飲食店や小売業などの小規模ビジネスの運営において、自身の店舗やサービスをより発展させていくためには店舗のデータ分析は欠かせない手段です。店舗分析を正しく行うことで、利益向上や事業拡大などさまざまな可能性も見えてきます。

今回は、店舗経営に欠かせない店舗のデータ分析がなぜ重要なのか、どのような方法があるのか、または見落としがちなポイントについて詳しく説明していきます。

店舗経営・マーケティングにおけるデータ分析の重要性

店舗のデータ分析とは、自身の店舗の売上に関する細かな情報や、顧客の属性、地域性などのさまざまな視点から自身の店舗の特徴を洗い出すことで現状を把握し、適切な店舗経営につなげる方法です。

例えば、どのような商品・サービスが需要があるか、どの月、どの曜日に集客がより得られているか、顧客はどのような層が多いかというようなことを具体化していくことで、自店の弱点が見え、目標と現実のギャップがより明確になります。

さらに、分析した結果を経営者だけでなく、雇用しているスタッフとも共有することで、今後目指すべき方向性がブレにくくなり、さらなる高い目標に向かって進むことが可能になります。

データ分析の種類

店舗のデータ分析にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを4つ紹介します。

ABC分析

「ABC分析」とは、在庫管理を効率的に行いたい場合などに用いられるデータ分析です。商品の売り上げや価格などの指標からA、B、Cの3段階に分類します。例えば、Aは必ず欠品を起こしてはならない最優先のグループ、Bは毎月定期的に発注が必要なグループ、Cは在庫が切れてから発注もしくは商品入れ替えを検討してもよいグループというように優先度によってグループ分けをすることで、より効率的な在庫管理が行えるようになります。

クロス分析

「クロス集計」とは、商品開発などで用いられるデータ分析です。例えば顧客に対してAという商品について興味があるかのアンケートを集計する際、「興味がある」「興味がない」「どちらでもない」の3種類の回答だけでは、興味があると答えた顧客の性別や年齢といった属性を把握できません。そこで、性別や年齢、さらに顧客の利用頻度などより具体的な属性を追加して集計することで、より細分化されたデータを取得することができます。さらにアプリケーションなどを用いてグラフ化すればより明確でわかりやすい分析結果を再現できるでしょう。

アソシエーション分析

「アソシエーション分析」とは、これまで蓄積された顧客のビッグデータから、顧客の購買履歴や購買のパターンを分析し、販売戦略をたてていく際に用いられる手法です。例えば、商品Aを購入する人は同時に商品Bを購入するパターンが多いから、商品Aと商品Bは目に留まりやすいように近くに陳列しよう、というように、複数の商品の関連性から販売戦略を工夫していくことができます。

メトリクス分析

「メトリクス分析」とは、収集したデータをわかりやすく数値化し、より計画通りに物事を遂行できるように管理していく手法です。例えば、商品の売れ行きや仕入れについて、それまでの経験や勘だけで進めていくのではなく、状況を数値化することで現状を把握でき、目標達成に向けてより具体的な施策をとることができます。

メトリクス分析は、プロジェクトの進捗管理や販促キャンペーンを行う際に用いられる手法です。

データ分析の流れ

データ分析の流れ
  1. 目的をはっきりさせる
  2. 仮説を立てる
  3. データ分析の方法を決める
  4. データを集める
  5. データを分析する

これまで紹介したようなデータ分析を実際に行うには、順を追って考えることが大切です。たどればよいのでしょうか。ここでは、データ分析を行うための流れを紹介します。

目的をはっきりさせる

「データ分析が必要だと書いてあったから」となんとなく始めるのではなく、データ分析が今なぜ必要なのか、目的を明確にしましょう。店舗であれば、客単価・客数・購買率など何を上げたいのかという目的を定めます。そうすることで、必要のないデータ分析で時間を無駄にすることもなく、目的が定まったデータ分析につながることが期待できます。

仮説を立てる

目的を明確化できたからといってすぐにデータ分析を始めるのではなく、次に仮説を立ててみることが重要です。「商品Aは商品Bと土曜日にセット販売したら売れやすいかも」「商品Cは雨が降っている日のほうが販売数が上がるかも」「商品Aは日曜日の午前中のほうが売れるかも」とさまざまな角度から仮説を立てていきます。それにより、収集したデータをもとにどのような方向性で分析を進めていけばよいかが具体化できます。

