企業が提供する商品やサービスについて消費者に認知してもらい、実際に購入に結びつけるためには、適切なマーケティングをおこなう必要があります。しかし、マーケティングにも幅広い観点があることから、「どのようにマーケティング戦略を練ればよいかわからない」と悩む人は多いでしょう。

マーケティング戦略の概要を理解したうえで企業に適した施策を考えられれば、計画的に売上を伸ばせるようになります。そこで今回は、マーケティング戦略の概要を説明するとともに、マーケティング戦略を考える手順や立案を行う前にあわせて使用したいフレームワークなどについて詳しく説明します。

そもそもマーケティング戦略とは?

売上につながるマーケティングを考えるためには、まずマーケティング戦略がどのようなものであるかを知っておかなければなりません。

また、マーケティング戦略と似た言葉に「経営戦略」がありますが、これらの定義の違いを知っておくことも、一貫性のあるマーケティングをおこなうためには重要です。

以下では、マーケティング戦略の概要について詳しく説明します。

市場のニーズを汲み取ったアプローチを考えること

そもそもマーケティング戦略とは、「市場のニーズを汲み取ったアプローチを考えること」をいいます。言い換えると「どの顧客層に」「どのような価値を」「どのような手法で提供するか」を決めることを指します。

マーケティング戦略に沿って事業を展開することで、消費者が「こういうものが欲しかった」と思うような商品やサービスを提供できるようになります。中長期的には企業のファンを増やしたり、継続的に商品やサービスを利用してくれるリピーターを獲得することもできます。

限られた人員や予算の中で一定の成果を出すためにも、ビジネスにおいてマーケティング戦略は必要不可欠といえるでしょう。

マーケティング戦略が重要視される背景とは?

従来は、テレビCMやラジオCM、新聞広告や雑誌広告といった「マス広告」で大衆向けに広告宣伝することで、認知促進や販売促進をおこなうのが主流でした。しかし、近年インターネットやSNSが急速に普及したことによって、販売戦略のあり方が大きく変わりつつあります。企業と消費者がダイレクトにつながれる機会が増え、悩みを抱える個人に対して企業が直接アプローチすることが可能になっています。

また、消費者の抱える悩みやニーズが多様化したことにより、画一的なメッセージでは消費者の心を動かすことが難しくなっていることも、マーケティングが重要視される背景の1つです。

消費者一人ひとりに合わせたメッセージを届けるためには、消費者についての様々なデータを分析する必要があります。たとえば、年齢や性別、職業や趣味のようなデータが挙げられます。膨大なデータを的確に管理・分析できるツールも普及していることから、これらをうまく活用できるかどうかも、企業の業績アップに深く関わってきます。

このような背景を理解しておくと、今後企業がマーケティング戦略に力を入れる重要性を考えやすくなるでしょう。

マーケティング戦略と経営戦略の違い

マーケティング戦略と似た言葉に「経営戦略」があります。

マーケティング戦略が、「市場のニーズを汲み取ったアプローチを考えること」であるのに対して、経営戦略は「企業が将来的に成長を続けられるよう、ヒト・モノ・カネの経営資源の配分を最適化させること」をいいます。

また、マーケティング戦略では、市場分析の結果を「ターゲットの選定や販売促進」に役立てるのに対して、経営戦略では「市場への新規参入や事業撤退のタイミングを考える」ことに役立てるという違いもあります。

どちらも企業を安定的に成長させるために重要な戦略ですが、これらの違いを理解しておくことも大切です。

効果的なマーケティング戦略を立案する手順とポイントとは?

効果的なマーケティング戦略を立案するポイントとして、次の5つが挙げられます。

効果的なマーケティング戦略を立案する5つのポイント
  • まずは市場や社内の状況を分析する
  • ターゲットを明確にしておく
  • 消費者に与えられる価値を考える
  • 他社との差別化を図る
  • キャッチコピーを考えておく

これらのポイントを意識してマーケティング戦略を立案すれば、商品やサービスの魅力をうまく消費者に伝え、購買につなげられるようになるでしょう。

以下では、効果的なマーケティング戦略を立案するポイントについて詳しく説明します。

まずは市場や社内の状況を分析する

マーケティング戦略を考える際は、まず市場や社内の状況を分析するところから始めます。

市場において、どのような属性の消費者がいるのか、消費者がそれぞれどのようなニーズを持っており、競合がどのような商品やサービスを提供しているのかといった状況を分析します。また、社内の状況を分析する際は、企業が持つ強みや弱み、過去のマーケティング実績や顧客数、マーケティングに活用できる社内リソースといった情報を網羅的に把握します。

集めるデータが正確であるほど精度の高い分析ができるので、必要に応じてフレームワークを用いて分析をおこなうことも大切です。

フレームワークとは、意思決定や要因分析をする際に用いる、枠組みのことです。フレームワークを活用すると「何について考えればよいのか」という外枠を固めることができます。フレームワークに当てはめて、各項目を埋めていくことで、課題に対する解決策を考える時間を短縮できるようになります。

具体的なフレームワークとして、3C分析のように顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)に分けて分析する方法や、SWOT分析のように、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) に分けて分析する方法などがあります。

フレームワークごとに特徴が異なるので、企業に適したフレームワークを活用できるようにしておきましょう。

ターゲットを明確にしておく

市場や社内の状況を分析したら、次にターゲットを明確にしていきます。

市場において、企業が手がける商品やサービスがどのような層の消費者に支持されるのかをグループ分け(セグメンテーション)していきます。その後、セグメンテーションしたグループの中から実際にターゲットとする消費者を絞り込みます。(ターゲティング)

