実施する販促がうまくいくかどうかは、事前に練る戦略が重要。戦略の立て方によってはうまく消費者の心に届くアピールができず、思い通りの成果を出せなくなるかもしれません。

適切な戦略を立てるためには、販促に関する知識をしっかり身につけておくことが大切。今回は、販促戦略とはどのようなものか、STP分析の概要や具体的な販促事例について詳しく説明します。

そもそも販促戦略とは?

効果的な販促戦略を考えるうえで、まずは販促戦略がどのようなものであるかを理解しておく必要があります。販促戦略に関する基本的な知識を理解しておけば、どのような方向性で戦略を練ればよいかを考えやすくなるはずです。

まずは、販促戦略の概要について詳しく説明します。

消費者の関心を購買につなげる戦略

そもそも販促戦略とは、「販売促進戦略」という言葉を省略して表現したもの。消費者に商品やサービスを「すぐに欲しい」と思わせ購買行動に結びつけるための戦略のことをいいます。

モノにあふれている現代では、どれだけ企業が魅力的な商品やサービスを開発したとしても、消費者に「今すぐに買ったほうが良い」と思わせるように働きかけなければ、なかなか購入してもらうことはできません。期待する成果を手に入れるには、販促戦略で消費者に積極的にアプローチすることが必要になるのです。

また、一般的に販促戦略というと、消費者を対象に商品やサービスをアピールすることだと思われがちですが、販促戦略には消費者向けのものだけでなく、企業向けのものもあります。詳しくは後述しますが、販促の対象によって実施すべき戦略が変わるということも知っておきましょう。

販促と広告の戦略の違いとは?

企業名や提供している商品やサービスを認知してもらうという面では、販促と広告は同じものだと思うかもしれません。しかし、販促には「顧客の購買行動」を目的としているのに対して、広告は、「企業そのものや商品・サービスについて知ってもらう」ことを目的としています。

つまり、チラシやノベルティの配布や、旗やディスプレイ広告といった同じ手法であっても、どのような目的を持って実施しているかによって、販促なのか広告なのかが変わるということになります。目的によってこれらを使い分けるだけでなく、ときには連携させることによって、効果的な事業運営につなげられるようにしておきましょう。

販促戦略の種類を知っておこう

販促戦略というと、消費者に対する購買行動を促進する計画だと思われがちです。しかし、販促戦略には以下の2つの種類があります。

販促戦略の種類
  • 企業向けの販促戦略
  • 消費者向けの販促戦略

計画する販促戦略が誰に向けておこなわれるものかを明確にしておかなければ、一貫性のある販促はできません。販促の種類ごとの特徴や具体例を理解しておくことで、目的をはっきりさせたうえで適切な販促戦略を立てられるようになるでしょう。ここからは、販促戦略の種類について詳しく説明します。

企業向けの販促戦略

企業向けの販促戦略では、幅広い消費者をターゲットとするものとは異なり、販促する対象が特定の企業に限られています。

具体的には、展示会や見本市といったイベントに参加して、見込み客である相手企業の担当者と対面してチラシやパンフレットを配布したり、商品やサービスをその場で体験してもらうといった方法が挙げられます。最近は、イベント会場に足を運んでもらってからアピールするのではなく、「プレリリース」という形でインターネット上にあらかじめ企業向けの情報を掲載しておく企業も増えています。事前に認知度を高めておくことで、イベントでの反応を高められることが期待されています。

その他、商品やサービスを、メーカーではなく代理店や小売店が販売するような業界では、商品やサービスの特徴について理解してもらうために、勉強会やセミナーを行うことも多くあります。その際に、販売数の多い企業には賞金がでるようにするなどして、販売するモチベーションを促進するのも効果的です。

イベント中に入手した相手企業の情報は、顧客リストとして登録し、定期的にDMを送ったり電話で営業をかけたりします。実際に相手企業のニーズが顕在化すれば、直接企業に足を運んで商品やサービスの説明をして、契約に結びつけるといった流れが一般的です。

消費者向けの販促戦略

消費者向けの販促戦略は、多くの人が目にする機会が多い手法です。テレビやラジオ、新聞や雑誌といったマス広告で企業名や商品・サービスの認知度を高めるといった方法が代表的。最近はインターネットやスマートフォンが普及したことによって、ネット広告を掲載して認知度の拡大を図る企業も増えています。

