さまざまな世代に利用されるカフェは集客力がありそうな印象があるものの、実際に開業するのはハードルが高そうと感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、ひとつひとつ段取りをこなしていけば、カフェ開業も現実的なものになるでしょう。

今回はカフェを開業する流れについて、必要な準備や費用などと共に紹介していきます。

カフェを開業するメリットとは

コーヒーや紅茶などの飲物からランチやデザートなどの食べ物まで、さまざまな飲食物の提供を想定したカフェの場合、開業までのハードルが高いという印象を持つ人もいるでしょう。しかしカフェの開業に必要な免許や資格はそれほど多くありません。開業に際しての条件をクリアして必要な届け出を行うことで、自分のお店を持ち、理想とするカフェを目指すことができるでしょう。

また、カフェと言ってもさまざまな打ち出し方が可能です。昼の時間帯は食事とソフトドリンクだけを提供し、夜の時間帯はアルコールも提供する形や、店内に物販エリアを併設したり他の業種を組み合わせたりするようなコンセプトカフェなど、自身のこだわりを込めたお店作りができるというのもカフェを開業する大きなメリットと言えるでしょう。

カフェ開業までの流れ

ここではカフェ開業までの大まかな流れを紹介します。

カフェ開業までの流れ
  1. 知識・スキルをつける
  2. 開業したいカフェの規模・業態を選定
  3. 物件探し・必要な資金の調達
  4. 店舗デザイン・メニューの考案
  5. 各種契約・申請と従業員の確保
  6. レセプション・プレオープン

未経験でも開業できるのがカフェの魅力ですので、ひとつひとつ必要事項をクリアしていけば順調に開業まで進むことができるでしょう。

知識・スキルをつける

未経験でもカフェの開業はできますが、事前にある程度の知識を得ておく必要があります。カフェを開業するにあたって知識やスキルを身につける方法を、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて2つ紹介します。

スクール・講習を受ける

カフェ開業を目指す人のために、コーヒー会社やクッキングスクールをはじめ、さまざまなスクールにおいて講習が開かれています。カフェの開業に向けての講習のため、料理や接客以外にも経営ノウハウなども細かく学ぶことができ、夜間開講するスクールであれば昼間働いている人でも参加することが可能です。

カフェを開業する上で必要な知識を細かく学べるのがメリットである一方で、実地経験を積めないというのがデメリットです。また、スクールの受講料が数万円から場合によっては100万円ほどかかる場合もあり、費用の工面が必要となります。

別の店舗で実績を積む

実際にカフェで就業することで実地経験を積むという手段も知識・スキルを身につけるにはおすすめです。実際に営業している雰囲気や業務の流れを知ることができ、開業までに何が必要かを実体験としてイメージすることができます。

デメリットとしては、就業するカフェが個人経営であるのかチェーン店であるのかによって営業形態も大きく異なるため、得られる知識が限られてしまうことが挙げられます。また、雇用されている立場のため、経営や運営などの面を教えてもらうことは場合によっては難しいかもしれません。

開業したいカフェの規模・業態を選定

自身が開業したいカフェの規模や業態などを具体的に決めていきましょう。どんなカフェを作りたいかという自分への問いに対して、具体的なイメージを挙げていきます。

ターゲット層のイメージや利用してもらいたい時間帯、お店としてどのような点を強みとしていきたいかなどを思い浮かべながら、文字としてアウトプットしていくことで内容を整理できます。自身の理想に近いカフェがすでに存在しているのであれば、参考にしてみるのも良いでしょう。書き起こした内容を基本軸としておけば、何かに迷った時に見返すことでコンセプトがブレることなく進めることができます。

コンセプトを明確にしたあとは、予定するお店の規模や座席数、サービス内容や立地、人件費などをより具体的にしましょう。それらの条件によって必要な届出や許可が異なります。ちなみに、喫茶店開業は令和3年6月1日以降は、飲食店営業許可が必要になりましたので留意しておきましょう。

参考:喫茶店の開業を予定しています。営業にあたり必要となる許認可制度が変更になったと聞きましたが、どうしたら良いでしょうか? | ビジネスQ&A | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

