マーケティング戦略において重要な概念のひとつに「ブランド認知」というものがあります。ブランドというと格式高く高品質な製品などを販売する「ハイブランド」をイメージする人もいるかもしれませんが、商品・サービスの価格や品質に関わらず、他社製品と差別化するためにある名称やデザインなどを含めたものすべてがブランドです。

ブランド認知は顧客獲得に欠かせない要素です。今回は、ブランド認知の重要性や認知度向上の方法について紹介します。

ブランド認知とは?

あるブランドがどれだけ多く知られているかどうかを指すのがブランド認知ですが、そのブランドについてどのようなイメージを持たれているかどうかという意味も持っています。

また、認知度とはブランド名に対する認知だけでなく、そのブランドが提供する商品・サービスの特徴など、詳細についての理解の度合いも含まれています。ブランド認知の度合いは、競合他社との差別化を図るためにも重要な要素です。

ブランド認知が重要なのはなぜ?

ブランド認知の向上が重要とされるのにはどのような理由があるのでしょうか。ここではブランド認知の重要性の理由を主に3つ紹介します。

検討時に想起されやすく、購入につながりやすい

消費者が商品・サービスの購入を検討する際、どのブランドがよいかということも判断基準のひとつになります。そのため、ブランド認知度が高ければ、比較検討の候補として想起されやすく、反対にブランド認知度が低ければ候補には上がらず、購入にはつながりにくくなります。

また、先の項目でブランド認知度には商品・サービスの特徴など詳細についての理解度も含まれると説明したように、ブランド認知度が高いことにより、消費者が購入後に「想像と異なっていた」というようなアンマッチを防ぐことにもつながります。

顧客をファンにでき、価格競争から逃れやすくなる

顧客がそのブランドに対して、ブランド名だけではなく商品・サービスの特徴やよさへの理解も深ければ、購入を検討する際にも第一候補として上がりやすくなり、購入へつながる期待も持てます。

さらに購入後、その商品・サービスへの満足度が高いほど、そのブランドのリピーターとして定着する可能性も見込めるため、結果として競合との価格競争から逃れやすくなることにもつながるでしょう。

優秀な人材を採用できる可能性が高まる

ブランド認知度の度合いは、消費者の購買意欲につながるだけではなく、仕事を探している求職者が自社に対して興味関心を抱くことにも大きな影響があります。

求職者がすでにブランド認知の度合いが高く、自社への理解がある状態であれば、入社後の相互の認識のズレが起きにくくなります。また、社会的なブランド認知度が高いことで応募者も多くなり、その結果優秀な人材を採用できる可能性も期待できます。

ブランド認知度を高める方法とプロセス

ここでは、ブランド認知度を高めるための方法について、順を追って説明していきます。

ブランド認知度を高める方法とプロセス
  1. 現状の立ち位置を把握する
  2. ブランドのコンセプトを明確にする
  3. 効果的な方法で情報発信をする
  4. 効果測定と改善を行う

1.現状の立ち位置を把握する

まずは、自社の現状の立ち位置の把握が重要です。業界や社会において、自社がどのような立ち位置にあり、自社ブランドの商品・サービスが消費者からどのような評価を得られているかということを確認してみましょう。現状把握は、消費者と自社間でどのような認識の乖離があるかの確認になるため、リターゲティングや競合との差別化の再構築といった戦略の整理にもつながります。

2.ブランドのコンセプトを明確にする

上記で説明したような消費者と自社間の乖離には、ブランドコンセプトが曖昧であることも理由として考えられます。ブランドコンセプトを明確にし、自社の商品・サービスにどのような価値があり、消費者がどのようなメリットを得られるかということも具体化してみましょう。

消費者と自社との間だけではなく、自社内での共有化を図ることでマーケティング戦略のブレも防ぐことができます。

3.効果的な方法で情報発信をする

商品・サービスの情報発信に使う媒体は、紙媒体、WEB媒体などさまざまありますが、媒体ごとに年齢や性別などユーザー層が大きく異なります。そのため、自社の商品・サービスのターゲット層と合致した媒体を選択して情報発信を行うことが重要です。

また、発信したい情報の鮮度にあわせて伝達のスピード感のあるSNSを活用したり、ブランド認知度が低いターゲットに向けてブランドストーリーを展開したコンテンツを発信したりするなど、施策ごとに効果的な方法を選択することもポイントとなるでしょう。

