店頭販売や通信販売など、消費者に対して直接商品を売る形態の小売店ですが、近年の消費増税や人口減少などの社会問題、大型店の出店などにより、業界や形態によっては安定した集客を得ることが容易ではない場合があります。その中でも集客を効果的に行うためには、さまざまなアイデアを駆使することが重要です。

今回はオンライン・オフラインにおいて実践できる、小売店が集客力アップを図るためのアイデアを紹介します。

小売店における集客力アップのコツは?

小売店が売上を伸ばすには、購入客数を増やすか、客単価を上げるかの2つに絞られます。客単価を上げるには顧客自身の購買意欲を高める必要がありますが、購入客数を増やすには小売店が集客力アップを目指すことで大きな改善が期待できます。

集客力アップを目指すには、まずは自店のリピーターを増やすことが重要です。リピーターの獲得は継続的な集客につながる他、新規客の獲得にも効果が期待できます。例えば、店舗を訪れた際に「また来たい、また買いたい」と感じた顧客が、SNSなどでそのよさを情報発信することで、場合によってはSNS上のまだ店舗を利用していないたくさんの人への宣伝になります。

実際に、アライドアーキテクツ社が2020年に発表した、約2,900名のインターネットユーザーを対象とした「SNSをきっかけとした購買行動や口コミ行動の実態調査」によると、「SNSの情報をきっかけや参考に、初めて利用するお店(小売店や飲食店)に実際に足を運んだことがあるか」の設問の回答として、Instagramユーザーの50.5%が「ある」と回答。他にもX(旧Twitter)で46.0%、Facebookで44.4%のユーザーが「ある」と回答しました。その中でも、初めて利用するきっかけとなったものとして、いずれのSNS ユーザーにおいても50%前後の人が「フォローしている友人や一般の方の口コミ投稿」と回答しています。(アライドアーキテクツ株式会社調べ)

顧客が店舗に足を運ぼうと考える最初のきっかけとして、既存の来店客からの情報発信が大きな影響を与えていることがわかります。

参考:【2020年最新版】5大SNSユーザーによる「SNSをきっかけとした購買行動・口コミ行動調査結果」公開!(Twitter、Instagram、Facebook、LINE、YouTube)

小売店の集客アイデアを考える前に必要なステップ

小売店で集客アップを目指すにあたって、必要なステップにはどのようなものがあるかを紹介していきます。

商圏範囲の特性を調べる

消費者と直接やりとりをする小売店にとって、自店のある地域や商圏とする範囲の特性を知ることはとても重要です。商圏とは、来店を見込むことができる消費者の生活圏を意味し、その小売店がどのような商品を取り扱っているかによっても商圏範囲は異なります。一般的な商圏範囲として、スーパーマーケットなら3〜5km程度、ホームセンターであれば10〜20kmのエリアが目安とされています。

自店の特徴と照らしあわせた商圏範囲がわかったら、その商圏範囲にはどのような住民が多いのかという傾向を調べてみましょう。ファミリー層が多いのか、学生や単身世帯が多いのかによっても、適したアプローチ方法が異なります。

商圏範囲の特性を調べる際には「商圏分析」を行うとよいでしょう。以下の記事では、商圏分析の種類や流れ、活用方法について解説しています。

商圏分析の目的とは|分析の流れ4ステップと成功のコツを解説!

ターゲットとなる顧客を絞る

商圏範囲と地域住民の傾向がわかったら、自店のリピーターになりそうな顧客を想定してターゲットを絞ってみましょう。ターゲットが絞られることでより具体的な宣伝方法がわかり、無駄なくアプローチをすることができます。

ターゲットの設定には、想定する人物の年齢や性別だけでなく、ファミリー層として主人の勤務先や年収、子供の有無、休日の過ごし方などを具体化して、ストーリーを作るようなイメージで設定していくと良いでしょう。

オフラインでできる集客アイデア

オフラインでできる集客アイデア
  • オフライン集客1:イベントや特売セールを設ける
  • オフライン集客2:POPや看板を設置する
  • オフライン集客3:チラシ・パンフレットを配布する
  • オフライン集客4:DMの送付
  • オフライン集客5:売り場を整える

この項目では、インターネット上以外のオフラインでできる集客のアイデアを紹介します。インターネットでの情報収集が主流となっている近年だからこそ、アナログ的な集客方法も顧客の目を引く期待が持てます。

オフライン集客1:イベントや特売セールを設ける

競合となる店舗との差別化を図るのに有効な手段のひとつが、イベントや特売セールの実施です。クーポンの配布やポイント〇倍キャンペーンなども施策として挙げられます。開業したばかりの小売店では認知度アップを目指せます。

イベントを実施する際は、自店の創業日などの節目や新商品販売のタイミングにあわせると特別感が増して集客につながる見込みがあります。自店のターゲット層にあわせたイベント内容を吟味すると良いでしょう。

