飲食店を開業するにあたって重視しなければならないもののひとつが厨房設備です。厨房設備は慎重に選ばないと、厨房がうまく機能しないどころか、保健所の営業許可が得られない可能性も考えられるほど重要な要素です。

今回は、飲食店の開業にあたって厨房設備を整えるために必要な知識や厨房機器の種類、選び方などを紹介していきます。

飲食店で一般的に使われる厨房機器

飲食店の開業が初めてである場合は特に、何を最低限揃えたらいいのかわからないこともあるでしょう。そこで、飲食店で一般的に用いられている厨房機器を紹介します。

厨房機器1:コールドテーブル・調理作業台

調理を行う作業台の下に冷蔵庫や冷凍庫が備わっている仕様のものを「コールドテーブル」と呼びます。小規模の飲食店の場合には、調理スペースを有効活用するうえでは効率的な厨房機器です。

調理台として選ぶ場合、実際に作業をする従業員の身長や作業内容を考慮しつつ、使いやすいかどうかという基準で選ぶと良いでしょう。

厨房機器2:ガステーブル・ガスコンロ

調理を行う際に欠かせないもののひとつとして、ガステーブル・ガスコンロがあります。ガスレンジという場合は、ガステーブルの下にオーブンがついているものをさしています。

選ぶ際のポイントとしては、ガステーブル・ガスコンロの大きさ、鍋やフライパンなどを置く五徳自体の大きさ、火力の3点が主なポイントです。コールドテーブルと同様、作業効率を左右するため厨房内での動きが妨げられないようなサイズを選ぶことが重要です。火力については、自分の店舗がどのような調理を行うかを考慮すると良いでしょう。

厨房機器3:シンク

保健所への営業許可申請には一定の基準があり、シンクについても保健所の規定に沿わなければなりません。規定の内容は各市区町村によって異なりますが、調理場には2槽のシンクを備えることを必須とする場合もあるため、事前に確認が必要です。

また、シンクは飲食店のジャンルによって形が異なります。手前の縁が周囲より低くなっていてまな板を洗ったり魚介類を調理したりしやすい「舟形シンク」、茹でたそばを冷やすための「そばシンク」、または使用目的によって特注する場合もあります。自分の店舗がどのようなタイプのシンクが効率的かを考えながら選びましょう。

厨房機器4:冷凍庫・冷蔵庫

先に紹介したコールドテーブルは作業台の下に冷凍庫や冷蔵庫が備わっているものですが、こちらの冷凍・冷蔵庫は独立型の冷凍・冷蔵庫をさしています。コールドテーブルにはすぐに使用する材料を保管し、こちらの冷凍・冷蔵庫は保存用として使い分ける場合もあります。

冷凍・冷蔵庫を選ぶ際には、一般家庭での選び方と同様に適した容量のものを選ぶことがポイントです。食品をたくさん保存できるようにと、お店に見合わない大きすぎるものを購入してしまうと、電気代が高額になってしまいます。一方で初期投資を抑えるために小さめの冷凍・冷蔵庫を購入してしまうと、食材の保管ができないことで非効率的な購入の仕方になってしまうことも考えられます。

厨房機器5:製氷機

製氷機は氷を作るための機械で、特に飲み物を多く提供する飲食店の場合には必要となる厨房機器です。製氷機は大きさによって氷を作れる量が異なるため、自分の店舗の座席数や予測している回転数に見合ったものを検討しましょう。また、季節によって氷の消費量が異なるため、一番活用する夏場の製氷量や保存量も確認する必要があります。実際に取り扱うメニューと食材を意識しながら製氷機を選ぶことが大切です。また、扉の開け閉めや取り出しやすさなど、実際の営業時の導線も踏まえて考慮するとより店舗にあったものを導入できるでしょう。

厨房機器6:食器棚

飲食店において食器棚を選ぶ際に重要なのは、整理整頓のしやすさ以上に、お客様に提供する食器や調理に使う器具など全てを常に衛生的に保管できるかどうかにあります。そのため、各保健所では食器棚についても規定があります。

食器棚を購入する時は、以下のようなポイントを意識しましょう。

  • 扉がついている
  • ホコリがたまりにくく掃除がしやすい
  • 防錆加工がされている
  • 収納が必要なすべての食器が入る

常に衛生的であるためには、ホコリのたまらないような高さや清掃のしやすさが重要であり、日常的に簡単に清掃できないような設置方法では保健所から許可を認められないので注意しましょう。

飲食店の厨房に必要な備品

これまでは、調理の基礎となる大型の厨房機器について紹介してきましたが、それ以外にも作業効率を上げるために必要な備品があります。ここでは、厨房に必要な備品について主な3点を紹介します。

必要な備品1:調理器具

調理器具としては、鍋やフライパン、包丁やまな板、ボウルやザルなどさまざまなものがあげられます。自分の店舗がどのようなメニューを調理するか、どのようなサイズのものが効率的かなどを踏まえながら、実際に自分や従業員が使いやすいと思える器具を選びましょう。

また、お客様が口にする食べ物を扱う以上、何よりも衛生面への配慮が重要です。まな板や包丁など生ものを扱うものは特に、常に衛生さを確保できるように食材にあわせて複数用意すると良いでしょう。

必要な備品2:調味料入れ

出来立ての料理を提供するためには、調味料入れは出し入れや整頓がしやすいことが大切です。調理の流れの中で効率的に使えるように、容量や形状もあわせて選びましょう。

必要な備品3:食器・カトラリー

食器は店舗の規模にもよりますが、業務用食器を扱う業者から購入することが一般的です。さまざまな種類の中から、提供するメニューや店舗のイメージにあったものや、料理が引き立つようなデザインを選びましょう。

