企業が手がける商品やサービスの魅力を幅広い消費者に伝える「マーケティング」。

マーケティングにも広告やチラシ、DMやイベント開催などさまざまな手法がありますが、口コミを活用した「口コミマーケティング」も、認知度や集客数、売上を高めるために効果的です。

しかし、口コミは顧客主体で発信する情報なので、「どうすれば口コミをうまく広められるのだろう」と思う人もいるのではないでしょうか。口コミで高い成果を出すには、口コミマーケティングについて理解を深めることが大切です。そこで今回は、口コミマーケティングの概要を説明したうえで、メリットや成功させるコツ、成功事例や注意点について説明します。

まずは口コミマーケティングについて知っておこう

口コミマーケティングをうまく実施するためには、まず口コミマーケティングの概要を知る必要があります。

以下では、口コミマーケティングの定義や重視される理由について説明します。

そもそも口コミマーケティングとは?

そもそも口コミマーケティングとは、「顧客の口コミを広めて認知度を高めるマーケティング手法」のことです。

企業が消費者に対してインパクトを与える企画の開催や消費者を巻き込んだキャンペーンをおこなうことで、ターゲット層の注目を集めるとともに話題性を高めることを目的としています。

口コミマーケティングが重要視される理由

従来は、テレビCMやラジオCM、新聞広告や雑誌広告といった「マス広告」を使った一方的な情報発信が主流でした。しかし、最近は、インターネットやスマートフォンの普及により、SNSなどを利用して個人が簡単に情報発信できます。

消費者は、個人ブログやSNS、口コミサイトといったさまざまな媒体を活用して企業の情報を多角的にチェックできるだけでなく、自分自身で情報発信できるようにもなっています。個人が発信する情報を参考に来店や購入を決める消費者もいることから、口コミを意識したマーケティングは重要視されているのです。

口コミマーケティングをおこなうメリットとは?

口コミマーケティングを実践するメリットには、次の3つがあります。

これらを知っておけば、企業が口コミマーケティングを実践する必要性を考えやすくなるでしょう。以下では、それぞれのメリットについて詳しく説明します。

コストを抑えて企業の魅力を広められる

マーケティングにはある程度の費用がかかるため、手法によっては「コストをかけたにも関わらず思ったように集客できなかった」「費用がかさんで企業にほとんど利益が残らなかった」といったケースも起こりえます。

口コミマーケティングでは、顧客が企業の商品やサービスの魅力を発信してくれるので、コストを抑えやすいのがメリットです。場合によっては消費者から消費者へ次々と情報が拡散するので、ほとんど費用をかけずにほかのマーケティング手法と同等の成果を出せることもあります。マーケティングを企画・運用する手間もかかりにくいので、企業の生産性を高めることも可能です。

消費者からの信頼を得やすい

マス広告やDM、チラシやWEB広告のように、企業が一方的に発信する情報は都合がよい内容になりがちです。顧客目線での使用感や感想も伝わりにくいので、信頼感を高めるのは簡単ではありません。

総務省が2016年に発表した「情報白書」によると、インターネットショッピングをする人の約6割が購入する際に口コミを参考にしていることが分かっています。年代が低くなるほど口コミを重視する程度が高くなる傾向もあるため、ターゲット層の年代が低いほど口コミマーケティングに力を入れることで信頼を獲得しやすくなるでしょう。

また、インターネットショッピングをした経験がある人のうち、口コミを見て購入する商品を決めた人の割合は、どの年代でも8割以上であることも分かっています。すべての消費者が口コミを参考にして商品を購入するわけではありませんが、口コミが商品の選定や購入を決めるきっかけになる可能性もあるので、口コミマーケティングを実践する重要性は高いといえます。

参考:情報白書(総務省)

多様なチャネルで消費者にアピールできる

口コミといっても、情報を広める手段は1つではありません。口コミを広める手段として、次の4つが挙げられます。

  • 家族や友人などに対面で伝える
  • SNSに投稿する
  • 口コミサイトに投稿する
  • 個人ブログで記事にする

なるべく多彩なチャネルで口コミを広めれば、ターゲット層だけでなく、従来のマーケティング手法でアプローチできなかった消費者層にも情報を届けられます。

新たな顧客層を開拓できれば、集客数や売上をさらに高められるでしょう。

口コミマーケティングを成功させるためのコツ

ここまでは、口コミマーケティングをおこなうメリットについて説明しました。口コミマーケティングのメリットを活かして高い成果を出すためには、次のコツを意識することが大切です。

以下では、口コミマーケティングを成功させるコツについて詳しく説明します。

コンセプトをはっきりさせておく

口コミマーケティングを実践する際は、まずコンセプトをはっきりさせておくことが大切です。「誰に・何を・どのような目的で」といった内容を明確にしておけば、一貫性のあるマーケティングができます。

たとえば、「20代の女性に保湿力の高い化粧水で乾燥しやすい秋~冬シーズンを乗り切ってほしい」といったコンセプトが考えられます。20代の女性をターゲットにする場合、「若年層の女性ユーザーが多いInstagramを使って視覚的に口コミを広める」といった手法につなげられます。

また、自社製品を購入すればどのようなメリットが生じるのか、他社製品や従来の製品とどう違うのかといった「商品やサービスが顧客に与える価値」を明確にしておくことも大切です。アピールポイントを絞って口コミを広めれば、消費者の購買意欲を高められます。