4.効果測定と改善を行う

消費者と自社との認知の剥離を最小限に抑えるためには、定期的な効果測定が役立ちます。効果測定とは、WEBサイトのクリック率や訪問率などで測る方法もありますが、消費者に対してブランド認知度や理解度、購買意欲などを調査したい場合には、アンケート調査による測定がより直接的な回答を見込めます。アンケート調査により、消費者の特性やニーズを確認することができたら、問題点や剥離についての現状を把握し、改善を行いましょう。

このように現状把握を行い、コンセプトを明確にし、情報発信と効果測定でさらに改善を図るという流れは、一度だけでは確かな効果は見えにくい場合もあります。何度も繰り返し、地道に改善を目指していくことでより高いブランド認知につながるでしょう。

ブランドの認知向上や価値を高めるための「ブランド戦略」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

ブランド戦略の立て方を知ろう|成功事例も合わせて紹介

ブランド認知度調査とは

自社のブランドについて、消費者や社会の間でどのくらい知られているかを測る方法として、ブランド認知度調査があります。これまでの項目でたびたび触れている消費者と自社との乖離を最小限にするためにも、マーケティング戦略のひとつにぜひ取り入れたい手法です。最後にブランド認知度調査の詳しい実施方法を紹介します。

ブランドイメージ調査との違い

ブランド認知度調査と似たような言葉として「ブランドイメージ調査」というものがあります。ブランド認知度調査とは、自社のブランドがどの程度認知されているかを調べるのに対し、ブランドイメージ調査とは、消費者が自社のブランドに対してどのようなイメージをもっているかを調べるものです。

そもそも消費者のブランド認知度が低かったり、認知されていなかったりする状態であれば、顧客がブランドに対して持っているイメージも薄く回答が得られない可能性があるため、最初に測定すべきはブランド認知度調査であることがわかります。ブランド認知度調査を行ったうえでブランドイメージ調査を行うことで、マーケティング戦略に活用しやすいより具体的な結果を得られるでしょう。

実施方法

ブランド認知度調査の実施方法として主に、「WEB調査」「郵送調査」「街頭調査」の3種類があります。それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、自社にあった調査方法を実施してみましょう。

WEB調査

より精度の高い調査結果を得るためには、より多くのアンケート回答を得る必要があります。そのため、比較的短時間で安価に実施しやすいWEB調査はブランド認知度調査として多く見受けられます。あえて対象を絞らずに社会全体的な認知度を調査したいという場合でも、偏りなく調査結果を得られやすいというのが特徴です。一方、インターネット利用に不慣れなユーザー層などを対象としたい場合には、目標とする回答数を得られない可能性もあります。

郵送調査

郵送調査とは、あらかじめ設定したアンケート対象者に対して調査票を郵送し、その回答を返送してもらうという方法です。郵送調査の場合は、WEB調査では結果を得られにくい層のユーザーに対しても回答を得られやすいというメリットがあります。一方で、アンケート対象者全員が回答を返送するとは限らず、想定していた回答数に満たないことも考えられます。特に、前項の様にインターネット利用に慣れているユーザーにとっては、郵送調査のほうが煩わしさを感じてしまう可能性もあります。

また、郵送費や調査票の制作費などのコストがWEB調査よりもかかってしまうこともデメリットのひとつです。

街頭調査

街頭で声をかけてアンケートに協力してもらう街頭調査は、調査したい地域を限定したい場合や、調査対象を学生や会社員といった属性によってある程度特定して行いたい場合に適した方法です。しかし、街頭で唐突に声をかけられることを苦手とする人もいるなど、アンケートに協力してもらえるか否かは調査対象によって偏りもみられます。そのため、社会全体的な認知度を測りたいという調査にはやや不向きな方法ともいえます。

まとめ

今回は、ブランド認知が重要とされる理由やブランド認知を把握する方法について紹介しました。ブランドは認知度が高いほど、消費者の購入や利用の可能性を高め、齟齬が起きにくくなります。他にも優秀な人材確保につながるなど、さまざまな点においてメリットがあります。

ブランド認知度を高めるためには、まずは自社の現状や評価を把握し、適切な媒体での情報発信と効果測定による改善、またブランド認知度調査で常に現状の確認をあわせて行うことで、さらに高いブランド認知を得られるでしょう。

ブランド認知度を高める手法をマーケティング戦略に取り入れて、自社の商品・サービスのさらなる顧客獲得を目指してみてはいかがでしょうか。

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