商品の売上に直結する在庫管理は、適切に行うことで利益を得ることや業務の効率化に繋がります。商品の数が多いからといって管理をおざなりにしてしまうと欠品や過剰在庫に繋がるだけでなく、正しい売上戦略を立てることも難しいでしょう。今回は、在庫管理の方法について、必要な知識や手順、コツを詳しく紹介します。

在庫管理の基礎知識

在庫管理といっても、具体的にどのようなことを指すのかを実は理解していないということはないでしょうか?在庫管理の基礎を知ることでより具体的な対策を立てることが可能です。

ここでは、在庫管理の基礎知識を紹介します。

在庫の意味と在庫管理する目的

「在庫」とは、企業が所有する販売前の原材料や製品などの流動資産を指します。そして在庫管理とは、それらの原材料や製品などを必要なときに必要な数量を適切なところへ供給できるように体制を整えておくことをいいます。

生産管理の分野において重要とされる概念として「PDCA(Plan=計画、 Do=実行、Check=評価、 Act=改善策の実行)」がありますが、在庫管理の分野においても重要な概念です。PDCAを繰り返し行い、適切に在庫管理することで欠品を避けることができ、そしてコストをかけずに資金の流動性を促すことに繋がります。

小売業と製造業の在庫の違い

先に説明した在庫とは、小売業と製造業ではその在り方に違いがあります。小売業における在庫は、販売前の商品のことであり、売り場にある商品とは別の倉庫などに保管されています。この場合の在庫とは、欠品を防ぐために保管しておくためのものです。

一方、製造業における在庫とは、原材料や、仕掛品とよばれる組み立て途中のもの、製造工程を終えたものなどを指します。製造業は原材料の状態から完成品の状態まで、製造工程ごとに在庫管理が行われます。

在庫管理の発注方式

在庫は適切なタイミングで発注をしなければ、欠品や過剰在庫に繋がります。また、商品によって発注方式にも向き不向きがあります。ここでは、在庫管理の発注方式について紹介します。自店の業態によって使い分けてみるとよいでしょう。

定量発注方式/発注点方式

「定量発注方式」とは、在庫の数が一定数を下回ったタイミングで発注業務を行う方式で、その一定数のことを「発注点」というため「発注点方式」ともいいます。一定数が決まっているため、適切な在庫数を常に確保することができ、欠品や過剰在庫を起こしにくいというメリットがあります。

しかし発注時期は不定期になるため、商品の需要が多い時期をしっかりと把握しておかなければ、予想以上に一定数を割るペースが早まり、発注が追いつかないことになるので注意が必要です。

定期発注方式

「定期発注方式」とは、発注するタイミングを月初や月末など固定して行う方式です。発注する期日が決められているため、他の業務量に影響されることなく発注業務に集中することができるメリットがあります。

しかし、定期発注方式は発注する数量が決められていないため、現在の在庫数や必要な発注量の把握をしておかなければ欠品や過剰在庫に繋がることがあるので注意しましょう。

発注点については、こちらの記事でも解説しています。

発注点の意味や計算方法を解説|発注・在庫管理に大切な要素とは

在庫管理の手順

在庫管理を適切にスムーズに行うにはどのように進めていけばよいのでしょうか。ここでは在庫管理の手順について説明します。

在庫管理の手順
  1. 分析を行って現状を把握する
  2. 在庫の適正数を決める
  3. 在庫の動きの見える化を実施する

分析を行って現状を把握する

在庫管理の手順として最初に行いたいのは現状の把握です。自店の現在の在庫量や商品の販売状況の分析を行います。これらの分析を詳細に行うことで、今後発注を行う際に必要な需要の予測や正確な在庫量を数値化することができます。

在庫の分析には、優先度を設定して管理をすすめる「ABC分析」や、在庫が入れ替わる回数である在庫回転率を分析する方法などがあります。

分析についてはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

小売店が在庫管理を上手に行うためのコツは?|在庫管理の種類や活用方法も解説

在庫の適正数を決める

在庫管理において、商品の欠品を防ぐには在庫の適正な数の設定が必要です。その数値のことを「適正在庫数」といいます。

在庫の適正数を決めるには、商品が出荷された数を示す出庫数や発注をかけるサイクル、売上高や先に紹介した在庫回転率などさまざまな要素が関わってきます。しかし、業種や業態、取り扱い商品の種類などによってどの決め方が適切であるかは異なってくるため、需要や市場の流れなどもあわせて考慮しながら決めるとよいでしょう。

在庫の動きの見える化を実施する

「在庫の動きの見える化」とは、これまでの在庫数や入庫数・出庫数などを数値化してグラフにし、商品ごとの在庫の推移をひと目で把握できるように可視化することを意味します。これにより担当者が複数名いる場合でも、どの商品がどのくらいの数量でどの場所にあるかなどを同じように認識することが可能になります。

在庫の推移をより具体的にするには、週ごとなどの短いサイクルで定期的な在庫確認を行うことが重要です。

よく発生するミスと課題

在庫管理は効率化やフローの徹底を行わない限り、似たような人為的ミスが発生しがちです。

例えば、エクセルや紙の管理台帳に手入力をしている場合、二重入力や入力ミスが起こりやすいといえます。その場合は、担当者全員が把握できるようなフローを徹底したり、入力ミスを検知できるようなシステムを導入したりするなどの改善が必要でしょう。