物件探し・必要な資金の調達

カフェ開業に必要な資金は、平均として500〜600万円と言われています。規模や立地などによって異なりますが、具体的には物件の補償金や礼金などの物件取得費をはじめ、内装・外装、設備・備品、広告宣伝費などが主に挙げられます。

カフェ開業はハードルが低いとは言え、かかる費用は大きいため、自治体や国の助成金や補助金で利用できるものがないか調べておきましょう。

飲食店経営に必要な資格や開業の流れはこちらの記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください

飲食店経営をするには?必要な資格や開業までの流れを解説

店舗デザイン・メニューの考案

物件の規模がだいたい決まったら、店舗の内装・外装のデザインを考えていきます。先に具体化させたコンセプトに見合うインテリアやデザインを、インテリア企業のサイトや自身の想定に似たコンセプトのカフェのサイトを参考にしながら検討すると良いでしょう。

店舗の内装・外装のデザインを考えていきながら、コンセプトにあわせたメニューを考案することも重要です。設定したターゲット層にふさわしいメニューかどうかだけでなく、内装・外装や全体的なコンセプトと合致するメニューかどうかも合わせて考えることで、お店全体として統一感を持たせることができます。

各種契約・申請と従業員の確保

カフェ開業に際して必要な契約や許可申請などは、突発的な出来事が起きても慌てないためにも余裕を持って少なくとも1カ月前には終えておきましょう。

また、一般的に飲食店では客席10席につき一人のスタッフが必要と言われていることから、自身が進めようとしている店舗の座席数によって、スタッフの雇用が必要な場合には求人募集を開始しましょう。

レセプション・プレオープン

物件が決まり、内装・外装工事も終えて開業を待つだけとなった折には、親しい人や近隣の方々へのお披露目も兼ねて「レセプション」や「プレオープン」の機会を設けましょう。レセプション・プレオープンはお披露目のイメージがありますが、実際にはスタッフのオペレーションやメニュー調理などにおける最終調整の日という意味が強いです。

レセプション・プレオープンは接客や調理の確認以外にも、店内の動線に問題はないか、備品に不足はないかといった見直しもできます。また、招待した方々については本人へのお披露目だけでなく、口コミで開業を宣伝してもらうという意味もあるため、レセプション・プレオープンは積極的に実施しましょう。

カフェを開業する方法

カフェ開業は小規模で始められて未経験でも可能だとは言うものの、どのような方法で開業できるのでしょうか。ここではカフェを開業する方法を主に二つ紹介します。

ゼロからはじめる

理想的なコンセプトでカフェを開業させたい場合には、自身でゼロからはじめて独立開業するというのが自由度が高い方法です。しかし、自由であることがメリットである一方で、事業計画の立案から市場調査、メニュー開発、経営も全て自分で行わなければならないことから、経営スキルや事前の情報収集など時間や手間が多くかかるというのはデメリットとも言えます。

自分の思い通りに妥協はしたくないという人や、ある程度の経営スキルと余裕ある資金を持っているという人にはゼロからはじめるカフェ開業がおすすめです。

フランチャイズからはじめる

フランチャイズ加盟とは、本部となる親企業に加盟金と毎月のロイヤリティを支払うことで、開業時だけでなく実際の運営ノウハウを得られたり、さまざまなサポートを受けたりできる仕組みのことです。知名度の高い親企業であればその看板をつけて開業することでブランドネームによる集客効果を期待できる上に、営業時間や定休日まである程度マニュアル化されているので、カフェ開業が未経験の方にとっては特にメリットになるかもしれません。

ただし、加盟金と毎月のロイヤリティを支払う必要があることや、マニュアル化されているため比較的運営上の自由度が低いということはデメリットとも言えます。そのため、収入面や自由度よりもリスクを抑えたいという場合であればフランチャイズ加盟は有効でしょう。

カフェ開業に必要な資格・申請

先の項目で、開業したい店舗の規模や座席数、サービス内容などを具体化する必要があるとお伝えしました。その理由のひとつとして、カフェ開業に必要な資格や申請が異なってくるからというものがあります。ここでは、カフェ開業に必要な資格・申請について紹介します。どのような店舗を想定しているかにあわせて確認してみましょう。

