人気が出れば、年収1000万円以上を稼ぐことも夢ではないと言われている飲食業界。利益率の高い経営を実現すれば、このような高年収を達成することも不可能ではありません。

では、実際にどのくらいの利益率を出すことができればいわゆる”儲かっている”状態と言えるのでしょうか。この記事では、飲食店経営者が目指すべき利益率や、利益が出ないときに考えられる要因についても解説します。

飲食店経営は儲かる?そもそも利益率とは

飲食店が目指すべき利益率について解説する前に、そもそもの利益とは何か、どうやって算出するのかをおさらいしましょう。飲食店経営者がとくに注視すべき利益には「粗利益」と「営業利益」の2つがあります。

名称 計算方法
粗利益 粗利益=売上高-原価
粗利益率 粗利益率=粗利÷売上高×100
営業利益 営業利益=粗利益-販売管理費
営業利益率 営業利益÷売上高×100

粗利益は、売上高から、原価を差し引いたものです。飲食店の場合は、売上から原材料費を引いて算出します。売上高に対して粗利益が占める割合を「粗利益率」と呼びます。

たとえば、販売価格が1,000円の商品に対して、原価700円を差し引いた粗利が300円の場合、粗利益率は以下のように算出されます。

  • 300 ÷ 1,000 × 100 = 30%

よって、この商品の場合は粗利益率が30%となり、1つ売れるごとに売上高の3割が粗利になります。

また、飲食店が営業するためには、原材料費以外にも人件費や家賃、水光熱費などさまざまなコストが発生します。これらのコストを販売管理費と呼びます。粗利益から販売管理費を差し引いて算出したのが、営業利益です。営業利益が売上高に対して占める割合を「営業利益率」と呼びます。

たとえば、1ヵ月の売上高が400万円として、食材費などの原価や家賃などのコストを引いた営業利益は40万円だった場合、以下の計算の通りで営業利益率は10%になります。

  • 40 ÷ 400 × 100 = 10%

売上に対して原材料費が高すぎないかどうかを見極めるには、粗利益率が低くなっていないかを確認しましょう。また人件費や、光熱費、家賃などが経営を圧迫している場合は、営業利益率が低くなっている可能性があります。

飲食業界の平均の利益率とは

飲食業界では、粗利益率が60~70%、営業利益は8.6%が平均と言われています。これよりも高い数値を出せていれば、経営は順調と判断できるでしょう。 なお、飲食業界は基本的に材料の仕入れが必要なため、予約が急にキャンセルとなった場合には、一時的に営業利益率が0%になることもあります。これから飲食店経営を始める人はこのような特徴があることを理解しておきましょう。

参考:3.売上高営業利益率|商工業実態基本調査|経済産業省
参考:飲食店の粗利益率はどのように計算すればいいのでしょうか?
参考:飲食店経営講座:月間1,000万円売ったらいくらくらいの利益が残るのか? | 花王プロフェッショナル 飲食店経営と衛生管理を応援する【ご贔屓ナビ】

利益が出ない場合に考えられる理由とは

人通りの多いエリアに出店し、メニュー開発にも力を入れているにも関わらず、なかなか利益が上がらない場合、要因はどこにあるのでしょうか。以下で、考えられる理由を解説していきます。

お客様に価値を感じてもらえていない

いくら料理の味を磨いたとしても、ターゲットが食べたいと思える料理・サービスとマッチしていなければ、利益を伸ばすことは難しいでしょう。 例えば、お昼時のサラリーマンをターゲットとする場合、提供時間がなるべく短く、かつボリュームがある料理が好まれると推測されます。
料理の味に問題がなくても、調理に時間がかかったり、食べるのに手間がかかったりするような店では、客足を伸ばすのは難しいかもしれません。 すでに開業をしている人は、まずは今の店のエリア周辺にどんな人が多いのか、リサーチをしてみるとよいでしょう。

