飲食店の開業・経営において大切なのは、料理や飲み物だけではありません。お客様が寛ぎやすく、また入りたいと思えるような内装にすることも大切です。

今回は、飲食店にとって内装デザインが大事な理由から、飲食店ごとに合った内装・デザイン・レイアウトするためのポイントについて解説します。

飲食店で内装デザインが大切な理由とは?

まずは、飲食店とって内装デザインがなぜ重要なのかを考えてみましょう。お客様にとって内装のデザインは、雰囲気や清潔感などお店の印象を決める基準のひとつです。なかには、味や価格以外にも、空間のよさを重視してお店を選ぶ人もいます。

また、SNSを使う人にとっては「自身のアカウントにおしゃれな投稿をしたい」といった理由から、WEBやSNSでの検索で出てくる写真によってそのお店に行きたいと考える可能性もあります。内装が顧客にとってSNSへの投稿や誰かに教えたくなるものであれば、一度訪れた顧客からの拡散・宣伝効果も期待できるでしょう。

その他にも、「寛ぎたい」「大切な人を連れて行きたい」「作業したい」といった、顧客が飲食店に求めているニーズを把握し、店舗が目指したい方向性へ突き詰めた内装にすれば、他店との差別化をはかることにも繋がります。

内装を考える前に押さえるべきポイント

いきなりデザインの細かい部分を考えていくのではなく、内装を考える前に考えておくべきポイントを押さえておきましょう。以下では、見落としやすい内装デザインにまつわる情報をまとめました。

内装を考える前に押さえるべきポイント
  • 店舗のコンセプトを考える
  • 動線を考慮したレイアウトにする

店舗のコンセプトを考える

飲食店の開業において店舗のコンセプトを決めることは重要ですが、コンセプトは内装デザインを決めるうえでも大きなポイントとなります。店舗の方向性が明確に決まっていれば、サービスやメニュー、内装・外装のデザインにも統一感をもたせやすいです。順序を間違えてしまわないよう、先に店舗のコンセプトをしっかりと定めてから内装デザインについて考えましょう。

コンセプトに悩んだ際は、どこで、何を、どんなお客様に提供するのかなど、細かく理想の店舗デザインを紙に箇条書きでまとめるのがおすすめです。「仕事終わりに行きたい賑やかな居酒屋」「大切な人と2人きりで過ごせるバー」など、できる限り細かくイメージすると、内装の雰囲気も固まりやすいです。

コンセプトが定まっていけば、店内を落ち着いた雰囲気にしたいのか賑やかにしたいのかなど、内装デザインに繋がる具体的なアイデアを生み出せるでしょう。

動線を考慮したレイアウトにする

飲食店の内装は、見た目だけに注力するのではなく、営業中の動線を考えたレイアウトにすることも大事です。

例えば、先にレジの位置を決めてしまえば、他のレイアウトや動線を考えやすくなります。入口付近や、従業員がレジに入る動線も、狭すぎず人が出入りしやすいように意識しましょう。小さいスペースでも飲み物をスムーズに提供できる動線を確保をする必要もあります。また、座席や待機列、レジなどでお客様同士が適切な距離を保てるスペースを作るといった、衛生面も気を配りましょう。

厨房は「料理の作りやすさ」「片付けのしやすさ」「提供のしやすさ」を考えた配置にすることが大切です。見た目だけを優先して業務に支障が出ないように気をつけましょう。

内装工事にかかる費用は?

実際に工事を行う直前で、理想と現実の差が生まれないように、内装工事にはどんな費用がかかるのかも押さえておきましょう。

条件によって変わる各費用の注意点

内装工事の費用は、条件によって大きく変わります。予算内に収められるよう、何にどのくらいの費用がかかるかを予め調べておきましょう。坪数や工事の内容によって坪単価も変動するため、無駄がないよう坪単価の目安もチェックするのがおすすめです。

内装工事は、特に新装か改装かによってかかる費用が異なります。新装の場合は、選ぶ物件がスケルトンか居抜き物件かによっても費用の内訳に差がでることも留意しましょう。元々の設備があるような改装工事なら、比較的費用も抑えやすいです。

また、内装工事費はローンが組めないケースもあります。複数の会社で見積もりをして比較検討を徹底しましょう。

主にかかる費用の内訳

内装工事には、主に以下のような費用がかかります。

  • デザイン設計
  • 設計管理
  • 内装工事
  • 厨房工事

デザイン設計は、デザイン設計専門の業者に依頼するケースと、内装工事の業者と一緒にするケースがあります。業者を変える場合は、設計と内容が一致しているかをこまめに確認するのがおすすめです。また、厨房の工事は、業態によって設備や工事費用にも幅があるので注意しましょう。

飲食店の厨房設備を選ぶポイントや必要な備品、設備を整えるうえで知っておくべき知識については、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://www.i-nobori.com/media/4578

自店舗にあった内装デザインにするコツ

準備が整ったあとは、実際に内装デザインを考えていきましょう。続いては、自店舗にあった内装デザインにするコツを紹介します。

自店舗にあった内装デザインにするコツ
  • 店舗の雰囲気にあったインテリアを選ぶ
  • 照明の種類や明るさを考える
  • 全体の配色を意識する
  • イメージを形にしてくれる業者を選ぶ