また、在庫を管理している拠点が複数ある場合には、最新の在庫状況をどの拠点でも共有することが難しく、発注が重複することなども考えられます。この場合にも先に説明したようなシステムの導入や、情報を共有できるような連携の取り方を検討する必要があります。発注の重複は過剰在庫にも繋がり、保管コストや売上などの数字にも直結するため、現状でどのようなコストがかかっているのかという把握も重要です。

適切な在庫管理を行うコツ

適切な在庫管理で在庫のムダやロスを省くにはどのようなことが重要なのでしょうか。最後に、適切な在庫管理を行うためのコツを紹介します。

適切な在庫管理を行うコツ
  • リードタイムを短縮する
  • 棚管理を徹底して行う
  • システムを導入する
  • エクセルを活用する
  • 倉庫の整理・整頓・清掃を心がける
  • 製品ごとに優先度をはっきりさせる

リードタイムを短縮する

「リードタイム」とは、商品の発注から納品まで、または製品の生産を開始するところから完成に至るまでにかかる日数を指します。リードタイムが長いほど在庫を抱えることになり、在庫管理にかかわるコストが増えることにも繋がります。リードタイムの短縮を図ることは余剰在庫の解消だけでなく、製造業などでは製品の生産の効率化を図ることができます。

棚管理を徹底して行う

在庫を管理している倉庫での保管状況が適切でわかりやすくなっているかも在庫管理には重要です。保管状況がわかりやすく正しい配置にされていないことで、棚卸しを行った際の担当者ごとの数え間違いや、商品の紛失・余剰在庫などの問題に繋がります。

また、保管状況が乱雑になっていると、出庫する際に商品が見当たらず時間のロスにもなるでしょう。棚管理は徹底して行い、担当者が誰であっても同じように在庫管理が行える状況を作る必要があります。

システムを導入する

手作業や手入力で行う在庫管理は、入力ミスや書き損じなどの余計なミスが起こります。誰が担当であっても操作しやすいようなシステムを導入することで、正確な入出庫情報や在庫情報を入力することができます。

また、バーコードなどを活用した在庫管理であれば在庫数の把握もよりスピーディーになります。在庫管理のシステムは、必要な端末や、サービス内容など用途や種類がさまざまあるので、自店の状況にあわせたものを選ぶとよいでしょう。

エクセルを活用する

エクセルで在庫管理を行うことも可能です。エクセルの場合、手入力によるミスが起こりやすい一面もありますが、パソコンにすでにソフトが入っていればコストもかからず、予算がかけられない場合におすすめです。

また、エクセルには関数やマクロといった計算・自動処理に適した機能が備わっています。これらの機能をうまく組み合わせると、入力や計算などの仕組みを一部自動化でき、自店で利用しやすい在庫管理表を作成できます。

入力ミスなどに対しては、不必要な箇所を触らないようにする、入力する担当者を定める、など一定の利用ルールを設けて対策しましょう。

なお、マネケルではエクセル用の在庫管理表テンプレートを2種類用意しています。以下のボタンから無料でダウンロードいただけますので、これらをベースに独自の在庫管理表を作成してみてください。

倉庫の整理・整頓・清掃を心がける

倉庫の中でも流動性の少ない商品がある箇所などは掃除が行き届かず、埃だらけになってしまうこともあります。また、保管ルールがあいまいだと、同じ商品でも古い品番のものが長く残ってしまい、商品の劣化が進んでしまうなどの問題も起こり得ます。

倉庫の整理・整頓・清掃を日々心がけることで、清潔さを保てるだけでなく、商品の在庫箇所の把握や、型落ちの商品や欠損した商品の発見にも繋がります。目の行き届きにくい場所ほど徹底を心がけましょう。

製品ごとに優先度をはっきりさせる

在庫管理は、管理担当者に対するコスト以外にも在庫場所を確保するための賃料などさまざまなコストがかかっているものです。しかも商品単価が高いものが余剰在庫になってしまうとさらにコストはかかります。単価が高いものは余剰在庫にならないように最低限必要な数だけを管理し、反対に単価が低いものはある程度大きなロットで管理をして欠品にならないように管理するなど、どの商品・製品を優先するかを見極めましょう。

また、消費期限のない商品であっても劣化が進みます。劣化による廃棄にならないように、古いものから必ず使っていくような徹底したルールづくりも必要です。

まとめ

今回は、在庫管理に必要な知識や在庫管理を適切に行うためのコツを紹介しました。

在庫とは、企業が所有する販売前の原材料や製品などの流動資産です。それらの原材料や製品などを必要なときに必要な数量を適切なところへ供給できるように体制を整えておくことを在庫管理といいます。大切な資産をムダなく適切に管理するためにも、在庫状況の分析や、システム導入などでのルール作り、棚の管理や商品・製品の適切な取り扱いの徹底など、生産から出庫までスムーズに行えるような管理体制が重要です。

商品を劣化させたりムダに廃棄したりしないように、保管している倉庫の整理・整頓・清掃も入念に行い、大切な資産である商品・製品の適切な管理を進めてみてはいかがでしょうか。

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