定期的に投稿するようにしましょう。また、世間に大きな影響力をもつインフルエンサーを招き、ホテルの魅力を伝えてもらうのも1つの方法です。

参考:【最新Excel配布中】日本・世界のSNSユーザー数まとめ(Facebook,Twitter,Instagram,YouTube,LINE)

Instagramの運用や集客方法についてはこちらの記事を参考にしてみてください。

インスタグラムでのお店の集客|店舗向け運用方法や活用のコツを解説

おすすめのSNSその2.YouTube

YouTubeによる集客もホテル・旅館の魅力を伝えるという観点では、重要な集客方法の1つです。写真やテキストでは伝えられない内容について、動画を用いることで、視覚に訴えることができるでしょう。

たとえばホテル・旅館の「周辺景色」「調理風景」「従業員の働く姿」などは動画のほうが伝わりやすく、ユーザーは自身が宿泊したシーンをより鮮明にイメージできます。また、人気ユーチューバーやインフルエンサーに依頼し、ホテルの魅力を紹介をしてもらうのも方法の1つです。

参考:ホテル・旅館・民宿の動画プロモーションの制作、活用事例|クラウド動画編集ツール【メディア博士】

SNS全般の集客や運用方法については、こちらの記事にまとめていますので、あわせてご覧ください。

集客にSNSを活用する!SNSごとの特徴と運用のコツを解説

LINE公式アカウントを開設する

LINE公式アカウントとは、コミュニケーションアプリの「LINE」を通じ、企業や店舗がユーザーとコミュニケーションを図れるサービスです。ホテル・旅館のLINE公式アカウントを持つことで、ユーザーはホームページにアクセスせずとも、宿泊の予約をできます。

また、チャットボット機能によって24時間いつでもユーザーからのお問い合わせに対応できる仕組みもあります。宿泊予約はもちろん、質問や確認などのカスタマーサポートを充実させることで、顧客満足度の向上を狙うことができるでしょう。

LINEは日本におけるコミュニケーションツールの1つとして定着しており、「配信情報の開封率が高い」「顧客の再来店を促せる」といった点がメリットです。タイムラインやトーク画面で定期的なメッセージ配信を行うことで、ホテル・旅館の存在をさりげなくアピールできます。

参考:ホテル・旅館・飲食店は販促・集客施策に取り入れたい!リピーター獲得に使えるLINEの特徴と活用法とは ー「PRADIME」(パラダイム)ー

口コミへの返信をこまめにする

前述のOTAを筆頭するポータルサイトの多くは、宿泊者からの口コミが書けるようになっています。口コミを書く目的は人それぞれですが、中にはホテル・旅館からの返信を楽しみにしているユーザーがいるのも事実です。

よって、返信内容によっては、そのままリピートにつながる可能性もあり、まだホテルに訪れたことがない人も、その口コミを参考にして来店するケースもあります。ポータルサイトなどへの口コミに対する返信対応はこまめに行い、せっかくの接点を逃さないようにしましょう。

また、自社に対するクレームを口コミとして受けた場合も、放置してはいけません。真摯に対応する旨を返信し、指摘のあった箇所はすぐに改善しましょう。悪いクチコミに対応する真摯な姿勢が、返って「このホテル・旅館は信用できる」と印象付け、新たな顧客獲得につながる場合もあります。

キャッシュレス決済を取り入れる

キャッシュレス決済をホテル・旅館の支払いに利用する方も増えています。キャッシュレス決済とは、お札や小銭などを使わずにお金を払うことで、その手段は、クレジットカードやデビットカード、​スマートフォン決済、電子マネーなどさまざまです。

もしキャッシュレス決済を未導入の場合は、なるべく早急に導入することをおすすめします。決済方法が現金のみの場合、キャッシュレス決済を希望している人にとっては、選択肢から外れてしまいます。キャッシュレス決済への対応の遅れは、客離れが起きてしまうリスクとなりかねません。

キャッシュレス決済の導入については、こちらの記事でメリットや課題について詳しく解説しています。

キャッシュレス決済を経営に導入するのはおすすめ?導入時のメリットと課題についてご紹介

ホームページのクオリティを上げて更新し続ける

ポータルサイトやSNSだけでは伝えきれない部分は、自社のホームページや公式サイトで表現しましょう。ホームページに訪れるユーザーは、ホテル・旅館に関する何らかの情報を見たいと感じている可能性が高く、そこで情報が不足すれば、他のホテル・旅館に移られてしまう可能性もあります。