また、特売やセールといった場合には、タイムセールを実施したり、セール期間中だけの特典を設けたりするなどで、競合との差別化を図ると集客アップを狙えます。営業時間帯が夜にも及ぶ場合には、日中は主婦層、夜間はビジネスマンや学生などターゲットを分けてセールや特典を設定するのもおすすめです。

オフライン集客2:POPや看板を設置する

POPやスタンド看板は、省スペースで設置でき、立ち寄った人や通行人の目に留まりやすいという特徴があります。

店内で使用するPOPの場合は、商品紹介の文面の工夫以外にも、店内のイメージや商品の大きさにあわせて目を引きやすくする工夫をすると良いでしょう。手書きやイラスト、画像などを用いて、見る人を楽しませる演出をすることで顧客の滞在時間を長くする効果も期待できます。

POPについては、こちらの記事で種類や作り方を詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

POP広告にはどんな種類がある?売上に繋がるポイントと作り方についても解説!

店舗の存在をアピールできるスタンド看板は、ビジネス街や人通りの多い場所に設置することで、リピーターだけでなく、看板を目にしてそのまま初来店につながることも期待できるため、予約をとらない業態の小売店には特に効果的でしょう。

看板を店舗に設置する意味やコツについてはこちらをご覧ください。

看板を店舗に設置する意味とは?おしゃれな看板を設置するコツも紹介

オフライン集客3:チラシ・パンフレットを配布する

チラシやパンフレットを配ったりポスティングしたりする方法は、通りすがりの人や地域の住民に対して自店の存在を直接伝えるのに適した方法です。チラシ配布にはポスティングだけでなく新聞折込などさまざまな手法があります。

新聞折込の場合は新聞の読者層が自店のターゲット層とマッチしているか、新聞配布エリアが自店に来店可能なエリアであるかなどの調査が必要です。ポスティングの場合は、配布したいエリアやマンションなどの指定ができるので、商圏範囲に住む層を調べたうえでポスティングエリアを設定すると良いでしょう。

以下の記事では、ポスティングの効果を高めるポイントを紹介しています。

ポスティングの集客効果を高める!ポイントや測定方法を解説

オフライン集客4:DMの送付

DM(ダイレクトメール)とは、顧客に対して送付するハガキや封書などのことで、集客手法の1つとしてよく用いられています。DMは、すでにリピーターである相手やしばらく来店のない相手に対して再来店を促す効果が期待できます。

定期的な購入が見込まれる商品であれば購入を促すお知らせを送付したり、しばらく来店のない顧客であれば関心のありそうな商品や新商品のお知らせ、来店時の割引クーポンを送付したりするなどで、特別感をアピールすると良いでしょう。チラシ持参の特典をつけることで、DMを配布した効果や反響測定もできます。顧客リストがある場合は来店回数を把握でき、配布するDMを振り分けるのに便利です。

DMを作る時のコツや注意点を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

効果的なDMをつくるコツとは?注意点も押さえて反応率を高めよう

オフライン集客5:売り場を整える

商品やサービスを購入するための売り場とはいえ、店内は顧客と直接やりとりできる唯一の場でもあるため、常に清潔感や明るさのある入りやすい雰囲気づくりが重要です。特に、新規顧客に対しては第一印象で悪いイメージを持たれないようにすることや、目を引き興味を持たせることが重要になります。新規顧客の入りやすさや利用のしやすさには十分に気をつけましょう。

また、長くつきあいのある顧客に対しても、来店するたびに店内を楽しんでもらえるような工夫は大切です。レイアウトや商品の配置を定期的に変えるなどの取り組みで、常に目新しさを感じるような配慮も心がけましょう。さらに、来店してくれた顧客が特別感を得られるようにお得情報やアイデアの提案などを書いたPOPの掲示もおすすめです。

以下の記事では、売り場作りにおける陳列方法の種類やコツなどを紹介しています。

売上に繋がる売り場作りの方法とは?目に留まる場所や陳列方法も紹介

オンラインでできる集客アイデア

オンラインでできる集客アイデア
  • オンライン集客1:ホームページやブログを作る
  • オンライン集客2:SNSで発信する
  • オンライン集客3:アプリを活用する
  • オンライン集客4:店舗情報をサイトに登録する

インターネットでの情報収集が一般化している現代において、オンライン上でできる集客方法はぜひ活用したいものです。ここではオンラインでできる集客アイデアを紹介します。

オンライン集客1:ホームページやブログを作る

インターネットの知識をある程度持っているという場合は、ぜひホームページやブログの作成に挑戦してみましょう。自店のホームページやブログを持つということは、オフラインでアプローチしている商圏範囲以外の人々にも幅広く自店のアピールをすることができるため、自店の認知度を上げるのに高い効果が見込めます。

ホームページを自店で運営や更新を行う場合に必要になるのはレンタルサーバー利用料やドメイン使用料です。ただし、ホームページを常に検索上位に表示されるようにしたいという場合には定期的な更新も重要になるので、コンテンツの更新がしやすいようなページ作りや検索順位を改善・維持するSEO対策の知識も必要です。

一方ブログで簡単に情報発信したいという場合には、初心者でも簡単に開設できるようなサービスや無料で利用できるサービスも多く登場しているので、自分の力量や時間配分にあわせた選択をしてみると良いでしょう。

ホームページを作る場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。集客をするためのホームページ作りのコツについて詳しく解説しています。

集客できるホームページを作るコツは?失敗しやすいポイントも解説!