データ分析の方法を決める

さまざまな仮説を立てたあとは、先に紹介したデータ分析の種類の中からどの方法を用いて進めていくかを決定します。自身の店舗の業種や蓄積しているデータの種類や量、先に定めた目的などによって、適切なデータ分析方法は異なります。よりスムーズに進めるためにも、どのデータ分析方法が向いているのか見極めておきましょう。

データを集める

データ分析の種類が定まったら、いよいよ必要なデータ収集を行いましょう。あらゆる角度からより細分化したデータ分析を行えるようにするためには、日頃からさまざまなデータを蓄積しておく必要があります。業務別、商品別、店舗別などのデータは突然データ分析が必要になった場合にも役立つものであるため、日頃からデータ蓄積の手段を用意しておくとよいでしょう。

データを分析する

データ分析は最初からスムーズに行うのは難しいという人もいるかもしれません。そこで必要なのは、勘や思い込みといったものは排除して、顧客視点で慎重かつ丁寧に行っていくことです。データ分析に慣れるまでには時間がかかるかもしれませんが、分析の精度が上がるほど、店舗経営の向上につながるデータを取得できるようになるでしょう。改善点や問題点も可視化されるため、店舗全体の課題を把握するうえでもぜひ進めていきましょう。

データ分析で見落としがちなポイント

データ分析で見落としがちなポイント
  • 店舗の特性や状況の傾向
  • 顧客の行動心理
  • 正確なデータの整備
  • 目的にあった課題の施策

最後にデータ分析を始めるうえで見落としがちなポイントについて紹介していきます。ひとつ見落とすことで、まったく異なる分析結果につながってしまうこともあるので事前に理解しておきましょう。

店舗の特性や状況の傾向

まず忘れてはいけないのは、自身の店舗の特性や現状把握です。例えば、新規顧客の獲得ができておらず、しかもそのための販促が適切に行われていない、ということが仮説として立てられた場合、新規顧客だけが獲得できていないのか、それとも全体的に客数が減っているのか、何人獲得できていればよいのか、といった具体的な傾向を把握しておく必要があります。「新規顧客が獲得できない」という問題から派生させて、状況をより明確にすることが重要です。

顧客の行動心理

先にも説明したように、店舗のデータ分析を行う場合は勘や思い込みに頼らず、「顧客視点」で考えることが重要です。一方で、顧客がなぜ購入したか、なぜ購入を断念したかなどのような心理的な部分は、収集したデータだけでは知ることも難しいでしょう。

データをもとに顧客視点で考えることで、総合的に顧客の行動心理を見極めることが大切です。

正確なデータの整備

データ分析を正確に行うには、データ分析に必要なデータベースの整備も忘れてはいけません。データ分析を行う際に基礎となるマスターデータに抜けや重複はないか、例えばエクセルであればセルがずれていないかなど、基礎の部分も忘れずに確認しましょう。

また、より細分化したデータ分析を行う場合には、収集したデータ以外にも外部要因となるデータも大変重要です。外部要因とは、その日の天候や気温、湿度、気温差といった自然界のデータだけでなく、公的なイベントやニュースの情報など購買意欲に変化を与えるようなことも含まれます。

目的にあった課題の施策

先にデータ分析の流れとして説明したように、データ分析を行う目的や仮説を明確化することが、データ分析を成功させる大きなポイントです。目的が明確でない場合、どのような施策を検討すればよいのかも曖昧になってしまいます。

検討が曖昧になってしまう原因には、目的や課題が細分化されていないことがあげられます。そのため、まずは店舗の現状や何に対する改善が必要なのかということを経営者自身が明確に把握することが重要です。目的が明確になることで、店舗のデータ分析の精度向上につなげられるでしょう。

まとめ


今回は、店舗経営に重要なデータ分析の基本について説明しました。自身の店舗が順調なのか不調なのかをより具体的に把握するには、売上以外にも顧客情報や外部要因などさまざまな情報を収集してデータ分析を行うことが大切です。データ分析の方法にはいくつか種類があり、自身の店舗の種類や、データ分析を行う目的によって適した方法は異なります。

データ分析は最初からスムーズかつ正確に行うことは難しいかもしれませんが、店舗の現状把握とさまざまな角度からデータ収集を行うことで、より細分化した分析結果を得ることができます。慎重に丁寧に時間をかけて行いながら、自店の目的に合ったデータ分析を行い、店舗経営の向上につなげてみてはいかがでしょうか。

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