フォークやナイフ、スプーンといったカトラリーは、食器にあったデザインのものや、口当たりが良いものを揃えるとお客様への配慮にもつながります。

飲食店を開業するときに厨房設備を選ぶポイント

厨房設備を選ぶポイント
  • 保健所の要件を確認する
  • 設置スペースと機器のサイズを考慮
  • 厨房設備のレイアウトに気をつける
  • 備品の購入方法を決める
  • ビジネス・店舗に関する説明文

飲食店の開業準備の際に、厨房設備の吟味は重要なポイントのひとつです。厨房設備とは、ガスレンジ、冷蔵庫、食器棚、調理台、シンクなどがあげられますが、飲食店の開業にあたっては他にも注意が必要な点があります。開業前に気をつけるべきポイントを具体的に紹介していきます。

保健所の要件を確認する

飲食店の開業においては、所轄の保健所への営業許可申請が必要です。その際には、営業施設として一定の基準を満たしていなければなりません。主な該当箇所は以下の通りです。

該当箇所 要件
作業場 汚染を防止するため、間仕切り等で作業場が区画されていること。
壁・天井・床 平滑化されていて、掃除を容易に行える材質であること。
照明設備 作業・清掃・検査を十分に行えるよう、明るさが100ルクス以上であること。
換気設備 食品を取り扱う場所では、カビや結露の発生により汚染しないような構造であること。換気扇は防虫、防塵としてシャッターつきであること。
食品取扱設備 冷蔵、冷凍、加熱、殺菌、圧搾等の設備には温度計と圧力計を備えつけ、必要に応じて流量計などの計量器を設置すること。
洗浄設備 食品、器具や容器等を洗浄するのに十分な大きさで、必要に応じて熱湯等を供給できる洗浄設備であること。
保管設備 食品や原材料、器具等を衛生的に保管できる十分な規模の設備であること。

参考:営業許可・届出の概要|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

設置スペースと機器のサイズを考慮

厨房設備の購入を検討する際、機能性や設備基準を満たしているか以外にも、厨房機器のサイズについても考慮する必要があります。キッチンスペースは広さが限られているため、必要以上に大きな厨房機器を導入してしまうと、実際の営業時に作業がスムーズに進まなかったり、従業員の動線がしっかりと確保できなかったりということが生じてしまいます。

オーダー、調理、受け渡しまでの流れがスムーズに進められ、厨房機器があることで動線が遮られることのないように考慮して選ぶと良いでしょう。

厨房設備のレイアウトに気をつける

厨房機器を選ぶ際に動線を確保できるサイズ感が重要であることを述べましたが、配置として考える際には従業員だけでなく、お客様と従業員双方がスムーズに行き来できる動線の確保が必要です。

また、食品を扱うには常に衛生的であることが重要なため、汚れが溜まることのないよう常に清掃が行いやすい配置であることも考慮に入れましょう。

備品の購入方法を決める

お客様が納得のいく料理を提供するためにも、あとから困ることのないように厨房機器は必要ものをすべて揃えたいところです。一方で、むやみに目についたものを全て購入しようとすると、経費の無駄な支出につながります。事前に何が必要であるかをリストアップしておき、実際の営業がスムーズに進められる厨房機器を吟味しましょう。また、居抜き物件などの場合は既に備わっている厨房機器が再活用できないかをあわせて検討すると良いでしょう。

厨房機器を購入するには、新品の購入と中古の購入の2つの選び方があります。それぞれどのような特徴があるかを説明していきます。

新品

新品を購入する際の大きなメリットとして、自分の店舗にあった厨房機器を選ぶことができることがあげられます。特にメーカーや専門店から購入する際には、メーカー保証がついている場合もあるため、長く使うには向いているでしょう。複数の店舗から見積もりを取ることで、価格の比較をすることができます。

また、業者によっては設置や配管まで含まれていることもあるため、購入から設置までを全体として考えると安価であるとも考えられます。

中古品

飲食店の厨房機器は決して安価ではないため、初期投資をできるだけ抑えたいと考える場合には中古品の購入を検討することも重要です。

厨房機器は中古品以外にも、未使用の新古品、展示品なども出回っており、専門店やインターネットで購入することもできます。しかし、あくまで中古であるため、故障が起きる可能性は新品より上回ります。そのためにも機能や動作が確実であるか、汚れや傷はないかなど、細かく確認することが必要です。新品のようなメーカー保証がついていない場合は、故障が起きても修理費用は全て実費になってしまうことも考慮し、取り扱い業者がしっかりした業者であるかを含めて、慎重に選ぶことが重要です。

飲食店に必要な費用などについては、こちらの記事で詳しくまとめています。

飲食店経営に必要な費用はいくら?計算方法と費用削減のポイントを解説

まとめ

今回は、飲食店の厨房設備を整えるための、厨房機器の選び方を紹介しました。

飲食店を開業する際には保健所への営業許可申請が必要になりますが、その許可を得るためには規定の厨房設備や厨房機器を揃えることが前提となります。中でも、衛生面の確保として、常に清掃を行いやすく、ホコリが溜まりにくいものであることは重要なポイントです。

小規模の飲食店を開業する場合は特に、初期投資を最低限に抑えるためにも、新品と中古のどちらを購入するかも迷うところです。中古の厨房機器を専門的に扱う業者もありますが、中古を選ぶ際には故障や傷など不備はないか、メーカー保証が確保できているかなどの点に注意しながら慎重に選びましょう。

飲食店はお客様に料理を楽しんでもらう場であるため、衛生面には特に気をつけたいものです。従業員が効率的かつ衛生的に作業を行える厨房機器を探してみましょう。

記事のURLとタイトルをコピーする