エステサロンは開業に資格が必要なく、資格を必要とする他のお店に比べて始めやすいのが特徴です。ただし、開業の流れや必要な準備をよく知らずに誤った方法で進めてしまうと、予期せぬ事態が起きて対応に追われたり、開業できてもその後の売上に伸び悩んだりと、後々に影響を及ぼす可能性もあります。

そこで本記事では、エステサロン開業のために必要な準備や開業の流れ、また具体的に必要な備品や手続きなどについて、詳しく解説していきます。これからエステサロンを開業しようと考えている方は、参考にしてスムーズな開業を目指しましょう。

エステサロンの開業に必要な準備とは?

エステサロンの開業前に知っておきたい知識として、次の3つが挙げられます。

  • 開業までの流れについて
  • 開業に必要な資格について
  • 保健所への申請について

エステサロンは開業のハードルが比較的低いものの、開業の流れや必要な申請については事前に正しく把握しておくことが大切です。準備できるものから取り掛かりましょう。

エステサロン開業までの流れを把握しよう

まずは、頭の中を整理するためにも開業までの大まかな流れや必要な作業、準備内容について確認しましょう。開業までの大まかな流れは次のとおりです。

  1. コンセプト設定
  2. 事業計画書の作成
  3. 物件探し
  4. 資金調達
  5. 内装工事
  6. 機材・設備調達
  7. オープン準備
  8. オープン

はじめに、ビジネスやお店全体を貫く基本的な考え方となる「コンセプト」を設定します。コンセプトが具体的であるほど、理想のサロン作りに近づけやすくなるでしょう。そのため、開業準備に追われる約6ヶ月より前になるべくコンセプトを固めることをおすすめします。

コンセプトが定まったら、どのように事業を運営するかなどの具体的な行動を内外に示す「事業計画書」を作成します。

事業計画書の作成以降の流れについては次の表にまとめました。まずはどの時期にどのようなことをしなければならないのか把握しておきましょう。実際にスケジュールを立てる際にも、やるべきことや時期、またその進捗が見やすくなるように大きな紙に書き出すなどの工夫をしてみるとよいでしょう。

フェーズ 内容
6ヶ月前 資金調達やサロンのコンセプト作り、事業計画づくりに注力。同時並行で競合店や立地、物件の調査も進めていくと次月の準備に繋がる。
5ヶ月前 調査を継続しつつ、物件の契約や採用活動を進める。ある程度の目処が立ち、事業計画も形になってきた段階で開業時の集客に繋がる宣伝活動も始める。
4ヶ月前 物件の契約や採用活動、宣伝広報活動は継続しつつ、サロン運営に必要な機材・道具の準備を進める。
3ヶ月前 この段階で、内装・外装の設計やホームページ作成の業者を選定して依頼する。大幅な工事や0からホームページを作成するとなると、まとまった時間が必要。
2ヶ月前 サロンのハード・ソフト面の作成を進めつつ、スタッフ研修や広告のためのチラシ配りをスタート。時期的にはオープン間近なため、いつでもお客様の前に立てる準備を整える。
1ヶ月前 内装・外装が着工し、いよいよ開店準備も佳境。直前まで採用活動は行い、スタッフ研修で細かい指導を重ねる時期。宣伝広報活動も最後の追い込みをかける必要がある。

参考:エステサロンの開業 開業までのスケジュール | エステサロンの開業準備とは? | エステティックサロンの集客・経営・開業 フェース ビジネスキャンパス

エステサロンの開業に資格は必要ない

エステサロンの開業にあたって必要な資格はありません。極端にいえば、スキルのない素人の状態からでもエステサロンの開業に取り組むこと自体は可能ということになります。とはいえ、さまざまな競合店や同様のサービスを持つビジネスがある中で、自分のお店を選んでもらうためには、少なからず知識や技術が必要になります。