よってホームページには総合的な情報が必要であり、もし紹介できてない内容や更新できていない情報があれば見直しが必要です。ホテル・旅館が運営するホームページに掲載すべき要素は次のとおりです。

  • 経営者や従業員の写真
  • 館内や宿泊施設・部屋の紹介
  • 宿泊プランの紹介
  • 宿泊プランや飲食の料金表
  • 宿泊予約フォーム
  • ホテルや旅館の周りの情報
  • ホテルや旅館までのアクセス手段

これらの要素の中で特に注意すべきは「料金表」や「予約フォーム」です。わかりやすく、さらには使いやすい内容となっているかは必ずチェックしてみてください。

ホームページのコンテンツに力を入れる

ホームページのコンテンツにも力を入れることで、サイトへのアクセス数の増加が見込め、その結果として、認知度や集客力の向上につながります。コンテンツとは写真や文字、動画などを含めた「内容」のことです。ホテルや旅館に宿泊することで実際に顧客が得られる利点はどのようなものがあるのか、ホームページ上のコンテンツを通してアピールすることが大切です。

ホームページのコンテンツの良し悪しは「文章」による部分が多く、文章によってユーザーを満足させる内容を表現しなければなりません。ホテル・旅館のホームページにおけるコンテンツの充実には次のような企画が考えられます。

  • ホテル内や旅館の施設での過ごし方を紹介するコンテンツ
  • ホテル周辺の観光スポット施設、飲食店などを紹介するコンテンツ
  • ホテルの宿泊プランを魅力的に紹介するコンテンツなど

また、コンテンツが充実すれば集客だけでなく顧客育成にもつながり、中長期的な観点で関心や購買意欲を高められるのです。

こちらの記事では、ホームページ作成のコツについて解説しています。

集客できるホームページを作るコツは?失敗しやすいポイントも解説!

イベント・フェアを開催する

イベント・フェアの開催は、現在でも有効な集客方法の1つであり、地域のイベントに便乗するだけでなく、主催イベントを打ち出すことで集客の安定化が図れます。

イベントの内容としては「四季に応じたイベント」「食事にまつわるフェア」などがおすすめです。また、ラウンジなどがあるホテル・旅館では、有名人の個展やコンサートなどを実施することでそのファンが訪れ、その結果として新規顧客の獲得にもつながります。

他にも、コンセプトルームを開発することも集客施策の1つとして挙げられます。特定のコンセプトにあわせた限定のデザインや設備を持った部屋を提供することで、顧客の体験価値を高めます。期間限定で数室のみで実施したり、外部の作品やコンテンツとコラボしたりすれば、さまざまなニーズに応えることができるでしょう。コンセプトルームを求めて訪れる新規顧客の獲得や、利用者によるSNSなどでのシェアも期待できます。

看板や旗を建てるのもホテル集客のひとつ

看板や旗もホテル・旅館の存在を周知し、お客様を誘導してくれる集客方法の1つです。ホテル・旅館までの道順を示したり、イベント開催を知らせたりなど、その方法はアナログながらも高い集客効果を期待できます。看板の形状や設置場所、デザインなどを吟味し、ユーザーに刺さる内容を考案していきましょう。

ただし地域によっては、看板や旗を設置できないケースもあります。また、地域ごとに条例などの規制も異なるため、看板や旗の作成前には地域のルールを事前に確認しましょう。

まとめ

昨今、ホテル・旅館を取り巻く情勢や市場の変化は目まぐるしく、今後はさらなる多角的な集客方法が求められます。本記事で紹介した集客アイディアも一部であり、これ以外にもさまざまな集客方法が存在します。

集客方法に正解はなく、どの施策がフィットするかは実施してみないとわからないでしょう。しかし、ホテル・旅館の特徴として、一部の従業員だけで取り組めるものは少なく、全社的に取り組まなければ本来の効果を得られない場合が多いです。

まずはすべての従業員が楽しんで取り組めるような集客方法を選択し、取り組んでみてはいかがでしょうか。

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