安売り競争に参加してしまう

集客のために、割引だけを頻繁に行うと負のループに陥ってしまう可能性があります。割引をすることが悪いわけではありません。しかし、来店した顧客を味やサービスでも満足させなければ、割引をやめたとたんに来店しなくなる可能性が高くなります。利益率の観点からも、あくまで割引は一時的な施策として捉えておきましょう。

コストをかけすぎている

売上は上げられているのに、利益が出ていない場合はコストを見直しましょう。 食材にお金をかけすぎていないか、食品のロスが多くないか、人件費が膨らみすぎていないかなど、知らぬ間に無駄なコストが発生してないかチェックしましょう。食品のロスが多い場合や水光熱費が高い場合は、現場のスタッフの意識付けも合わせて実施する必要があるでしょう。

経費の内訳について確認してみよう

先にも述べた通り、飲食店でかかる経費にはさまざまなものがあります。原材料費はもちろん、スタッフの人件費、店舗の維持費など項目は多々あるため、それが利益を圧迫しているのか、内訳を見ることで確認しましょう。

なお、経費は「固定費」と「変動費」に分類されます。家賃など毎月どうしてもかかる費用は固定費で、食材の費用や人件費、水道光熱費など毎月の売上や運営方法によって費用が上下に動くものが変動費となります。変動費それぞれの費用の変動が、利益にどのように影響しているのかも確認するようにしましょう。

儲かる飲食店をつくるために知っておくべきポイント

儲かる飲食店をつくるために知っておくべきポイント
  • 利益がでるメカニズムを理解する
  • 利益の方程式と店のコンセプトをリンクさせる

飲食店の経営をするのであれば、「損益分岐点」を計算することをおすすめします。
損益分岐点とは、この売上額を下回ると赤字になる、というラインのことです。 飲食店は、家賃や人件費など、売上がないときも発生するコスト(固定費)が発生します。固定費分の売上が上げられないということは、赤字に転落することを意味します。 開業前には損益分岐点を下げ、それに満たないと予想できた場合は、固定費(店舗の賃料など)を下げるために他のエリアを検討してみてください。

さらに提供する商品の原価率は30%にするのが一般的と言われていますが、一律で30%にする必要はありません。客寄せになる看板メニューは、多少原価率を高くしても価格は抑えめに設定するとよいでしょう。
その代わりに、原価率の低いメニューとセット販売を行うなどで、会計全体の原価率を30%程度に収められるようにしましょう。

利益がでるメカニズムを理解する

儲かる飲食店になるための、営業利益の方程式をご紹介します。

営業利益の方程式
営業利益 = 粗利益-販売管理費
= 売上高-原価-販売管理費
= 来客数×客単価-原価-販売管理費

※客単価=一人の顧客が一度の購入時に平均して使う金額

この方程式からは、客単価を上げたり、原価を下げたりすれば利益が増えることがわかります。ただし、単純に原価率を下げれば儲かるわけではありません。仕入れる食材の品質を落とせば、当然顧客が離れる可能性があります。品質を落とさずに原価率を下げるには、複数の仕入れ先を比較して安いほうから仕入れる、メニューを絞ってフードロスを減らす、などの方法もあります。

利益の方程式と店のコンセプトをリンクさせる

利益の方程式を理解したら、利益を出すのに必要な来客数と客単価を、現状の店舗で実現することは可能かどうかを考えてみましょう。 「カップルが落ち着いた時間をゆっくり過ごせる店」をコンセプトにするのであれば、滞在時間が長くなる分、来客数は少なくなります。その分、コース料理などを提供し、客単価を上げる必要があるでしょう。

逆に「時間のないビジネスマンが短時間で空腹を満たせる店」というコンセプトの場合は、単価設定を低くしたり、席の間隔を狭くし、一度に多くの人が来店できるようにしたりすべきでしょう。 飲食店の経営者は、コンセプトを実現しつつ、利益も上げられる店をどうすれば作れるのか、常に考えていく必要があります。