そのため、開業自体には資格が必要なくても、知識や経験を証明する手段として民間資格を取得しておくことも1つの手です。代表的なものには「認定エステティシャン」や「認定上級エステティシャン」などがあります。

また、エステティシャンとしてのハンド技術だけでなく、施術前のカウンセリング、施術中と後のコミュニケ―ション技術なども必要になります。

エステサロンなら保健所への申請も不要

エステサロンの運営は保健所への申請を必要としないケースがほとんどです。ただし、サービスの内容によっては保健所への申請が必要になる場合があります。

例えば、マッサージやまつげエクステなどは美容師免許を要する施術となります。また、これらの施術を行う場合は、開業前に保健所へ美容所開設届を提出する必要があります。

他にも、肩こりや腰痛改善などの治療効果をうたうマッサージには「あん摩マッサージ指圧師」の資格が必要であり、こちらも保健所に開設届を提出する必要があります。

参考:エステサロン開業に当たって「営業許可」「開業届」は必要?知っておきたい届け出の書き方 – エステサロンのお仕事

エステサロンのコンセプト作り

エステサロン開業の最初のステップとなるコンセプト作りは、次の5つのポイントを踏まえて決めましょう。

コンセプト決めのポイント
  • 企業理念と企業目標を明確にする
  • ターゲットを明確にする
  • 他店をリサーチする
  • 2つのベネフィット(利益)を明確にする
  • サロンの約束や行動指針を明確にする

エステサロンのコンセプトは、お店の考え方や方向性を決定づける重要な要素です。事前にコンセプトを明確にしておくことで、「うちのサロンは〇〇にこだわっています」「他の店では味わえないサービスを受けられます」といった独自性をお客様に対して訴求しやすくなります。

一方、コンセプトが曖昧なお店では他社との差別化を図りづらくなってしまいます。顧客にとっては「期待していた内容ではなかった」「来店前のイメージと違った」などといった悪印象を与えてしまうことにもなりかねません。どのような経営方針で、どのようなお客様にサービスを提供したいのか、開業後をイメージしながら丁寧にコンセプトを定めていきましょう。

エステサロンの経営にコンセプトが重要な理由や、コンセプトの具体的な作り方についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。

エステサロン経営はコンセプトが重要?理由から作り方まで解説!

事業計画書の作成

事業計画書を作成すると、自分の事業をどのように展開していくのか経営の方針が可視化されます。
それによって、物件にかける予算や内装工事費用、設備費用なども明確になり、必要な部分に対して正しく予算を振り分けられるようになるでしょう。

さらに、お店が対象とするターゲットもこの段階でより具体的にできていれば、開業後のマーケティング施策の立案にも繋がります。事業計画書は、融資を受ける際に判断材料としても必要になるため、正確な内容で作成するようにしましょう。

参考:エステの経営計画はどう立てる?押さえておきたい3つのポイントとは

物件探し

エステサロンの開業において「物件」は売上にも影響する要素です。物件探しについては、次の2つのポイントについて押さえておきましょう。

物件探しのポイント
  • ターゲットやコンセプトに適した立地を選ぶ
  • ターゲットやコンセプトに適した物件を探す

それぞれ詳しい内容について解説します。

ターゲットやコンセプトに適した立地を選ぶ

まずは、ターゲット層が多い地域の物件を探すのが基本です。お店でターゲットにしたい客層が多くいる地域の情報を集め、さらに立地や周辺環境が自社のコンセプトに適しているかも入念に確認しましょう。立地に関して確認すべきデータは次のとおりです。

  • 地域内の人口
  • 年齢層
  • 大型商業施設やターミナル駅の有無
  • 治安の良さ

また、ライバルの多さや状況といった近隣にあるお店のリサーチも同時に行っておくとよいでしょう。

ターゲットやコンセプトに適した物件を探す

ターゲットやコンセプトに適した物件をいくつかピックアップできたら、予算内に収まる物件を絞り込みましょう。マンションや居抜き物件の利用を検討するなど、コストを比較的抑えやすい方法を探すことも大切です。

