ヒートカット加工とは

ヒートカット加工とは、高温のカッターで熱によって生地を溶かしながら切る方法です。切断時に、生地が溶け再び固まるため端部のほつれ防止処理にもなります。ヒートカット加工は、ポリエステルなどの化学繊維の切断に良く使われ、手間をかけずにできます。

ヒートカット加工とは

ヒートカット加工は、ヒートカッターという器具または機械を使って行います。使用する製品によって異なりますが、刃先の温度が85℃~500℃まで熱くなっているコテをポリエステルなどの化学繊維に当てることによって、生地を熱で溶かし切ります。溶けた繊維が固まることによって、はさみなどで生地を裁断するときに比べて裁断面がほつれにくくなります。

器具を使ってヒートカット加工を行う際は、耐熱性マットと木製の定規などを使うとカットしやすいです。一部金属性の定規などをつかうとカット途中に熱が下がりきらず、きれいに切れないことがあるので注意してください。

ヒートカット加工で加工できるのは熱によって溶けるポリエステルなどの化学繊維に限られます。綿や絹などの天然繊維は熱で溶解せずに焦げてしまうので、ヒートカットではきれいに切れません。

化学繊維の中でも、セーターや毛布に使われるアクリル系などの化学繊維は溶けすぎてしまうためヒートカット加工は推奨しません。またポリエステル素材であっても、形状によっては、きれいに加工するのが難しいものもあります。伸縮するニット素材はカット時に生地が伸びたり変形したりするため、切り口を思ったような形状にカットすることは難しいです。シフォン・オーガンジー・レースなどの薄い生地は、手動でヒートカット加工を施す場合は、ギザギザとした切り口となりがちです。薄い生地の場合はヒートカット対応の芯地を裏に貼ることで比較的なめらかな切り口に加工できます。

ヒートカット加工は、手作りの手芸品やお店で売られている幕など様々なものに使用されています。

  • ワッペン、ブローチ
  • 発表会衣装
  • コースター、ランチョンマット、テーブルクロス
  • 旗、バナー、タペストリー、布パーテーション、シャワーカーテン、敷布、ドレープ幕(天井装飾)など

ヒートカット加工は、きれいに仕上がり、加工に手間も時間もかからず簡単というメリットがあります。そのため、布端を折り返して縫うほつれ処理だと厚みが気になる用途やデザインの時やほつれ防止加工に手間や時間をかけたくない時などにヒートカット加工が採用されることが多いです。

一方で、ヒートカット加工しても生地の強度はそこまで強くはならないので、力がかかりやすい使用方法、長期にわたって使用する際は補強が必要です。発表会衣装など布端に強い負荷がかかる場合や、旗でも風の強い屋外環境に長期にわたって設置する場合には、ヒートカット加工で生地をカットした後、布端を折り返して縫う三巻縫製など、強度がある他の布端処理方法での補強を検討しましょう。

ヒートカット加工を行う際は素材の耐熱性と発火性に注意が必要です。
刺繍した布をヒートカットする場合は、刺繍糸に熱で溶ける化学繊維が使われているとヒートカットの際に一緒に溶けてしまうので注意が必要です。ヒートカットを行いたい場合、刺繍には絹のような天然繊維などの溶けない素材の刺繍糸を選ぶことがポイントです。
また、素材によっては布端に焦げた色が付く場合があります。衣装に使う生地や色が薄い素材などで、色が重要な素材をカットする際は、事前にどのくらい変色するか確認しておくと良いでしょう。

発火性があり危険な素材として、アクリル樹脂やクロロプレンなどを使ったゴムシートなどがあります。ヒートカット加工をする際は、素材の発火温度や燃やすと有害なものが出ないかという情報は確認すると良いでしょう。