店舗型の企業では、看板や旗を設置して通行人に対するアピールをおこなったり、店内にはポップやポスターなどを設置して、消費者の購買を促しているところが多いです。実演販売やキャンペーンの開催、ポイントカードやクーポンの発行といった販促をおこなうところもあり、多種多様な販促手法の中から企業ごとに独自の販促を考えて消費者の購買意欲を刺激しようとしています。

企業向けの販促戦略のように、ターゲットがそこまで絞られているわけではないので、より多くの人の目に触れるような手法をとると同時に、ある程度ターゲット層を絞って他社と差別化を図ることも重要です。

販促戦略を考えるうえで重要なSTP分析とは?

多くの消費者に商品やサービスを購入してもらうためにターゲットを広げすぎると、誰にでも聞こえがいいありふれた訴求の販促になってしまい、結局どの消費者の購入意欲もわきたてることはできません。消費者の意欲を促進するには、「STP分析」で訴求を洗練させることが重要です。STP分析とは、以下の3つをおこなう手法をいいます。

  • S:セグメンテーション(市場の細分化)
  • T:ターゲティング(ターゲットの設定)
  • P:ポジショニング(地位の確立)

これらに沿うことによって、より消費者の心に刺さる効果的な販促戦略を考えられるようになるとされています。ここからは、STP分析について、それぞれの項目ごとに詳しく説明します。

S:セグメンテーション

STP分類におけるセグメンテーションは、市場を細分化することをいいます。たとえば、国や人口、都市の規模や気候といった「地理的な分類」や、年齢や性別、職業や家族構成といった「人口統計的な分類」、ライフスタイルや趣味嗜好、価値観といった「心理的な分類」や、商品やサービスの使用頻度や理解度、購買状況や購入パターンといった「行動ごとの分類」が挙げられます。

広大な市場をこれらの項目で細分化することによって、ターゲットグループを明確にしやすくなります。最近は、インターネットを活用することによって顧客の公式サイトへのアクセス状況や購入履歴といった情報を正確に把握できるため、自社サイトを持っている企業であれば、さらに精度の高いセグメンテーションが可能になるでしょう。

T:ターゲティング

市場の細分化ができたら、それらの中から企業がターゲットとするグループを設定します。もちろん対象となるグループは1つとは限らないので、複数のグループをターゲットとしても問題ありません。

たとえば、自宅の見守りカメラを販売しようと考えている場合、ターゲットは乳幼児のいる家庭だけでなく、自宅で親の介護をしている家庭も含まれます。一見ターゲットが限定されていそうな商品であっても、商品が持つ機能を必要とする消費者はほかにもいるかもしれません。ターゲットを取りこぼしてしまうと、得られたはずの売上を逃してしまうことにつながりかねないので、慎重にターゲティングする必要があります。

P:ポジショニング

STP分析におけるポジショニングは、「企業が提供する製品・サービスの立ち位置をはっきりさせること」をいいます。多くの企業が似たような商品やサービスを展開している市場の中で有利に売上を伸ばしていくためには、「自社は他社にはない〇〇という強みを持っています」というポジションを明確にし、消費者にアピールすることが重要です。

仮に、企業がある家電製品を販売しようと考えている場合、競合のA社が価格の安さを、B社が操作性のよさを売りにしているとします。その場合、まともにA社やB社のポジションで勝負するのは避け、価格の安さや操作性の良さ以外の自社の強みをアピールできないかを考えてみるとよいでしょう。

もちろん、A社よりも低価格で商品やサービスを提供したり、製品開発でB社より操作性の高い商品を作ることもできますが、それには大きなコストがかかる可能性があります。自社の強みを整理し、それが一定数の消費者のニーズに合致していれば、コストを抑えて市場で戦うことができます。

このように、競合をしっかりと分析し、企業にとって有利なポジションを獲得できるような戦略を練ることも重要になります。

効果的な販促戦略の具体例を紹介

効果的な販促戦略を実施するためには、販促として効果的な手法を知っておくことが重要です。代表的な販促戦略には、以下の4つがあります。

効果的な販促戦略
  • メールマガジンの配信
  • 顧客に合わせたポイント制度やクーポンの発行
  • SNS運用をおこなう
  • イベントを開催して集客を図る
  • チラシやDMを配布する