ただし、賃貸のマンションだと契約を行う前に大家さんなどに確認が必要になります。場合によっては賃貸マンションのようにオフィスや店舗を借りられるsoho物件などを利用するのも良いでしょう。ただし中には用途によって店舗利用不可な場合もありますので、契約前によく確認しましょう。

また、アットホームな空間をコンセプトにしている場合などは、自宅の一部を店舗として利用するのも有効な手段の1つです。さらに、候補物件周辺の人の流れや商業・公共施設、交通機関などもあわせて確認しておくとターゲットの動きが分析でき、物件を決定する判断材料にできるでしょう。

資金調達

ターゲットやコンセプト、予算に適した物件が見つかったら、資金調達の段階に移ります。資金調達に必要な知識として次の3つが挙げられます。

資金調達に必要な知識
  • 必要となる開業資金
  • 日本政策金融公庫
  • 助成金や補助金の活用

開業資金は、自宅や賃貸マンション、テナントなどの形態によっても金額が変わります。また、融資を受ける際には金融機関だけでなく、政府系の金融公庫も利用が可能です。それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

必要となる開業資金の目安は場合によって異なる

事業計画の内容によって、開業資金(初期費用)の目安は大きく異なります。例として、エステサロンの形態別の開業資金目安は次の通りです。

  • 自宅:約70~110万円
  • 賃貸マンション:約150~200万円
  • テナント:約480~520万円

テナントを借りて開業する場合よりも、自宅で開業する場合のほうが場所代や通勤費用など金額は抑えやすい傾向にあります。ただし、金額はあくまで目安であり、業務用エステ機器などの購入金額が含まれていない点には注意が必要です。

大まかな費用の内訳としては、物件取得費、家賃、内装費、大型備品・家具、家電、消耗品、広告宣伝費などです。

参考:エステサロン開業に必要な資金は?ケース別相場と開業資金を抑える方法 – 【公式】業務用ハイフ・脱毛機パーフェクト比較サイト

日本政策金融公庫

開業資金として融資を利用する方法の1つに「日本政策金融公庫」があります。

日本政策金融公庫は政府が出資する金融機関であり、個人事業主や中小企業などを支援しています。使途に応じてさまざまな融資サービスを提供しています。

日本政策金融公庫で融資を受ける場合、融資額の1割以上の自己資金が求められ、ある程度の事前資金が必要です。ただし、新創業融資制度では担保と保証人が原則不要とされています。新創業融資制度に関する詳しい内容は、参考の公式ページを確認してみてください。

参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫

助成金や補助金が活用できないか確認してみよう

開業時に利用できる助成金や補助金を活用して資金を調達する方法もあります。エステサロンで利用しやすい補助金の例は次のとおりです。

  • キャリアアップ助成金:従業員の社内でのキャリアアップに対する助成金
  • 両立支援等助成金:従業員の育児や介護による休業制度の仕組み作りに対する助成金

ただし、助成金や補助金の利用には条件があります。また、常に募集されているとは限らない点にも注意しなければなりません。

そのほか、地方自治体が独自に行っている助成金もありますので、一度確認してみましょう。

(2022年6月末時点)

参考:キャリアアップ助成金

内装・外装の工事

資金調達が完了したら、必要に応じて内装や外装の工事を行います。

店のコンセプトに基づいた外観となるよう塗装を変更したり、看板を設置したりすることで、お客様が来店しやすい店舗へと近づけていきましょう。また、内装については店のコンセプトだけでなく、スタッフや利用客の導線も意識しなければなりません。

エステサロンの外観作りのポイントに関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

エステサロンの外観作りのポイントや注意点とは

設備や備品の準備

内装や外装の工事を進めながら、必要な設備や備品も準備しなければなりません。エステサロンの開業に必要な設備や備品は、ベッドなどの大きいものからフェイスタオルなどの細々したものまでさまざまです。オープン間近になって慌てることがないよう、それぞれの内容について確認していきましょう。

