紅白幕とは?意味や用途を解説

たなびく紅白幕

紅白幕は祝事に使用する赤と白の2色からなる縦縞の幕のことです。めでたく縁起が良い飾りとして、祝い事や祭りなどのイベントで使用されています。しかし、お祝いの場で使い始めたのは比較的最近で、昔は黒白幕など別の色の幕が使われていました。
この記事では、別の色の縦縞の幕との違いもふくめた紅白幕の意味と使われるようになった背景をお伝えします。

紅白幕がめでたく縁起がいいものとされる理由は、紅白(こうはく)という色にあります。赤色と白色の組み合わせは、日本において、めでたい・祝い・縁起がよいことの象徴とされる色であるためです。
紅白という言葉は、もともと以下の2つの意味があり、幕も同じ意味の用途で使われています。

(1) 対抗する2つの組という意味。諸説ありますが、源平合戦で赤旗と白旗を掲げて戦ったことが由来しているとの説が有力で、対抗する2つの組をあらわす意味で定着したと言われています。
(2) めでたい、祝い、縁起がよいということ。由来には諸説あり、赤色が出生、白色が死を意味し、その2つの色の組み合わせで人の一生を表しているという説や日本書紀に出てくる神功皇后の出産時に天から紅と白の幡(はた)が舞い落ちてきて、この出産は日本にとって大きな喜びだったのでめでたいものの象徴となったという説などがあります。

また「紅白」という漢字に「赤」という漢字を使わないのは、赤が縁起の悪い意味で使われることがあるためです。たとえば、「赤貧」、「赤裸々」のように、何も持たない、むき出し、裸などの意味を持つ言葉です。

紅白という言葉の意味には歴史があるものの、紅白幕自体の歴史は比較的浅めで、昭和初期頃から普及したのではと言われています。由来は諸説あるもののはっきりとしたことは分かっておらず、おめでたいことがある時にその場を縁起の良いところとして見せるために赤と白の布を張ったことから始まったのではないかと言われています。

紅白幕は、紅白という色の組み合わせから、結婚式や入学式、卒業式、入社式など人生の門出となるような祝い事や地鎮祭などの建設での祭典で使用されています。また紅白の目立つ配色で目を引き、場に華やかさを加えてくれることから、セール会場やキャンペーンイベント会場などにも用いられています。
祝事の用途に使うことが多いですが、めでたいイメージがあまりない墓石屋などの使用もあるそうです。お墓の魂入れ、開眼供養、御移徒(おわたまし)などは、お祝い事とされているためです。お祝いの香典やのし袋にも、紅白の水引が付いたご祝儀袋を使うのがマナーとされているため、店舗に飾っている幕もお祝いの意味です。

幕の素材は主に3種類あり、テトロンポンジやトロピカルなどのポリエステル素材、ビニール素材、木綿素材に分けられます。

旗などへの使用頻度が高く、街中でよく見かけるのはテトロンポンジ生地です。軽い薄手生地で、持ち運びに便利なため、祝い事などへ持参する際におすすめです。また、安価なため、短期の使用にも向いています。
テトロンポンジ生地と同じポリエステル素材でも、より厚みがある生地がトロピカル生地です。テトロンポンジ生地に比べて、丈夫なため、屋外での設置や長期間の使用に向いています。

ビニール素材の幕は、店頭やイベント会場でよく使われています。液体汚れや飲食の汚れに強いため、屋台や飲食店での使用もおすすめです。

木綿素材の天竺や金巾生地は、他の2つの生地に比べて高級感を出しやすく、水を吸いやすいなどの特徴から、屋内での式典や祭典などの使用に向いています。

縦縞デザインで違う色の幕はいくつかあり、代表的なものとして、黒白幕、青白幕があります。

鯨の背と腹の色合いに似ていることから鯨幕(くじらまく)とも呼ばれる黒白幕は、現在は一般的に通夜や葬式など弔事に使われることが多いです。
しかし、本来黒白幕は弔事・慶事に関係なく使用されていました。大正時代頃に西洋文化の影響で弔事=黒というイメージが強くなりましたが、日本ではもともと黒は高貴な色として使用されていたからです。皇室では現在でも結婚の儀などの重要な行事で黒白幕が使われ、出雲大社の大祭などでも黒白幕が使用されています。

青白幕は浅黄幕(あさぎまく)とも呼ばれています。浅黄とは浅葱色(水色よりも濃い青色)のことで神様と接する色とされています。そのため、浅黄幕には神聖な場所を覆う結界という意味があります。
実際に、地鎮祭や上棟式などの神事や皇室の新年祝賀の儀や園遊会などの祝い事で青白幕が使用されています。一般的ではないものの、青白幕の持つ神聖な意味を踏まえて、卒業式を演出するために使われたり、葬儀に使われたりすることがあります。

五色幕(ごしきまく)とは、仏教の寺院などで壁や塀を覆うために使われる幕のことです。五色はインド哲学の五大や中国の五行思想に基づいているといわれており、一般的に青、黄、赤、白、黒(または紫)の色が使用されます。ただし、寺院によって使用する色や順番が異なることがあります。

黒、柿、萌黄の三色で構成される幕を定式幕といい、歌舞伎などの舞台で使用されています。江戸時代に、幕府からの許可を得て芝居小屋をしていた中村座、市村座、森田座の「江戸三座」が、舞台効果の引幕として使っていたのが引き継がれているためと伝えられています。定式幕は、幕府の許可を得ていないと使用できないなど、使えること自体が名誉なことであったとされています。
当時は各座で違う配色の幕を使用していたそうですが、現在の歌舞伎座で使われている配色は、森田座の配色を踏襲していると伝えられています。