口コミが広がりやすい仕組みをつくる

口コミを効率的に広めるには、顧客が「口コミをしたい」と思える仕組みを整えることも大切です。

たとえば、「誕生日に来店した顧客に見栄えのよい盛り付けをしたデザートをプレゼントする」といった企画を実施して顧客に感動体験を与えられれば、自然と口コミにつながるでしょう。

また、「口コミ投稿で会計金額から〇%割引」「店舗名を入れてSNSに投稿したらサイドメニュー1品プレゼント」のように、特典を設けて口コミを増やす手法も効果的です。

インフルエンサーを活用する

個人が拡散できる情報はある程度限られますが、インフルエンサーを活用すれば、より多くの消費者に企業の魅力を届けられます。

インフルエンサーとは、「SNSなどで多くのユーザーから支持を得ており、発信する情報が幅広いユーザーの考え方や行動に影響を与える人物」をいいます。

たとえば、モデルや芸能人、プロスポーツ選手やユーチューバーなどが挙げられます。インフルエンサーに企業の商品やサービスを無料で提供し、モニターとして情報を広めてもらえば、さらに多くの顧客を獲得できるでしょう。

口コミマーケティングの成功事例を紹介

ここまでは、口コミマーケティングを成功させるコツについて説明しました。実際に戦略を考えるためには、口コミマーケティングに成功した企業の事例を参考にすることも大切です。

以下では、口コミマーケティングの成功事例を紹介します。

Dropboxの事例

インターネット上にさまざまなファイルを保存できるクラウドストレージサービスを運営するDropboxの事例を紹介します。一般的にこのようなサービスは一定の容量までは無料で使用できますが、制限を超えて利用するには料金を支払わなければなりません。

しかし、Dropboxは「友だちを1人紹介するごとに容量制限を増やす」という特典を設けてユーザー数を伸ばしています。

また、「知人に紹介したい」と思えるサービスであることも、この企業が口コミマーケティングに成功した理由です。「友だち紹介キャンペーン」を開催する企業は多いですが、紹介客を増やすためにはそれだけ優れたサービスでなければなりません。

口コミマーケティングを成功させるには、顧客のニーズを満たす商品やサービスを開発することも大切です。

江崎グリコの事例

お菓子や乳製品などの食料品販売で有名な江崎グリコは、代表的な商品であるポッキーとプリッツの記念日を11月11日につくりました。2013年11月11日に「ポッキー」を含むX(旧Twitter)の投稿数でギネス世界新記録を目指す企画を開催しました。

当初は24時間で投稿数を200万件にすることを目標としていましたが、結果は371万44件と目標を大幅に上回る投稿数を記録し、ギネス記録を打ち立てたのです。この企画によって、ポッキーとプリッツの月間売上は前年より30%も増加しています。

参考:「ポッキー」世界記録更新!“ポッキー”を含んだツイートで、 11月11日(月)に371万44ツイートを記録

Airbnb

宿泊施設や民宿の貸出サービスで有名なAirbnbは、口コミでサービスを紹介した人と紹介された人双方に「トラベルクレジット」というクーポンを配布することで、ユーザー数を増やしています。

旅行者が手軽かつ安価に宿泊先などを探せるという魅力があることも、口コミマーケティングに成功した理由です。インフルエンサーを起用して影響力を高めたのも、口コミマーケティングが成功した要因だといえます。

口コミマーケティングをする際の注意点とは?

ここまでは、口コミマーケティングの成功事例を紹介しました。うまく実施すれば認知度や売上を効率的に伸ばせる口コミマーケティングですが、注意点を知っておくことも大切です。

以下では、口コミマーケティングをする際の2つの注意点について詳しく説明します。

ステルスマーケティングは避ける

商品やサービスの認知度を高める手法に「ステルスマーケティング」があります。ステルスマーケティングは、「企業内の人物や利害関係のある人物が、第三者を装って自分たちに都合のよい情報を流す」マーケティング手法です。

たとえば、企業内の人物が顧客を装って「新しい商品を試してみたら想像以上の効果を得られた」といった口コミを発信すれば、意図的に口コミを広められます。しかし、どれだけ魅力的な口コミを広めても、それが消費者に露呈すると一気に信頼を失ってしまいます。企業内の人物や他者に口コミを依頼する場合は、「宣伝」や「PR」といった文言を明示して誤解を避けることが大切です。

口コミの種類ごとの対応を考えておく

口コミで広まる情報は、プラスのイメージを持つものばかりではありません。場合によっては企業のイメージを損ねる口コミが投稿されるケースもあるでしょう。

しかし、悪い印象を与えるからといって投稿の削除を求めたり感情的に対応したりすると、かえって状況を悪化させかねません。「悪い口コミを見つけたら事実関係を確認して誠実に対応する」「口コミサイトの規約に違反する投稿は違反報告する」などのように、口コミの種類ごとの対応を考えておけば、トラブルへの発展を防ぎやすくなります。

まとめ

ここでは、口コミマーケティングの概要や実践するメリット、口コミマーケティングを成功させるコツや注意点について説明しました。

口コミの効果を高めるためには、数だけでなく投稿の内容や情報の新鮮さを意識することも大切です。ここで説明した内容を参考にして、口コミマーケティングで多くの消費者に企業の魅力を知ってもらえるようにしましょう。

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