薬局を安定的に経営するには、集客によって「調剤数」を増やさなければなりません。調剤数とは、取り扱い処方せんの枚数のことです。

より多くの患者さんを集めて調剤数を増やすには、他の薬局やドラッグストアとの差別化を図る必要があります。同エリア内にある競合を調査し、自分の薬局にしかない強みを外部に伝えていくような戦略づくりが求められるのです。

そこで、本記事では薬局における集客のポイントを解説します。また、あわせて地域に根付いた薬局を目指すための方法もみていきましょう。

調剤薬局の現状と集客の必要性

昨今、医師や薬剤師などがそれぞれに専門性を高め、医療の質を向上させることを目的とした「医薬分業」が進んでいます。医薬分業とは、薬の「処方」と「調剤」を分け、医師と薬剤師といった専門家が分担することを差します。

医薬分業を選ぶ医療機関が増加したことで調剤薬局が増え、患者さん側は薬の受け取り方の選択肢が増えました。しかし、選択肢が増えた結果として、調剤薬局側は医薬品の販売だけでは生き残るのが難しい時代となったのです。

これからの時代では、調剤のプロとして患者さんの満足度を高め、地域に根付いた経営が調剤薬局に求められます。そのためにも、さまざまな方法を用いた「集客」が欠かせません。

薬局の集客を成功させるポイント

病院のすぐ近くにある調剤薬局を指す「門前薬局」では、医療機関を受診した患者さんが自動的に来局するため、集客を必要としませんでした。しかし、薬の受け取り方が多様化した近年では、特定の医療機関の処方せんに対応するだけでは、経営が成り立たなくなる可能性が高いです。

ここでは、他の薬局との差別化を図るためにも、薬局の集客を成功させる2つのポイントを解説します。

かかりつけ薬局を目指す

今後の調剤薬局は、医療機関から発行された処方箋の対応だけでなく、患者さんからの「かかりつけ薬局」への登録を目指す必要があります。「かかりつけ薬局」とは、患者さん自身が通いたい薬局を選び、その薬局が服薬情報を管理することで、互いの関係性を強めるための制度です。

自身の薬局を登録してもらうには、ただ薬を処方するのではなく、患者さんに対する丁寧な接客や待ち時間の削減など、おもてなしの精神を持つことが重要です。競合となる薬局にはない「強み」を打ち出し、患者さんの「かかりつけ薬局」としてリピートしてもらえれば、調剤薬局における経営の基盤を得られます。

また、処方箋以外の医薬品を販売するなど、付随サービス以外の小売業としての機能を持つことで、競合との差別化も図れるでしょう。

エリアマーケティングで差別化を図る

調剤薬局で集客を図るうえで、エリアマーケティングは重要です。調剤薬局におけるエリアマーケティングとは、商圏内の競合他社や患者層などをリサーチして分析することを意味します。

エリアマーケティングによって、ターゲットとなる患者さんの人数や男女比、年齢層などが把握できれば、競合にはない独自の販路が見えてくるでしょう。前述のとおり、自動的に患者さんが来局する門前薬局でも、以前は経営が成り立っていました。

しかし、現在では1つの病院に対して門前薬局が複数存在するケースもあり、調剤薬局の競争は激化しています。さらには、日本全体の人口減少の影響を受け、患者さん自体の数も減少傾向にあるのです。

今後は、エリアマーケティングの視点を持たない調剤薬局の経営は厳しくなると予想できます。ターゲットとする医療機関を特定し、商圏に関連する患者さんを集客できるような施策を考案していきましょう。

地域薬局を目指すための方法

地域薬局を目指すための方法
  • 商圏エリアのイベントに参加する
  • 顧客のニーズに合わせた物販を行う
  • LINE公式アカウントを作成する
  • 旗や看板を設置する

調剤薬局の経営には「エリアマーケティング」や「かかりつけ薬局の登録」が重要であることがわかりました。つまり、あくまで調剤薬局は地域密着型のビジネスであることを認識しなければならないということです。

患者さんだけに焦点をあてるのではなく、将来の集客につながるような地域連携の視点を持つ必要があります。そこで、地域薬局を目指すための4つの方法についてみていきましょう。

商圏エリアのイベントに参加する

テレビCMや新聞広告などの大体的な広告を打たなくても、商圏となる地域のイベントに参加することで集客を見込めます。例えば、薬に関する相談会や講演会などを開催することで、店舗名や薬剤師の顔、名前などを知ってもらうきっかけとなるでしょう。

また、町内会に参加するのも有効です。薬局を経営するからには、どこかの町内会のエリア内に所属することになります。町内会を通じて、町内会長や地域住民との関わりを深めることで、見込み患者さんの獲得に役立ちます。

薬局の空きスペースをセミナーの開催場所として開放したり、地域の方が利用できるカフェペースを設けたりすることで、商圏エリアのイベントを創出してもよいかもしれません。普段では関わられないような方との交流が、地域における認知度を高めます。

顧客のニーズに合わせた物販を行う

従来の薬局における小売は、医師の診察を必要としないOTC医薬品や健康食品などが販売されるケースがほとんどでした。しかし、今後は顧客のニーズに合わせた「生活雑貨や食料品」などの物販を通じて集客に繋げる必要があります。

物販を取り入れる薬局の目的は「患者さんとのコミュニケーションをつくること」です。患者さんの服薬状況を知っているからこそできる健康へのアドバイスは、患者さんにとって役立ちます。

例えば、日々のコミュニケーションの中で減塩の食品を提案したり、オーガニックの食品を薦めたりすることで、店頭で購入する患者さんが増えたというケースもあるのです。

患者さんとの会話の中から潜在的なニーズを探ることで、地域で役立つ薬局となるきっかけにもなるでしょう。

LINE公式アカウントを作成する

薬局向けのLINE公式アカウントの作成も、地域薬局を目指すための方法の1つです。
例えば、LINE公式アカウントの機能の1つである「リッチメニュー」を作成することで、Webページへの誘導や処方箋の受付などがLINE上で可能となります。

患者さんが処方箋をカメラで撮影して送信するだけで、処方箋の受付を完了させたり、メッセージ機能によって情報発信をしたりすることも可能です。患者さんのニーズに合わせた情報の発信によって、リピート客の減少を防げるでしょう。

ただし、LINE公式アカウントを効率的に活用するには、アカウントの存在を周知する必要があります。薬局内にポスターを貼ったり、チラシを設置したりといった工夫によって、アカウント登録を促してみてください。

旗や看板を設置する

薬局に限らずどんな業種でも、店舗の外観は集客において重要です。なかでも、通行人など地域の人の目につきやすい旗や看板は、薬局の存在を知ってもらえる大変便利なアイテムといえます。

ただし、他の薬局よりも目立せようと奇抜な旗を掲示したり、お洒落な看板を設置したりするのはおすすめしません。なぜなら、道行く方が旗や看板を見た際に、何のお店かがわからない可能性があるからです。

まずは「処方せん」や「お薬」といったメインの言葉が目立つようなデザインにし、そこに薬局があることを認知してもらいましょう。患者さんが処方箋を受ける際に「そういえば、あそこに薬局があった」と思い出してもらえれば、集客に繋がりやすくなります。

まとめ

薬局における集客の成功には「独自性」と「立地」が大きく影響します。商圏となるエリアを分析し、競合となる店舗の分析や患者層を正しく把握することで、今後の集客方法が決まります。

また、商圏エリアのイベントに参加したり、旗や看板を設置したりなど独自性を持った差別化を図りましょう。患者さんが思わず「通いたい」と感じるような薬局をぜひ目指してみてください。

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