オンライン集客2:SNSで発信する

初めて訪れるお店を調べる際にSNSを活用するという人が多いことを先の項目で触れたように、SNSは情報収集手段として日常的に用いられているツールです。SNSによってターゲット層が異なっているため、さまざまな企業が情報発信としてSNSを上手に活用しており、大きな話題となり多く拡散される「バズる」こともマーケティングのひとつの手法として考えられています。

文字や画像を活用して多くの層にアプローチでき、素早く情報発信できるのがSNSの強みである一方で、定期的な投稿をしなければユーザーの印象に残らずに閲覧率も下がってしまうため、常に更新できる労力や時間の確保が必要になります。

SNSごとの特徴や集客にSNSを活用する際のポイントについては、こちらの記事で解説しています。

集客にSNSを活用する!SNSごとの特徴と運用のコツを解説

オンライン集客3:アプリを活用する

リピーターとしての集客を目指すのであれば、自店の地域性や住民の特性をよく知る必要があります。さらに顧客ごとのニーズを知りたい場合には、顧客分析やセール情報の発信ができるアプリの活用が有効です。

スマホアプリ

自店独自のスマホアプリを展開し、ポイント制やクーポン配布を導入して集客アップを目指してみましょう。スマホアプリは顧客にダイレクトにアピールでき、顧客の購買履歴や属性から顧客分析を行うことができるメリットがあります。ホームページは顧客の訪問を待たなければならない一方、スマホアプリは自動的に更新を知らせる「プッシュ通知」ができるのも大きな強みです。

デメリットとしては、スマホアプリは不具合がゼロではなく、頻繁に起こってしまうと顧客が離脱してしまう可能性もあるため、アプリ開発の知識や維持できる労力が必要ということが挙げられるでしょう。

チラシアプリ

新聞購読をしない層でもチラシを閲覧できるサービスが「トクバイ」や「シュフー」といったチラシアプリです。チラシアプリの場合は、顧客以外でもチラシを閲覧できるため、新規開拓にも向いています。

また、美容室や教室などのように特売やセールのチラシを持たない小売店であっても「LINE公式アカウント」を開設すればクーポンやショップカードの機能を活用して再来店の促進効果を期待できます。

店舗集客におすすめのアプリや活用方法についてはこちらの記事を参考にしてみてください。

店舗集客におすすめなツール(アプリ)をご紹介!集客ツールのメリット・デメリットも解説

オンライン集客4:店舗情報をサイトに登録する

店舗情報やマップを検索する際に店舗情報が同じ画面に表示されていることがあります。それは各検索エンジンが提供しているサービスによるものです。最後に検索エンジンの中でも「Google社」が提供しているGoogleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)を紹介します。

Googleでの検索結果やGoogleマップの中に、自店の店名や住所、営業時間などの店舗情報を掲載することができるのが「Googleビジネスプロフィール」というサービスです。これまでは「Googleマイビジネス」という名称でしたが、2021年11月に名称が変わりました。GoogleビジネスプロフィールはGoogle検索とGoogleマップからの管理が主となるため、地域名とキーワードで検索することが多い店舗検索の際に大きな効果を期待できます。

Googleビジネスプロフィールの登録方法や設定手順、編集についてはこちらの記事をご覧ください。

Googleマイビジネスの登録方法と設定手順・編集方法を解説

まとめ

今回は、小売店の集客アップにつながるアイデアを紹介しました。小売店が売上を伸ばすには、購入客数を増やすか、客単価を上げるかの2つに絞られますが、購入客数を増やすには自店で集客力アップの努力を積んでいくほかありません。

集客力アップを目指すには闇雲にアプローチするのではなく、商圏範囲やターゲット層の把握から始めることが大切です。そうすることで、効果的な宣伝方法を見つけることができます。宣伝方法にはオンラインとオフラインの2種類があり、地域密着型の宣伝をするにはチラシ配布やDM、看板などのオフラインでの方法、多くのユーザーに自店の存在を知らせたい場合にはSNSやアプリなどのサービスを活用したオンラインでの方法が考えられるでしょう。

いずれの方法にもメリットやデメリットがあり、向き不向きもあります。自店がどのようなアプローチが集客アップとして適切であるかを充分に考え、できることから展開してみると良いでしょう。

記事のURLとタイトルをコピーする