食品衛生責任者

「食品衛生責任者」は、食品衛生上の管理運営にあたる責任者をさします。コーヒーだけでなく食品を提供する店舗を開業するにあたり、保健所への営業許可申請の際に必要となる資格です。1店舗につきひとりはこの資格を持つ人を配置しなければならず、複数の店舗で同一の人が食品衛生責任者になることはできません。食品衛生責任者の資格取得には、各自治体の食品衛生協会などが実施する食品衛生責任者養成講習会を受ける必要があります。費用は1万円程度かかります。

防火管理者

「防火管理者」は、開業する飲食店の規模が収容人数30名以上の場合に必要な資格です。防火管理者とは、建物の火災等での被害を防ぐために消防計画を作成して防火管理業務を行う責任者のことをさします。

防火管理者は甲種と乙種の2種類があり、甲種はすべての施設における防火管理者になれますが、乙種は建物の規模や用途によって防火管理者になれない場合もあります。例えば「延べ面積が300平方メートル未満」「テナント部分の収容人数が30人未満」といった場合に乙種が防火管理者になれますが、あとで甲種が必要になった場合に再講習が必要になるため、あらかじめ甲種資格取得を検討するほうが良いでしょう。

受講料は甲種が2日間講習で8,000円、乙種は1日5時間程度の講習で7,000円です。防火管理講習は、都道府県知事、市町村の消防長、(一財)日本防火・防災協会がそれぞれ開催しており、地域によって日程や受講料などが異なっているので事前に確認しましょう。

開業(廃業)等届出書

個人事業を開業する場合には、「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を開業日から1カ月以内に管轄の税務署に提出しなければなりません。提出の有無に罰則や審査はありませんが、今後青色申告で確定申告を行う際にはこの開業届と「青色申告承認申請書」の提出が必要になります。

飲食店営業許可申請

ジャンルを問わずすべての飲食店において取得が必要となるのが「飲食店営業許可」です。この許可を得ることで、店舗内において調理した食品の提供と開封したお酒の店内での提供が可能になります。

飲食店営業許可の申請は保健所への提出が必要になりますが、店舗設備などの細かな規定があるため、平面図や内装工事の計画書などを持って保健所に事前に相談することがおすすめです。飲食店営業許可の申請には16,000円〜19,000円ほどかかります。申請期限や保健所の施設検査までの期間は自治体によって違いがありますので、申請に必要な書類などと合わせて、ウェブサイトなどで確認しておきましょう。

その他あるとよい資格

開業しようとしているカフェにおいて、コーヒーとともに手作りパンや菓子を提供したいと考える人もいるでしょう。手作りパンを店内だけで提供する場合には、先に紹介した飲食店営業許可があれば提供可能ですが、手作りパンや菓子をテイクアウト販売したいという場合には「菓子製造業許可申請」が必要になります。

また、お酒の提供についても深夜0時以降に提供を行う場合は「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書」、さらに接待を行う場合は「風俗営業許可」もあわせて管轄の警察署へ提出する必要があります。深夜にお酒の提供を予定している場合は確認しておきましょう。

その他にも、国家資格である調理師免許や管理栄養士免許、バリスタとして活躍したいのであれば民間資格の「コーヒーマイスター」など、必要に応じたさまざまな資格・免許があります。取得することによってお店のアピールにもつながるため、検討してみると良いでしょう。

まとめ

今回は、カフェ開業までの流れと必要な準備について紹介しました。ここまで読み進めた方の中には、必要な手続きや取得すべき資格などが煩雑すぎて、やはりハードルが高いと感じた人もいるでしょう。確かにゼロからカフェの独立開業を検討する場合には、市場調査や計画書作成、メニュー開発など自分でこなさなければならないことが多く、最初は大変かもしれません。しかし親企業のサポートを受けられるフランチャイズ開業という手段や、最初は就職して実地経験を積むという手段もあります。

また、カフェ開業にあたって必要な資格や申請も多くありますが、基本的には費用を支払って講習会を受けたり、管轄の部署に申請書を提出したりするという流れです。自分が開業しようとしているカフェの規模やサービス内容などを明確にしておいてひとつひとつこなしていきましょう。

カフェ開業の魅力はなんといっても、自身の理想やこだわりを自身の裁量で実現できる自由度にあります。メリット・デメリットももちろん存在するので、それらと照らし合わせながら、自分の理想に向けて進んでみてはいかがでしょうか。

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