エステサロンに必要な設備

エステサロンの開業に必要な設備として、施術用ベッドや椅子、テーブルなどが挙げられます。また、他にも次の設備も必要に応じて用意しなければなりません。

  • 施術用ベッドやいす
  • エステ機器
  • タオルウォーマー/クーラー
  • 消毒に必要な衛生機器
  • テーブル
  • ソファー
  • ワゴン

エステ機器の導入は初期費用がかかるものの、施術時間の短縮や施術の幅を広げることに繋がります。そのため、他の大型備品とあわせて導入を検討してみてください。

エステサロンに必要な備品

大型備品だけでなく、サロン運営にはタオルやおしぼりといった細かい備品や消耗品も用意する必要があります。サービスの内容によっては次のような備品も必要です。

  • バスタオル
  • フェイスタオル
  • シーツ
  • 替えの下着、ガウン
  • スリッパ
  • 掃除用備品
  • 化粧室の備品

特に、化粧室の備品が充実しているほどお客様の満足度向上に繋がることが期待できます。高頻度で使用する消耗品は在庫を切らさないよう、しっかりと管理しましょう。

各種オープン準備

設備や備品の準備が完了したら、オープン準備もいよいよ大詰めです。オープン直前に必要な準備として、以下の2つがあります。

オープン直前に必要な準備
  • 必要な届け出・手続き
  • 集客などの計画と実施

開業準備が整ったとしても、必要な手続きを行わなければお店はオープンできません。また、集客がうまくできないと開業後の経営に大きな影響を与えます。それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

必要な届け出・手続き

エステサロンを開業するためには、国税庁に対して事業の開始を知らせるための「開業届」を提出する必要があります。また、前述の通りマッサージや美容師免許が必要な施術を行う場合は、別途保健所への美容所開設届も必要です。

また、次の書類をそれぞれ提出しなければなりません。

【消防署への届け出】

  • 防火対象物使用開始届出書の提出
  • 防火対象物工事等計画届出書の提出(内装工事)

【自治体への届け出】

  • 建築確認申請(内装工事)

手続きを忘れてしまうと立ち入り調査などで指摘を受ける可能性もあります。いずれも確実に届け出るようにしてください。

参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
参考:サロン開業の届けと手続き【最新版】 | 美容室・サロン集客の情報満載 リピーター集客ラボ

集客などの計画と実施

多くのお客様にエステサロンを利用していただくためにも、開店前や開店直後の集客施策は計画的に実施しましょう。

エステサロンのオープンを知らせる方法は、看板や旗、折込チラシ、ネット広告などさまざまです。また、一度ご来店いただいたお客様にファンになってもらうためのサービスやキャンペーンの考案も必要です。

オープン前からできる事には取り組んだり事前に計画を練っておいたりと、開業の状況に合わせて適した集客方法を考えましょう。

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顧客の獲得や店舗の認知のために重要な施策の1つとして、マーケティング活動が挙げられます。SNSでの集客やホームページの作成、WEB広告を行ったりとマーケティング活動にはさまざまな種類があります。

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まとめ

エステサロンの開業は、コンセプト設定や事業計画書の作成、物件探し、資金調達など1つ1つ順を追って準備をすることが大切です。

自分が行いたいサービスによって必要な資格や手続き、備品、条件に適した物件なども変わるため、まずはどのような方針でどのようなお客様にサービスを提供したいのか、自分がエステサロンでやりたいことと、そのために行うべき準備を明らかにしていきましょう。

また、開業後の店舗運営においては、看板の設置やチラシの配布、ホームページの作成など、集客・認知のために施策を行うことも大切です。特にホームページの制作などは完成までに時間を要する事も考えられるため、開業前にできることはできるだけスケジュールに組み込んで、スムーズな開業と運営を目指しましょう。

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