ターゲティング設定の際は、自社商品やサービスの強みにマッチする層であるか、同じ層を狙う競合がどれくらい存在するのかといったことを考えながら選ぶとよいでしょう。

消費者に与えられる価値を考える

ターゲットの絞り込みができたら、実際に企業の商品やサービスを手に取った消費者にどのような価値を与えられるかを考えていきます。

具体的には、利便性がどの程度向上するか、使用後にどれくらい満足できるか、継続的に利用したいと感じられるかといった点が挙げられます。消費者に与えられる価値が大きいほど、新規顧客やリピーターの増加につなげやすくなるでしょう。

他社との差別化を図る

消費者に与えられる価値が大きい商品やサービスを販売しようと思っても、競合他社がすでに消費者のニーズを満たしていると、思ったような成果を得られなくなるので注意が必要です。いかに消費者に自社の商品やサービスを選んでもらうかは、他社とどのように差別化を図っているかが重要になります。この差別化する段階をポジショニングと呼びます。

たとえば、原材料の仕入れを工夫して競合よりも品質の高い製品を低価格で提供できるようにしたり、競合とは異なる経路で消費者に販売するようにしたりすることが挙げられます。アフターサービスを充実させて安心して商品やサービスを利用してもらえる仕組みを整えることも、差別化を図るポイントになるでしょう。

キャッチコピーを考えておく

他社との差別化を図って商品やサービスを流通させることも重要ですが、企業が発信する情報に魅力を感じてもらえなければ、購入を検討してもらうことはできません。

消費者に対して端的に企業の情報を伝えるためには、心に響くキャッチコピーを考えるのがおすすめです。「30年の実績と信頼」や「ユーザー満足度95%」など、企業のコンセプトや商品やサービスの魅力が伝わりやすいキャッチコピーを交えて情報をアピールすると、消費者の目を惹きやすくなるでしょう。

戦略の立案時に役立つ5つのフレームワーク

先述の通り、マーケティング戦略の立案や分析にはフレームワークの活用が有効です。ここではよく使われているフレームワークを5つ紹介します。

戦略立案に役立つ5つのフレームワーク
  • STP分析
  • 4C/4P分析
  • 3C分析
  • SWOT分析
  • PEST分析

STP分析

STP分析とは、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」という3つの観点で分析するフレームワークです。市場をセグメントに分けて細分化し、その中でターゲットとなる市場を定め、その市場内での自社の立ち位置を明確にします。これによって顧客やニーズ、競合との差を探ることができます。

4C/4P分析

4C分析と4P分析は、どちらも市場における商材の価値などを把握するために4つの要素から分析を行うフレームワークです。異なるのはそれぞれの視点で、4C分析では顧客目線から、4P分析は企業目線から考えます。

4C分析 4P分析
Customer Value(顧客価値) Product(製品)
Cost(経費) Price(価格)
Convenience(利便性) Place(流通)
Communication(コミュニケーション) Promotion(販売促進)

上図のように、4Pと4Cの項目はそれぞれ対応するようになっています。これらの分析を行うことで、各要素との関係性や市場のニーズなどに合わせた商材の扱い方を見極めます。

4Pや4Cについて更に詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

マーケティングにおける4Pとは?戦略を立案するコツも教えます!

3C分析

3C分析では、「Customer(市場・顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合他社)」という3つの視点から、企業を取り巻く環境要因を分析します。市場や顧客のニーズと競合他社に対する自社の立ち位置を把握し、マーケティング戦略の立案に役立てることができます。

3C分析のやり方や事例については下記の記事でも詳しく解説しています。

3C分析の成功事例とは?事例を参考に有利な事業展開を目指そう

SWOT分析

SWOT分析は、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの観点で、企業の現状を分析します。

コントロール可能な「強み」や「弱み」といった自社の内部環境と、コントロールができない「機会」や「脅威」という対比や、プラスの要素とマイナスの要素という視点など、4つの要素を掛け合わせることで現状の細かな分析を行い戦略を考えます。

SWOT分析のやり方については、こちらで詳しく解説しています。

SWOT分析のやり方とは?効果的な分析で事業を成功に導こう

PEST分析

PEST分析は、企業がコントロールできない外部環境(マクロ環境)を分析するフレームワークです。以下の4つの視点から、企業が置かれている状況を把握します。

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

特に「新規事業の開始」や「既存事業の転換」を行う際に必要になります。外部要因の現状を見極め、自社にどのように影響するかを考えましょう。

PEST分析のやり方について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。

PEST分析をうまくおこなうポイントとは?事例を交えて紹介します

まとめ

ここでは、マーケティング戦略の概要や実践する手順、効果的な戦略を立案するためのフレームワークなどについて説明しました。

マーケティング戦略で考えるべき要素はたくさんありますが、なるべく正確なデータを収集して客観的に市場や企業の状況を分析することが大切です。ここで説明した内容を参考にして、売上アップにつながるマーケティング戦略を考えられるようにしておきましょう。

マーケティング戦略の成功事例について下記の記事で紹介を行っていますので、ぜひこちらも参考にしてみて下さい。

マーケティング戦略の成功事例とは?戦略を立案する際の注意点も紹介

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