利益がでていないお店からの脱出例

もし現状利益が出せていない場合は、方程式のどの部分を改善するかを考える必要があります。
あるイタリアンのお店を例にあげると、その店は支出が200万円もあることに対し、売上が180~210万という状態でした。赤字を回避するために、新規顧客をとることばかりに気を取られ利益率が低下していることに気づけなかったのでしょう。
そこで、売上を構成する要素を分解し、原価の引き下げと客単価の上昇を目指して施策を打ちました。メニュー構成を見直し、その店以外でも食べられるイタリアンの定番メニューについては扱うのをやめたのです。
その結果、必要のないメニューの材料のロスがなくなり、仕入れる食材の質が上がり、来店した顧客にこだわりをアピールすることができたのです。

利益を上げたいのであれば知っておきたいポイント

儲からない原因や、損益分岐点の計算、利益の方式について学んできました。次からは、飲食店経営で売上を着実に上げていくために、知っておくとためになるポイントをご紹介します。

集客のための費用を削りすぎない

固定費を抑えて営業利益を上げる、という方法はもちろん有効ですが、落とし穴もあります。客数が少ないのにも関わらず、経費を削減しようと集客をやめてしまうと、来客数がさらに減るという悪循環に陥る可能性があります。 このような場合はまずは売上の改善を目指し、広告で宣伝をしたほうがよいでしょう。新規の顧客が増え、リピーターが定着してきたら広告を止めればよいのです。

価格設定を上げれば儲かるとは限らない

メニューの価格を上げれば客単価は上がりますが、最終的に利益を生むかどうかは分かりません。 少し前、「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かる?」という本が話題になりました。結果的には庶民派のお店のほうが儲かるという内容ですが、なぜ庶民派の店のほうが儲かるのでしょうか。

その理由は、固定費を抑えられることと、損益分岐点を超えやすいので高級店よりも損失が生まれにくいことがあげられます。 一見高級フレンチのほうが利益が上がりそうですが、餃子屋の方が店が小さいために家賃が安いことが多く、固定費を抑えやすくなります。固定費を抑えられると、損益分岐点を超えるハードルが低くなるので高級店よりも損失が生まれにくくなるのです。

ただし損益分岐点を超えた後の利益の上がり幅は、高級店よりも小さくなります。高級店は固定費が高く損益分岐点を超えるまでに時間がかかるので損失が生まれやすいですが、客単価が高いので、損益分岐点を超えた後の利益の上がり幅は高くなります。

参考:餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか? 読むだけで「会計センス」が身につく本! (PHP文庫) | 林 總 |本 | 通販 | Amazon

成功者の考え方を学ぶ機会を持つ

飲食店の経営者であれば、成功している経営者の考え方を学ぶ必要があります。普段の営業だけでも忙しいのですから、店舗作りやメニュー開発、集客の方法などもゼロから考えるのは効率がよいとは言えません。

実際に成功している店にお客さんとして出向く、本を読む、YouTubeなどで解説された動画を見る、講演会に参加するなど、学ぶ方法はたくさんあります。 まずは知識をしっかりと学ぶこと、そして知識を取り入れたら、実践に移すように心がけましょう。自分で本を買って勉強するのが苦手な人は、経営者同士の友人をつくり、アドバイスをもらうのもよいかもしれません。

ホームページは必須

スマートフォンが普及した現代では、飲食店を利用する前に、店の雰囲気をチェックする人も多いです。店名で検索したときにどこにも情報が出てこないのであれば、確認ができないため他店にユーザーが流れてしまう可能性があります。 ホームページがあるだけで信頼度が上昇し、行こうか迷っている顧客を呼び込める効果が期待できます。また、メルマガやSNSと組み合わせて集客を行うこともできるので、ホームページがないという方はぜひ検討しましょう。

まとめ

ここまで、飲食店の目指すべき利益率や、儲けを出すためのポイントについて解説しました。せっかく理想の店がオープンできても、利益を上げられなければ経営を続けることはできません。今回紹介した知識をもとに、自分の店でどのように利益を伸ばすか考えてみましょう。

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