店舗の雰囲気にあったインテリアを選ぶ

飲食店の中に置くインテリアは、お客さまに与える印象や店舗の雰囲気を左右するため、定めたコンセプトに合うインテリアを選定しましょう。また、先述した店舗運営上の動線やスペースなどを踏まえた適切な位置に配置することも重要です。インテリアは空間に映えるかだけではなく、お店の料理とマッチしているかも確認すると、より統一感のあるお店作りができます。

椅子や机などの家具は、安価なものから高額なものまでさまざまあります。内装にこだわりたいからといって、高級なインテリアをすぐ購入するのではなく、理想の素材やデザインを思い描いた後に各店舗やインターネットで比較検討して、費用を抑える工夫をしてみましょう。同じようなデザインのものでも値段が大きく異なることがあります。

ただし、コストを抑えることを意識しすぎて質の悪いインテリアを揃えてしまわないように注意しましょう。特にお客様が利用する机やいすなどは壊れやすくないか、怪我や衣類を傷付ける要因がないかなどを考えることも大切です。

照明の種類や明るさを考える

空間を明るくするための照明も、内装デザインの大切な要素です。天井・壁・床などの設置場所や、色、光量によって店舗の雰囲気ががらりと変わります。クラシカルな内装に合わせたおしゃれな照明や、料理に相応しい華やかな装飾の照明など、お店のコンセプトに適したものを選びましょう。

また、光の量の調節、向きや角度、提供する料理を美味しそうにみせる照明の色を使用するなどの工夫も大切です。温かみのあるオレンジ色に近い照明の色は、ゆったりとした空間の演出におすすめです。また、自然の光に近い色は、料理を美味しく見せます。

全体の配色を意識する

内装は、一部だけでなく全体の配色を意識しながらデザインするのがおすすめです。多くの色を使いすぎてしまうと、視界の情報量が多くお客様を困惑させてしまう可能性があります。色使いも、お客様にとって居心地の良い印象を与える色味を選びましょう。

使用する色は多くても3色程度に留め、ベースの色を1つ決めて統一感をもたせましょう。ある程度まとまりのあるバランスを考えて配色したあとは、全体の約5%程度でアクセントカラーを入れるとおしゃれな空間に近づきます。

イメージを形にしてくれる業者を選ぶ

内装業者を使って工事を行う場合は、予算のなかで限りなく自身のイメージを形にしてくれるような業者を選びましょう。内装の設計やデザインを担当する空間デザイナーにも得意・不得意の分野があります。実際に手掛けた内装をチェックしたりイメージを相談したりなどして、理想の形を実現できるかしっかり見極めることが重要です。

また、「十分に検討や比較をせずに急いで決めた」「格安をうたっていたので依頼した」というような安易な理由で発注に至ると、店舗内装が失敗に終わるケースもあります。発注後の予想以上の出費や連絡不足によるスケジュールの遅れなどがないよう、親身になってくれる業者を選びましょう。

おしゃれな内装デザインを学ぶ方法

ある程度業者に頼むといっても、自身でおしゃれな内装デザインを学んでおくに越したことはありません。以下では、内装デザインの基礎などを学ぶヒントをまとめました。

他店舗の内装事例を参考にする

飲食店の場合、同じようなコンセプトを持っていたり、業態が似ていたりする他店舗の内装事例を参考にすると、デザインのヒントにつながりやすいです。インテリアやレイアウトなどのヒントを得られるかもしれません。

お店の規模や雰囲気などにも注目しながら、理想に近い内装事例をチェックしてみましょう。また、他店舗を検索するのはもちろん、デザイン会社とのマッチングサービスサイトを利用すれば、業種・業態、地域、広さなどの検索をかけて内装事例を見ることもできます。

また、実際にその店舗を利用してみれば、スタッフがどのように動けているかや来店客がどのような反応をしているかも確認することができるため、いくつか目星をつけて利用してみるのもよいでしょう。

内装デザインの参考本を読む

なかなかイメージが固まらない、デザインの基本的な知識や専門的な内容が知りたいという方には、本で店舗デザインを学ぶのもおすすめです。本は実際に店舗デザインを数多く手掛けている著名デザイナーのノウハウが詰まっているので、デザイン設計に関してより深く理解できます。

また、飲食業界向けの参考本のなかでも、居酒屋やカフェなど、業態ごとに特化した本もあるので自店舗の内装に活かせそうな本を探してみてください。

まとめ

飲食店の内装デザインは、お店のコンセプトを意識することで統一感をもたせやすくなります。壁やレイアウトなどは一度決めてしまうと修正しにくいので、慎重に理想を形にして行きましょう。

店内の導線やコストなど、見た目以外の要素についてもしっかり吟味し、店舗が目指す方向性とあわせて適したインテリアや配色、配置を探っていきましょう。

お客様の心地よい空間作りができれば、飲食店の経営においても良い影響につながります。今回ご紹介した内容を参考に、よりよい内装デザインの設計を目指しましょう。

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