これらの販促を参考にして、独自の販促戦略を考えられるようにしておけば、企業の売上アップにつなげられるようになるでしょう。ここからは、効果的な販促戦略の具体例について詳しく説明します。

メールマガジンの配信

1つ目は、メールマガジンを配信する方法。「メルマガ」とも呼ばれており、顧客個人に対してダイレクトに情報伝達できるという特徴があります。ほかの販促のように特別な知識や技術が必要なく、費用を抑えて配信できることから、手軽に取り入れられるのもメリットです。配信から開封までの時間も短いことから、タイムリーに売上につなげることも可能。時間的な導線が短いことから、即効性のある販促方法だといえます。

新商品やサービスをアピールする目的が強いと思われがちなメールマガジンですが、実は、消費者への教育や啓蒙といった要素も含んでいます。企業に関連する情報を定期的に配信することによって、より商品やサービスに関する知識を深めてもらうことが可能。消費者が求めている情報を定期的に配信することによって、ファンの獲得にもつながります。ファンが獲得できれば継続的に商品やサービスを購入してもらえる可能性が高くなるので、安定的に売上を出せるようになるでしょう。

ただし、メールマガジンは多くの企業が配信しているために埋もれてしまいやすく、開封率が低いというデメリットがあります。また、メール本文の内容によっては迷惑メールにフィルタリングされる可能性がある点も知っておきましょう。

SNS運用をおこなう

3つ目は、SNS運用をおこなう方法。

従来は、マス広告やインターネット広告などで一方的な宣伝をおこなう方法が主流でした。しかし、近年はインターネットやスマートフォンが普及したことによって、消費者の中で情報が拡散していく時代へと移り変わっています。

SNSにもさまざまな種類がありますが、複数のSNSを活用することによって効率的に情報を広めることが可能。消費者とのコミュニケーションも取りやすいので、商品やサービスの魅力を詳細に伝えることができるとともに、安心感や信頼感を与えられます。費用をかけずに運用することもできるので、「販促コストが限られている」という企業が取り入れやすいのもメリットです。

ただし、運用による効果が出るまでにある程度の時間がかかるのがデメリット。消費者からの信頼感を得るためには、中長期的な視野で運用する必要があります。また、投稿内容によっては炎上してしまうリスクもあるので、安易な投稿をしないよう注意が必要です。

イベントを開催して集客を図る

4つ目は、イベントを開催して集客を図る方法。

「イベント販促」とも呼ばれている手法で、具体的なイベント内容は業種や目的によって多種多様です。具体的には、ノベルティの配布や試食会、参加型のゲームを開催したり子ども向けのパフォーマンスを用意するといった内容が挙げられます。

イベント販促は、来場してくれた消費者に対して、商品やサービスを直接体験してもらえるのがメリット。場合によってはその場で売上につなげることもできます。消費者の反応を直接確かめられるので、より消費者目線に立った事業運営に役立てることが可能です。

しかし、イベント販促では、イベントを開催するための手間や費用がかかりやすいというデメリットがあります。想像以上に来場者数が少ないと思ったような成果が出ないケースもあるため、開催場所や時間帯などを含めて入念に計画しておくことが大切です。

チラシやDMを配布する

チラシは、街中で消費者に対して直接チラシを配布したり、新聞に折り込んで消費者の自宅に届けたりすることで、集客や購買を促す手法。地域に密着した販促ができるので、コストを抑えつつターゲットを絞り込んでアピールすることが可能です。一度に配布できる枚数も多いので、より高い集客効果が期待できます。

DMは、チラシのように不特定の消費者にアピールする方法と違い、顧客情報をもとにターゲットを指定してハガキやパンフレットなどを自宅に送付する方法。チラシよりもコストはかかりがちですが、盛り込める情報量が多いため伝えたい内容を網羅的に伝達できるのがメリット。また、はがきのDMであれば、ひと手間かけて自筆でメッセージを書き込むと、顧客の目に留まりやすくなるとされています。

ただし、封書や圧着ハガキでは開封率が低くなるとされているので、場合によってはチラシを選んだほうがよいケースもあります。

まとめ

ここでは、販促戦略の概要やSTP分析の方法、効果的な販促戦略の具体例について説明しました。

成果の出る販促をするためには、市場をしっかり分析したうえで、販促の具体例を参考に独自性のある手法を考えることが重要です。ここで説明した内容を参考にして、集客力や売上アップにつながる販促を考えられるようにしておきましょう。

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